三井海洋開発のファンダメンタル分析
概要
三井海洋開発(MODEC, TSE code : 6269)は東証P市場に上場している日本企業で、FPSO(Floating Production Storage and Offloading=浮体式石油・ガス生産貯蔵積出設備)の建造を行っている会社です。
FPSOは洋上で原油や天然ガスを生産、貯蔵し、タンカーに積み出しを行う船型の施設を指し、オフショア油田の開発で重要な役割を担っています。
三井海洋開発は現在5隻のFPSOの建造を行っていますが、その中でもガイアナの油田開発のためにExxon Mobileから受注したUaruプロジェクトは過去最大級の規模となりました。現在工事は順調に推移しており、11/9と12/22に通期業績を上方修正しています。
株価は年初来+60%と上昇していますが、今後スリナムでの受注を獲得できる可能性があること、復配も予想されることから引き続きファンダメンタル面で強気と考えます。
Offshore油田開発の現状
世界的なエネルギー需要の増加、ウクライナ戦争に端を発した供給の途絶、break-even costの低下なども相まって、近年のオフショア油田開発は活況を呈しています。
新たなオフショア投資の多くは南米と中東に集中していますが、特にブラジル、ガイアナ、スリナムの大西洋沿岸はブラジルの国営石油会社による大規模な生産推進と近隣海域で発見された大規模な油田のために活発な開発が行われています。
またドリルシップのデイレート(石油掘削でドリルシップ、その他関連設備を1日使用するために課される料金)は2020年から上昇トレンドを形成し、今年は50万ドルを突破しました(*1)。そして現在世界で稼働中のドリルシップの1/3がブラジル、ガイアナ、スリナムの沖合に集まっています(*2)。
ガイアナでの油田開発状況と受注
ガイアナは、南アメリカ大陸北東部に位置し、東にスリナム、西にベネズエラ(石油の確認埋蔵量世界1位)、南にブラジルと国境を接し、北はカリブ海、大西洋に面しています。
2015年5月にExxonMobilとHessなどのパートナーによってStabroekライセンスエリア内でLiza-1、Haimara-1、Ranger-1などの石油、ガス資源が発見され、石油生産の開始とともにガイアナのGDPは急速に増加しています。
Stabroek brockはエクソンモービルの子会社であるエッソ・エクスプロレーション・アンド・プロダクション社(45%)、ヘス・ガイアナ・エクスプロレーション社(30%)、CNOOCペトロリアム・ガイアナ社(25%)が共同所有しており、その区域内にあるUaru油田採掘用のFPSOを三井海洋開発が受注しています。
ガイアナではすでにSBM Offshore(SBMO:オランダのFPSO企業)が複数のFPSOの供給を開始しており、三井海洋開発が受注したFPSOは5番目の船となりますが、規模としては2-3年分のキャッシュフローが安泰といえる非常に大きな受注です。
スリナムでの油田開発状況
スリナムはガイアナの東に位置しており、2020年初頭にBlock 58でApacheとTotal EnergiesによりMaka-1探査井の発見が発表され、その後も複数の油田の発見が報告されています。ガイアナのStabroek brockから東側に連続する形で油田が発見されていることがわかります。
スリナムでは今後FPSOの入札も予定されており、三井海洋開発の更なる受注も期待できる状況です(*4)。
株主還元と考慮すべきリスク
COVID19に伴う工期の遅れから業績悪化に陥り、2022年には無配となりましたが、減資を実施したことで、今後十分な利益剰余金が確保できれば復配も期待されます。
リスクとしては事故や天候不順に伴う工事進捗の遅れが挙げられます。最近ではCOVID19パンデミックに伴う工事の中断などがあり、2020年12月期、2021年12月期決算では2000-3000億円規模の営業損失となりました。
また中南米諸国は依然として政情が不安定な部分もあり、直近ではベネズエラとガイアナの国境紛争のニュースもありました(*5)。現時点では油田開発への影響はありませんが、今後の展開を追う必要はあるでしょう。
参照記事
*2 https://oilnow.gy/featured/drill-rig-day-rates-to-peak-at-500k-in-2023-westwood-energy/
*3 https://www.wsj.com/articles/the-offshore-oil-business-is-gushing-again-11674277212
*5 https://jp.reuters.com/world/security/ZPTXVQK7Y5IADPH3BAL6JOTQQA-2023-12-08/
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