嘘日記 3152/04/07
仕事が忙しくならないうちに有給を取った。
何もしない時間を作る。というのは建前で、何かをしていないと落ち着かない。平日に休んだからには、平日にしか出来ないことをしたくなる。
今日は混んでいないと思って、美容室に行って髪を切ることにした。
引っ越してきたばかりで、近所の美容室事情は何も分からない。行ったことのない美容室に入るのはMP(精神的体力)が削られる。だから、今までの引っ越しで一度の例外もなく、最初に入った美容室から次に引っ越すまで、同じところに通い続ける。
つまり、今日行く美容室には当分お世話になることであろう。
いつも通り、2000 〜 4000 円の価格帯で最も家から近いのを検索して見つけた所に行った。建物も新しそうで外観は良い感じ。
入ると店員さんが「いらっしゃいませ〜」と言ってきて、予約した者ですー会員登録をーみたいなやり取りを終えて、席に着いた。
「今日担当する Y と言います、よろしくお願いします。」
Y さん。感じの良い男性に当たった。
年は大体 10~90くらい。
すると Y さんが「今日はなぜ髪を切ろうと思ったんですか」と聞いてきた。
なぜ って、何?こんな質問初めてされたけど。
髪が伸びてきてー。と無難な返しをしたら舐められそうと思って考えて、
季節が変わったからですかね。
と返した。かなり良い返しなんじゃないか、と思っていたが「あーやっぱそうですよねー」と言われた。そんなありきたりな回答ではないだろ。
続いて「今日は何cm³にしますか?」と聞かれた。あー、体積で指定してくるタイプの店員だったか、と絶望しそうになるも、諦めなかった。
長さで聞かれたら 5cm と言うつもりだったので、自分の頭の表面積 210cm² をかけてその場で計算して答えた。こんな所でも KUMON で習った 5 × 210 = 1050 の法則が役に立った。
その後も何個か質問に答えたあと、Y さんがハサミでチョキチョキ始めた。やっと会話をしなくて良い時間が始まると思ったら、「お仕事は何をされてるんですか?」と。仕事のことなんて答えたくないのに。
嘘を考えるのすら面倒くさい、正直に「種無しブドウに種を入れる仕事です」と言ってしまった。
すると、Y さんが急に血相を変えて
「おい。今、"仕事" って言ったよな?」
と言ってきた。
ここからの記憶が無い。
最後に見えた Y さんの顔だけが焼き付いている。
Y さんに何をされたんだろう。
何の地雷を踏んだんだろう。
そもそもこの地雷は避けれるものなの?
向こうから質問してきただろ。
気がつくと、後ろには別の美容師がいた。
X さんと言う女性がバリカンを持って、「仕上げていきますね〜」と言いながら全頭にバリカンをかけた。
さっきのハサミは何だったんだ。
何なら最初の挨拶、美容室なのに「いらっしゃいませ」は違和感あったし。
最終的な髪型はまあ耐えていたので、何も言わなかった。
お会計をした。月曜日は『お釣り半額キャンペーン』をやっているらしいが、LINEのヨッ友登録が面倒くさくて諦めた。
今回の引っ越しは例外になりそうだ。
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