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おわりに

■Aについての最終的な筆者の見解

 本稿ではAの病態について考察をしてきたが、いかがだっただろうか。ここまでお付き合い頂いた皆様は、Aの主張に正当性があると考えるだろうか。もしくはAの主張は不当なものであると感じただろうか。以下は全て私の憶測ではあるが、著書の記述や今回の考察を踏まえてAに起こったことを推察し、Aに対する私の最終的な見解としたい。

◆男性ホルモン注射の時期について

 Aはカムアウト―胸取っちゃった日記にて、内分泌科でのホルモン検査以前に男性ホルモン注射を受けたことを自ら明かしている。検査前に自ら注射をしていれば男性ホルモン量が多くても不思議ではなく、Aが男性化した原因を考えるにあたっては最も自然である。
 副腎に異常があれば健康にも多大な影響を及ぼすことが予想され、染色体の異常でもない。停留精巣の存在は本人により否定されているが、CAISは高テストステロンであっても完全に身体が反応しない病であるため、男性ホルモン注射による男性化すら不可能である。子宮も持たないため原発性無月経も必至だ。8歳で初経を認めた女性に存在する短腕のみのY染色体、ましてや思春期後にそれが突然の男性化を引き起こす原因となることは身体の仕組みでは説明ができず、不可解な現象となる。卵巣精巣が存在する可能性は否定できないが、性分化疾患の代表である卵精巣性性分化疾患に関する記述が一切存在しないことは不自然である。Aは卵巣が機能しているため卵精巣性性分化疾患であっても核型は最も症例の多い46,XXである可能性が極めて高く、正常女性の核型である。このケースも染色体異常とは異なる。
 したがって諸説ある男性ホルモン注射の時期について、やはり検査前であるとする記述が史実だったのだろうと考えている。男性化の原因について、自ら打った男性ホルモン注射によるものであると推測する。

◆Aの幼少期と生育環境について

 他人と比べて異常に体格が良かったAの経験は、私とは真逆の形でのコンプレックスに繋がったのではないだろうか。8歳時に初経を認めた時点で医師の診察を受けておらず、30歳まで思春期早発症が発覚しなかったことも関係しているかもしれない。著書によるとAの家庭は大らかであったようだが、性の悩みを母親に訴えても笑って済まされる環境であったことが描写されている。皆と違う体格のこと、あるいは性的に早熟であったことに対するコンプレックスを母親に相談できなかった経験は身体の変化、特に性的なトラブルについて過敏になる原因となり得るだろう。そのことが高校生の頃に起きた男性化や無排卵、月経不順などといった主訴に繋がったり、性的指向を変化させたりしたのかもしれない。

◆Aの価値観と男性ホルモン注射について

 Aは旧態依然とした窮屈な価値観や全体主義を嫌う、非常にフリーダムでフェアな人物である。女性も上半身を晒せるくらい男女平等であれば縮胸手術は受けなかったと著書に記述があるため、50歳であるAにとっての女性性は非常に窮屈なものだったかもしれない。そのような理由から男性化に興味を持ち、軽い気持ちで男性ホルモンを注射したところ不可逆的な変化が起こったかもしれないし、あるいはそのように勘違いをして焦ったのかもしれない。一時は後悔した可能性もあるが、開き直って男性として生きることに決め、その後内分泌科での検査に至ったのだろうと推測する。

◆染色体異常であるという主張について

 染色体検査の結果に異常があったことについては真実であるだろう、と私は考えている。Aが染色体異常を示す検査結果について存在するとしているためである。Aは男性ホルモン注射の時期について検査前から検査後へと主張を変えているが、それ以外については全くの嘘は言っていないとするのが私の最終的な見解だからだ。しかし染色体異常について、それだけで何らかの疾患であるとは言えない場合があることは前述の通りである。例えば健康な人間であっても、X染色体を1本しか持たない細胞を生じることがある。しかしそれは生理的なものであり、いわゆるコピーミスで疾患とは異なる。それを以てターナー症候群と診断することは不適当なのである。日本人類遺伝学会による臨床細胞遺伝学認定士制度のPDF資料[05a Turner 症候群]によると、45,X0/46,XXのモザイク症例において臨床症状が起こるには、45,X0の細胞が20%以上必要であるとされている。

