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NUM-AMI-VACCINE(8) 念仏の先へ


▼前回記事


ヤンデル「ここまでのまとめです。医療の専門家たちが出しているメッセージは、やはり限定的ですよね。医療者にとっての『自分事(我が事)』とは患者ですので、患者のワクに入ってくる人……たとえば診察室に入ってくる患者さんのように、 "医療関連で困りごとがある人たち" に対してはメッセージを届けやすい。でも、冒頭で市川さんがおっしゃっていたように、たとえば若い人たちはもうコロナになんて興味がないわけですけれど、そういう人たちに対して広く届ける言葉を、医療者たちは持っていないのではないか。」


ヤンデル「このような問題提起に対して、(医療者とメディアの)双方がすり寄っていく……フィックスするやり方はいろいろありそうなんですけれども、それにしても、けいゆう先生のようなごく一部の優れた人を除けば、自分の専門範囲よりもさらに広い範囲へメッセージを届けることは難しいし、モチベーションも保てないというのが正直なところです。」


ヤンデル「また、たとえばアメリカの峰先生や木下先生が、『患者さんに一言でズバッと言い切れない弱さがある』と嘆いているというお話、さらにはけいゆう先生が指摘した、『そもそも我々医療者は、本質的に短い言葉で勉強しようという考え方をしていない』というずれもある。」



―――「ワクチンを2倍にしたらワクワクチンチン」ってのは、あれ、念仏ですよね?

華厳の教えを広く民衆に伝えきるなんてそもそも無理、仏教哲学は難解で、ごく限られた人しか理解できない、あるいは誰も理解できないかもしれない、一生探求していく科学みたいな世界なんですけれど、

そういう難しいことはいいからとりあえず、ナムアミダブツと唱えておけば、あなたは救われるんだよ、これがホトケサマの教えなんだよと、一言でズバッと言い切ったことで、仏教がこれだけ民間に浸透したってことは、あると思うんです。

もちろん、ナンマンダナンマンダっていくら唱えても、仏教本来の教えなんてものは1ミリも伝わらない、そう批判する人もいっぱいいたと思いますけれど。

ひとまず、民衆の中に「一言」を根付かせたことで、仏教全体が延命して、その後、あらためて「本来の仏教はどうなってるんだろう」と、人々の中から自然に興味が巻き起こって、真言宗あたりの人気が再爆発するなんてこともあるわけで。

つまり、ヤンデル先生の「ワクワクチンチン」ってのはあれ、念仏でしょう?

私にはわかってますよ―――



ヤンデル(いや……ま……違うけどな。ぼくは単純に、つまんねぇギャグが、好きなんだ。)





けいゆう「たしかに、一部のメディアは発言を切り取ったり、あやしげな情報を言う人を選んだりします。でも、だからと言ってそのメディアに専門家が出席しなければ、いつまでもあやしい人ばかりが出演し続けることになる。だから、専門家がまったくメディアに出ないというわけにはいかない。誰かがやらなければいけないんだったら、自分がやろう、と思ってやっています。これはひとつ、モチベーションとしてあげられます。」

ヤンデル「なるほどねえ……。」

けいゆう「あと、これまでは自分の意図をうまくメディアを通して伝えていただけることが幸い多かった。これはぼくがうまくやったと言いたいわけではなくて、たとえば週刊誌の方とか、某テレビ局、新聞社、さまざまなメディアの方は、ぼくに取材をしてくださる際に、ぼくのことを大変よく知ってくださっていました。」

ヤンデル「ああ……(水野さんみたいな人とあちこちで出会えたんだな)」

けいゆう「ええ。ぼくがどういうことをしゃべりそうかということをよくわかっている。この企画の中で外科医けいゆうさんはこういう場面でしゃべってくださいと、企画全体の意図を教えていただいたとき、『よく見てるなあ……』っていうことばっかりでした。そういう方々に実際にお目にかかると、付箋をたくさん貼り付けた本を持っていらっしゃる。すっごい読んでる。完全に分かってる。今のお話は本のここに書いてありましたねってその場で開けるくらいに。そうなると、話す側としても、『これは変な風に切り取られるわけがないよな』と安心してお話することができる。」

ヤンデル「なるほどぉ」

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(↑誰がうまいことを言えと)


水野さん「たとえば……専門家のみなさんは取材を申し込まれたときに、『これ、読んできてください』とあらかじめ資料を送っておく、というのは手かもしれないですよね。」

けいゆう「ああ、なるほど……それって困らないですか? メディアの方は」

市川さん「それで困るやつは……そもそも切り取ろうとしているやつですよ。

水野さん「そうそう」

けいゆう「ああ(笑)」


けいゆう「あとは……最初に企画の全体像をお伺いするようにはしています。コンテンツ自体がどういう構成なのかと。」

市川さん「ああ、たしかに、全体像を最初に語らないやつはヤバいですね。それは『見抜き方』として素晴らしいと思います。」



ヤンデル「結局……うまくやるコツってのは『組むこと』なんだろうなあ。市川さんがやられてるメディ勉(メディカルジャーナリズム勉強会)も、みんなで集まってやろう、っていう意識を感じますもんね。」



市川さん「現状の、医療情報をめぐる状況ですが、私から見て、ツイッターの世界はけっこううまく回ってるんじゃないかと思っています。」

ヤンデル「ほう」

市川さん「ある程度、言論が公開されざるを得ないということ。良くないものがあると、めんどくさいリプライがいっぱいつくという構造。ツイッターで不適切なことをつぶやくと燃える

ヤンデル「めんどくさいリプライ(笑)」

市川さん「わりとうまく機能しているんじゃないかなと思います。あとは、二項対立的なものがより減れば、なお良くなるでしょうね。各SNSを比べてみると、ツイッターが一番ワークしている。」

