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「適応力」(信頼関係)が治癒力を引き出す

心の「エゴ」が動く時

治療者として臨床現場で活躍している人であれば、治療法云々以前に患者さんとの信頼関係、ラポールは「治癒力」を引き出す上でとても大切だということは感じていると思います。しかしながら、「信頼関係」が大事だと分かりつつも治療者としての治療法に対する強い「信念」は大切に持ち続けていたいものです。でも、それが強ければ強いほど、「信頼関係」に影響を及ぼすことがあります。その影響とは治療ができる、自分は治せるという自尊心や自負心に関係するのですが、心のどこかに「自分が正しいということを解ってもらいたい」という心の「エゴ」が動く時があります。患者さんにとっては症状が改善することは、最も重要な課題であり、そのための来院で、治療者が伝えていることが正しいかどうかよりも、むしろ患者さんが考えていることが正しいということを認めてもらいたいということの方が患者さんにとっては重要課題である場合が多いのです。そのようなことは、頭では理解しつつも時折、油断をすると、ついついその「エゴ」が現れます。私も40年近く臨床を通して多くの患者さんに接して、まだまだ修行過程だなと反省しております。

「いつまで経っても修行半ば・・・」

皮肉なもので、治療者の成功体験が多ければ多いほど、治療者の「傲慢さ」が知らず知らずのうちにでてくるようです。頭ではその「エゴ」を認識してコントロールしなくてはと思いつつも、ついつい「エゴのスイッチ」が入ってしまい、「いらぬことをいってしまったかな・・・」と反省。私は治療法や臨床を教える立場なのだから、常日頃からそのようなことは他の勉強仲間にも伝えつつも、「いつまで経っても修行半ば・・・」という感じの今日この頃です。治すことにこだわり続けている私のような治療家は、治療後すぐに症状が改善するということを目標にしており、症状の種類にもよりますが、多くの患者さんでその場で痛みが消失したり、軽減したりするケースが控えめにいっても9割以上あります。そのような改善率で臨床を進めていると、その場で、何も変化を感じない患者さんに遭遇すると、私の心の中で「そんなはずはない・・」とうような「エゴ」が見え隠れします。治療後の変化を感じてもらえないのは、まだまだ自分の力不足と謙虚に、真摯に受け止めることができればいいのですが、心の奥では問題の矛先を自分ではなく患者さんに向けている自分がいるようです。

治療者の「適応力」が患者さんへの「治癒力」

もちろん、全ての患者さんを100%満足させることはできないし、治療をする前から、恐らくこの患者さんは、治療を終えても満足されないタイプだなと予測しつつも、喜んでもらえないとやはり残念に思いますし、どのようなアプローチでチャレンジすればよかったのかと振り返ります。肝心なのは同じ様な症状を抱えていても患者さんそれぞれのストーリーがあり、そのストーリーをしっかりと聞いて、できるだけ患者さんの立場でそれを理解することです。私はそのことを患者さんに対する「適応力」と呼んでおり、様々な患者さんに臨機応変に適応する力量が問われているのだと考えています。そして、治療者の「適応力」が患者さんへの「治癒力」にも関係すると考えています。治療家の中には、治療法の技術技能よりも、患者さんとの「適応力」、すなわち信頼関係を構築することに秀でた治療家も少なくはないと思います。恐らくその様な治療家の治療院には多くの患者さんが頼りにするでしょうし、治療技術云々よりも、治療者としての在り方に心惹かれているのだと思います。私はまだまだ修行半ばでその在り方を学び続けています。


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