◆ターナー症候群という医師の診断について

 染色体異常が長腕の欠失であったため、医師はAに対してターナー症候群の診断を下すには慎重な姿勢を取るはずだ。臨床症状を確認するために初経年齢などを問診し、思春期早発症であったことが30歳時に判明したのかもしれない。その結果「こういった性染色体の欠失だとターナー症候群という病気があるけど、その場合はこういう症状が出るからどうやら違うね」などと説明したのだろうか。その説明を受けたAは、男性化して困っているからもっと精査してくれ、何故男性ホルモンの値が女性の10倍にもなっているのかきちんと調べてくれ、と求めたのかもしれない。そして精査した結果、やはりそれはよく分からないと言われたのだろう。Aは講演会にて「兆候があるにも関わらず何でもないとの診断をされると、それこそ性別が、ない!ということになる」と熱弁をふるっている。自分にも男性化という症状が出ているのだから、性染色体に異常があるならターナー症候群として診断されるべきだと強く主張したのではないか。兆候があれば何らかの性分化疾患として診断するべき、という持論はこうしたやり取りから感じたことなのだろう。そんなAに対して医師はやむを得ず「よく分からないけど、ターナー症候群かもね」などとお茶を濁し、しかし診断書は出していないということではないだろうか。Aはターナー症候群の診断書はないとしている。Aは医師のターナー症候群かもね、という曖昧な発言を根拠とし、開き直ってインターセックス漫画家を名乗り始めた、というのが私の見解だ。

◆副腎異常や停留精巣が疑われた経緯

 男性化の原因として副腎、精巣が疑われているのは、一般的に男性ホルモンを分泌する可能性のある器官を挙げただけかもしれない。男性ホルモンを自ら注射しているとは知らないため、それ以上のことは言えなかったのだろう。「男性ホルモンが分泌されるのは通常、副腎か精巣ですね」という話であり、「あなたは副腎に異常がある可能性があります」や「あなたには停留精巣があるかもしれません」とは似て非なる話なのだ。医師が伝えたかったのは「男性ホルモンが分泌されるのは通常、副腎か精巣ですね。ですが女性機能に問題はなさそうですし子宮もありますから、精巣について調べる必要はないでしょう。副腎に異常があればそれは一大事ですから、健康であるならそれも違うでしょう。男性化の原因はやはりよく分かりませんね。」ということだ。停留精巣を放置すれば腫瘍化する可能性があり、機能しない性腺や性別と不適合である性腺については通常摘出するものであるにも関わらず、精査の必要なしと判断された理由も納得できる。それでもAにとっては納得できる回答ではないため、苦肉の策としてY染色体の欠失であった可能性や、未知のメカニズムによる男性化の可能性が提示されたのかもしれない。
 G分染法という一般的な染色体検査の手順について、日本染色体遺伝子検査学会のPDF資料[染色体遺伝子検査の分かりやすい説明ガイドライン]によると以下の通り説明されている。

スライドに標本を作製し染色して、専門の検査技師が顕微鏡で観察します。1000倍に拡大した染色体を1細胞ずつ分析し異常を見分けていきます。
その後、写真撮影し1本ずつの染色体に切り分け、並べて核型を決定します。

染色体遺伝子検査の分かりやすい説明ガイドライン より引用

挿入や重複などの細かな構造異常も、専門の検査技師が発生部位まで目視で特定して結果を出すのである。検査結果として返ってきたものが核型自体不明だったのであれば、それは相当な珍事であったと言えよう。細かな構造異常をも見分ける技師が、X染色体かY染色体かを見分けられなかった、という事態は起こり得るだろうか。検査機関は病院から依頼されているのだから、普通は再検査などを行い何としてでも結果を病院に提出するだろう。ミネルバクリニックはこのG分染法について、以下のように述べている。