ヤンデル「(小声で)ツイッターはワークしてるんだ……」

市川さん「一方で、SNSの中でも比較的クローズドなところ、たとえばLINEとかクラブハウスでは、内部でどんどん煮詰まってしまう感覚があって、そこはちょっと怖いな、と思うこともありますね。」




市川さん「二項対立をしないように気を付けながら、情報を広げようとがんばっている人たちを、応援する雰囲気、応援する空気が広がるといいですね。そして、適切な情報を扱う人たちのコミュニティが大きくなっていくといいと思います。」

ヤンデル「メディ勉にしてもね。SNS医療のカタチもそうか」

市川さん「たとえば……EU(※市民の医療健康情報に対する情報源として医者や薬剤師が頼られている、第3回参照)のように、医療者が自分の患者だけじゃなくて、近所の人あたりにも情報を広げてくれるようになれば……そういうコミュニティを作ることができればなと思っています。

ヤンデル「すごいおもしろいですね、これ、とてもおもしろいので、この座談会をあとでnoteにまとめる際に、膨らませて書くと思います。」


(※もはやほかの場所膨らませすぎて疲れたので、医療者の周りに情報のマルチレイヤ―をつくり、市民が気軽に医療情報にアクセスできるような仕組みを目指す話については、また次の機会に書きます。司会の不手際をお詫び申し上げます。)




水野さん「ボランティアで医療情報発信に携わってくださっている方々に対して、本当にありがたいと思うし、すごく素敵だなと思いますが、やっぱりメディアがそういうものに頼っていくことにも限界があるし、難しい部分もありますよね。でも、じゃあ、ひるがえって、メディアが安泰なのかというと、お金の事情も苦しいし、ビジネスの現場で数字などを見ていると、メディアが今後いかにマネタイズしていくかってのもすごく大変なんですよね。」

ヤンデル「マネタイズ。」

水野さん「ほんとに。感じます。ちゃんとした取材とか発信にはやはり時間とお金がかかるわけで、でも、健康情報はできるだけ無料で広がっていってほしいというジレンマとかも感じています。いい情報にはちゃんと対価が支払われてほしいけれど、でも広く普及してほしい、この難しさというものを、今日うかがっていて考えさせられるところでした。」




オツカ「今日の会はほんとね、市川さんと水野さんをお呼びしてよかったよね。」

ヤンデル「ほんとだねえ。」

オツカ「あと……ぼくら医療者側の反省点のひとつとして、マスコミの人たちが間違った報道をしたときにすぐマスゴミって言うよね。ほんとよくないよね。でも、今日見ていただいた方にはおわかりだと思うんですけれど、市川さんとか水野さんは、医療情報を発信することに対して真摯ですよね、本当に。」

ヤンデル「そうだそうだ。」

オツカ「真剣に考えてずっと取り組んできていらっしゃる。プロのプライドもある。マスコミの方々も間違うことはあると思いますけれど、(市川さんや水野さんのような)そういった方たちで、前向きに取り組んでいる人たちの心を折るようなことを言っちゃだめだよね。」

水野さん「ありがとうございます。うれしい」

市川さん(手を合わせる)

ヤンデル「こうやってやるとけいゆう先生がぬいぐるみ持ってるように見えるね(今気づいた)」

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#いどばた 第2回、「医療の『い』と、メディアの『め』」の観戦記はこれでおしまいです。ご清聴ありがとうございました。最後に、市川さんと水野さんの直近のご活動についてリンクを貼りますので、ぜひ容赦なくゴリゴリリンクを踏みに行ってください。)



▽水野さんのライフワーク『からだのシューレ』では、2021年3月9日(火)のよるにトークイベントを開催します。

「AIに仕事を奪われる」「人間はもっと創造的な仕事をするべきだ」――。自分の仕事はいらなくなるのかもしれないと不安になるような言葉が世の中にあふれています。

しかし人工知能の専門家・松田雄馬さんは「AIは意外とぽんこつですよ。人は生きているだけで創造的です。AIのことをよく知って、仲良くしてあげてくださいね」と笑います。

人とAIの大きな違いは「身体」があるかどうか。AIは身体をともなった「重い記憶」を持つことはできない――。松田さんはそんな風に指摘します。

『人工知能に未来を託せますか? 誕生と変遷から考える』(岩波書店)、『人工知能はなぜ椅子に座れないのか: 情報化社会における「知」と「生命」』(新潮社)の著者で、「人間を人間たらしめているものは何か」を問い続けている松田さんと一緒に、身体をもつわたしたちとテクノロジーの向き合い方を考えませんか?



▽市川さんは現在『READY FOR』にご所属です。直近では「コロナSOS」というクラウドファンディングが設立されています。

このクラウドファンディングに関連するライブイベントが、2月25日(木)のよる20時から行われます。

ワクチン・変異ウイルス・オリンピック実施の今後…
新型コロナ関連の状況は刻々と変わり、今後どんな未来が待っているのか、数か月後さえ見通せない不安な日々が続いています。
3か月・1年後にどんな未来が待っているのか。
それをより良きものとするために、いま必要な支援とは何か。
去年2月の感染拡大直後より、最前線での取り組みと発信活動を続けてきた高山義浩さんに伺います。
【予定テーマ】
・変異ウイルス/ワクチンの現状と今後
・1年後の新型コロナはどんな感染症になる?
・高山医師が考える 新型コロナ収束「3つのシナリオ」
・いま求められる支援① 外国人コミュニティをどう支える
・いま求められる支援② コロナ収束後を見据えた「可逆的」医療システムの構築



(おわり。)

▼第1回から見る