エネルギーのメタ輸送

電気エネルギーというのは、一般的に言って貯めにくいし、運びにくい。貯める方はバッテリーでなんとかなるし、運ぶ方も送電線があればなんとかなる訳なのだが、地球の裏側から電気を運ぶなんてことになると送電線は使えない。

そうなると、水素エネルギーの出番!と考える人も多いかもしれないけれど、実は燃料電池は水素から電気へ変換するときの効率があまり良くない。

まあ、地球の裏側から電気を送電線で運ぶことを考えれば、それでもマシかもしれないが、水を電気分解して水素を発生するときにもロスは発生するし、水素を高圧で圧縮するのにもエネルギーは必要になる。

イーロン・マスクなども指摘しているが、実は燃料電池というのはエネルギー変換の方法としてはあまり良い選択肢とは言えない。

もちろん、それでも地球の裏側から送電線で電気を運ぶよりはマシかもしれないが、たぶんそれよりはもうちょっと良い方法がある。

それは、エネルギーを物質に変えてから運ぶ、という方法だ。

エネルギーを物質に変えてから運ぶ

アルミニウムという金属があるが、この金属は生産するのに大量の電力を消費する。「電気の缶詰」などとも呼ばれることがあるくらいに電力を消費する。そのため、このアルミニウムは主に電力が豊富に得られる地域で生産される。そして、日本に送られて来る。

もちろん、電力を一旦水素に変えて、日本に運んでから、燃料電池で電気に変えて、アルミニウムの生産する…なんてこともできるが、そんな無駄なことはたぶんしない。効率が悪すぎるからだ。

つまり、エネルギーをエネルギーのまま運ぶのではなく、一旦何かの物体に変えてから運ぶ。そうすることで、実質的にエネルギーを効率的に運ぶことができる。

では、この考え方をアルミニウムではなく太陽光パネルに当てはめてみるとどうだろう?

他の工業製品同様に、太陽光パネルを生産する際にもやはりエネルギーを消費する。大体、太陽光パネルを設置したときに発電できるエネルギーの1年分から3年分くらいのエネルギーだ。

だとすると、もしサウジアラビアで太陽光パネルを生産して、日本まで輸送して、日本の屋根に設置すれば、それは実質的にはサウジアラビアから日本までエネルギーを輸送したのと同じことになるのではないだろうか?

実際には、太陽光パネルが電気を発電する1年から3年の間は待つことになるが、この待ち時間を無視してしまえば、それは結局エネルギーそのものを運んだことと同じことになる。

つまり、エネルギーそのものではなく、エネルギーを生産するものを輸送することで、実はエネルギーを効率良く運べる、というのがこの「メタ輸送」という考え方だ。

エネルギーというと、どうしても石油やガスからの連想から水素エネルギー的なものを思い浮かべてしまう人が多いかもしれないけれども、実は太陽光パネルもエネルギーの輸送に使うことができる。

更に、太陽光パネルをエネルギーの輸送に使うことにはもうひとつメリットがある。それは、運んだ以上のエネルギーを生み出す可能性がある、ということだ。

生産に投入した以上のエネルギーを生み出すことができるなんて、核燃料サイクルみたいだけどもw、実はそういう技術は既に我々の手元にあった…ということなのだ。


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