ヒトにみられる24種類の染色体(1~22、X,Y)は、細胞遺伝学レベルで特異的な染色をすることにより簡便に同定することができます。

染色体検査法:G分染法(Gバンド) | 東京・ミネルバクリニック より引用

性染色体がXであるかYであるかを特定することは容易に可能であると考える方が、やはり自然ではないだろうか。

◆Aの症例に対する周囲の反応について

 診察室での会話などプライベートな話は他人が知る由もなく、質問することも憚られる話題であろう。そのため本人も詳細には話さず、周囲も"染色体異常による半陰陽である"という本人の主張を疑うことなく受け入れ、インターセックスや半陰陽、両性具有などとして接しているのだろう。当然医師も含め、ターナー症候群はそのような病気ではない、という声は多数あったかもしれない。多くの医師が診断について積極的に支持していないことは、本人が日本の医師に対して憤っていることからも理解できる。しかし周囲の人はAが好きであるから、診断に懐疑的な意見に対しては差別的だと一緒に非難したかもしれない。医師や自助会の態度は多様性を尊重しておらず、非典型的な症例に対する無知であり、Aは非典型的なターナー症候群なのだと盲信しているかもしれない。一種のエコーチェンバー現象である。そのような人に対しては医学的に正しい意見を伝えたところで、君は全ての症例を知っているわけではないだろう、身体の仕組みには解明されていないこともあるだろう、君は医師ではないのに、医師の診断を疑うもんじゃない、などと言われて終わるのだ。Aがターナー症候群であることが大前提であるため、全く聞く耳を持たないであろうことは想像に容易い。
 特にAの信奉者などでなくとも、知識がなければAがターナー症候群であることを盲信しがちである。オカルトやサンタクロースについて、大人になり知識を得れば信じなくなるだろう。しかし知識がなければ、Aはターナー症候群だと医師に診断されているのだから、そういう症状もあるということなのだろう。性分化疾患の症状は千差万別なグラデーションであり、LGBTを標榜する人間の性別について否定することは社会通念上好ましくない、などと非常に短絡的に考えてしまうのだ。何度も繰り返すが、これは性別の問題などではなく病気であるか否か、という問題である。
 Aに賛同するインターセックス当事者の読者も多いという記述についても、私は懐疑的な立場である。自称インターセックスだったという話は枚挙に暇がないことも著書に書かれており、一概にその通りだとは言えない。

◆インターセックスというアイデンティティ

 「運命の輪は無理して戻すより、いっそ加速させたほうが良いことあるかも」というAの言葉が男性ホルモン注射に対する後悔と開き直りを表現するものであれば、おっさんになることを"苦しみ"として表現することも頷ける。その感情を処理するために"身体的に中性"である証がAにとっては必要だったのかもしれない。染色体異常で身体的に中性だと認められれば、予想以上に男性化してしまった外見に対しても納得し、受け入れられるという話かもしれないのだ。その場合、ターナー症候群という疾患にインターセックスとしてのアイデンティティを見い出していることも想像に容易い。
 私に染色体異常があることを知る人間は交際相手だった男性や一部の友人に限られており、病院の問診でさえ省略することは頻繁にある。診察に関係しない可能性が高い染色体異常よりもアレルギーを列挙することに忙しく、現状婦人科以外では記入する必要性を全く感じていない。心疾患や肥満、糖尿病に関する問診であれば記入すべきだろうが、風邪やインフルエンザなどではまず書かない。記入が面倒なのだ。
 Aは引っ越しなどの全く伝える必要がなさそうな場面であっても常に先回りをして染色体異常を知らせているため、染色体異常はAのアイデンティティなのだと理解している。Aには外見と戸籍の不一致があるため、相手を驚かせないよう事前の説明により配慮しているのだろうか。しかし私は、その配慮には色々と違和感を感じる。実際、カミングアウトに対して何事もなかったかのように流されているシーンも描かれている。そもそも外見と戸籍の不一致について説明する目的であれば、驚かれた際に一言「男性ホルモン注射をしていますので」と伝える方が「ああ、そういうことね」とスムーズに話が進む。素人には難解な染色体の話など出さない方が、軽く外見の説明をするだけであれば話がややこしくならずに済むのだ。このことについて、アイデンティティの問題が大きいのだろうと私は考えている。

◆その他の見解

 卵巣と共にあるいは両側に卵巣精巣を持つ卵精巣性性分化疾患が根拠であると主張を変更する場合、Aは機能する卵巣を持つため核型は46,XXである可能性が高い。その場合は染色体異常についてなど、様々なことを説明する責任が生じるであろうことは述べておきたい。前述の通りAにとってはインターセックスがアイデンティティであると考えられるため、"真性半陰陽の漫画家"という肩書きほどおいしいものはない。従ってこの卵精巣性性分化疾患である場合、アピールしない理由がない。確定診断となる性腺生検まで自ら進んで受け、その体験談についても漫画に描いているものと考えられる。Aはあくまでターナー症候群や染色体異常を主張しているため、卵精巣性性分化疾患である可能性はやはり低いと私は考えている。
 私はAが男性化を訴え、ターナー症候群の診断を受けてインターセックス漫画家となるまでの経緯や心境と周囲の反応について、実態をこのように推測した。真相についてはAやAを診断した医師でなければ分からないだろうが、私の見解は以上である。

■合理的配慮の他に筆者が求めること

◆Aの今後の活動に対して求めたいこと

 講演会においてAは、LGBTに関する用語や認識は短いスパンで変化するため、現在では差別的だとされている用語が古い書籍では使用されていることがあり、出版物については出版年を確認するよう促していた。Aは性分化疾患の話以外では正確な情報を伝えるよう細心の注意を払っている人物であり、本来は公の場で誤った内容を吹聴するようないい加減な人物ではないはずなのである。それもまた著書を読み、講演会で話を聞き、私が抱いた印象のうちの一つである。愛知万博のように時代が伝わる話題を取り上げて対策しているとのことだが、過去の差別的な内容について訂正するための書籍を出版してはどうかと提案したい。例えば「今と昔でこんなに変わった、セクマイの新常識!」のような書籍を出版し、過去の著書に見受けられる問題のある表現を再度取り上げ、自らの手で現代の常識に照らし合わせて描き直していく必要があるだろう。今はこのような考え方が主流である、今はこのような言葉は差別用語なので使われない、今はこのような対応をされることはない、といった内容について、自ら積極的に発信する必要があるのである。
 例えば以下の引用は2005年に出版されたものであるが、訂正がなければ現在も医師はこのように診察するものだと読者は学ぶだろう。性分化疾患は性自認の話である、という誤った認識にも繋がりかねない。私は2004年に告知を受けたが医師とこのようなやり取りは全く行っておらず、染色体異常やターナー症候群についての説明、不妊であることの説明、今後必要になる検査や成長ホルモンの治療についてなどの説明を受けた記憶がある。

性別が、ない! (1) (ぶんか社コミックス) p.6-7 より引用

LGBTとして性的少数者にスポットライトが当たっている令和の世にあって、古い著書にも一定の影響力がある。参加者30人前後の講演会で出版年の確認を促したところで、本の出版年などわざわざ確認する人間の方が少ないであろう。電子書籍であればなおのことである。
 平成から続くネット社会において、人間は得てして興味のない情報を積極的に取りに行かないものであり、現在であっても性分化疾患について誤解される場面が多いことは、日本性分化疾患患者家族会連絡会であるネクスDSDジャパンにより明らかにされている。Aには意外にも性的少数者と性分化疾患は別の話であるとの認識があるようなので、それを前面に出して活動してほしい。講演に際して"染色体の性別があいまいなインターセックス漫画家"という紹介のされ方をしたのであれば、現在では問題があるから表現を変えてくれ、と地方自治体が批判を受けてツイートを削除する前に自ら申し出てほしいのである。インターセックスという言葉についてはLGBT関係であるとの誤解を与えかねないため私は使用していないが、特に差別的であるとも感じない。しかし染色体は性別を定義したりあいまいにしたりするものではなく、それとは無関係に私はごく一般的な女性である。Aに執着している理由について、性分化疾患が私にとってのアイデンティだからという理由でもない。私は誤った認識で傷付く人が増えないよう、可能なうちにできる限り手を尽くしたいだけなのだ。

◆ターナー症候群について伝えたいこと

 もし私がFtMやFtX、レズビアンなどの性的少数者だとしても、ターナー症候群であることとは無関係である。性染色体の短腕欠失が心身を男性化させたり、性的指向を変化させるメカニズムや因果関係が現状においては存在していないからだ。もし今後新たにメカニズムや因果関係が見い出されることがあれば、その時に初めて影響があると言ってよいのだ。しかし生憎ではあるがネクスDSDジャパン代表のヨ・ヘイル氏によると、ターナー症候群は男性化するという話の方が古くて誤った理解であり、男性化しないという話の方がアップデートされた新しい理解である。私は当事者ではあるが、男性化するなどという根も葉もないでたらめな話が一般に罷り通っていた時代を知らず、全くの寝耳に水状態であった。それほどにターナー症候群と男性化は無関係なのである。ターナー症候群が性分化疾患であるという認識自体が徐々に古いものになりつつあるため、解剖学的に女性であるから性分化疾患とは異なる、という理解が最も望ましいだろう。

◆医師に対して求めたいこと

 SRY遺伝子の転座が認められないXX男性のように、未だ研究途上でメカニズムが判然としない症例も存在することは事実だ。Aの症例が医師により研究されれば、XかYかが不明な性染色体の短腕により男性化したターナー症候群の貴重な論文が得られることだろう。Aが要求している通り、Aの症例についてはまず医師による研究がなされるべきなのである。Aの症例に興味がある医師、私の論評に意見や補足のある医師など居れば、Aや私に医学的見地から話を聞かせて頂けないだろうか。信頼性の高い情報元から引用するよう留意しているものの素人が得られる情報は少なく、この考察にも誤りはあるかもしれないからだ。LGBT運動が盛んな令和の世にあって、ターナー症候群及び性分化疾患についての正しい認識を広めるために、手を貸してくださる医師を随時募集中である。

◆身体女性の定義について知ってほしいこと

 最後にラディカルフェミニズムについて述べておく。ラディカルフェミニストの中には性自認に否定的で、トランス女性は男性であるとする立場を取る者がいる。そこで身体女性について定義されるわけであるが、性染色体や生殖器、月経の有無などに根拠を求める誤った発言が散見される。例え核型が46,XYであっても女性は存在しており、月経が無くても子宮を持たなくても精巣があっても彼女らが女性であることは明白である。これは決して性自認の話ではなく、生得的女性=純女であるという意味である。何らかの身体的特徴に生得的女性であることの根拠を求めることは差別的であり、誤っていることはこの場を借りて述べておきたい。このことについて女性スペースを守る会に問い合わせたところ、以下の資料を入手することができた。

参考資料: 女性スペースを守る会により提供された性分化疾患に関する資料

この資料は正しい認識に基づいて作成されていると考えられる。上述の活動について、性分化疾患を持つ生得的女性を女性スペースから排除する意図はないことが確認できたと言ってよいだろう。このことは非常に喜ばしい出来事であった。ラディカルフェミニストの中には性分化疾患について正しい認識を持った上で、身体女性を便宜的に定義している者も存在するようである。for XXやXX onlyという表現を用いていたとしても、必ずしもX0やXYなどの女性を排除する意図ではないということである。見ていてあまり気分の良いものではないが、正しく理解した上での発言であれば実害はないため、私自身は目くじらを立てずに許容していきたいと考えている。代表的な組織からこのような資料が提示された事実は大きいであろう。

■おわりに

 本稿ではAの症例について可能な限り情報を集め考察を行ってきたが、私はAの人柄については概ね良い印象を持っている。Aの真意はAにしか分からないものであるからして、私の述べたAに対する見解が真実であるかのように一人歩きすることだけは避けたいと考えている。しかし同時に、性分化疾患に対する誤った理解がなされることも避けたい思いである。本稿についてはここまでであるが、今後も情報が入れば何らかの更新を行うかもしれない。ターナー症候群及びその他の性分化疾患の患者にとって、私の拙い考察が何かの助けになれば幸いである。


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