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アイディア前夜祭

まてぃさん


いただいたお手紙を読んで、複数のことが同時にわかりました

▼いただいたお手紙




びっくりしました。本当にありがとうございます。まてぃさんのお手紙のおかげなんです。




昔、任天堂の宮本さんという方が言ったとされる「名言」を引きます。


「複数の問題を同時に解決できるものをアイディアという」


だいたいこんな感じだったかな。きちんと調べてないんでうろ覚えですけれど。


この名言を引用すると、今、ぼくに起こったこと……「複数のことが同時にわかった」というのは、アイディアを出すための下準備が整ったということだと思います。



そもそもぼくは問題が複数あることに気づいていなかった。

いや、感づいてはいたのかもしれませんが言語化できてなかった

今の医療情報産業をとりまく複数の問題点をきちんと言葉にして整理しておかなければ、アイディアだってうまく投入できません。

それがようやくできる。


「複数の問題」を列挙します。



1.ぼくはメディアが作りたいわけじゃなく、新しいシステムを見てみたいのに、「メディアを運営したいように聞こえてしまうような」説明の仕方をしていた。

この連載を通じて、ぼくは「メディアを作りたい」とは一言も書いていないのですが、読み返すと確かに、「新しいメディアが運用できればなー」みたいな夢を語っているように読めてしまいます。知らないうちに脳が既存のアイディアに引っ張られている。

このことは、もしかするとぼくだけではなく、多くの医療者たちが知らず知らずのうちに陥っているワナなのかもしれません。「もっといいメディアがあればなー」みたいにメディア批判をする人や、「新しいメディアを立ち上げました!」とがんばる人たちの、心の奥を高精度に言語化すると、「いや、メディアにこだわる必要もないんだけどさ……」と言っているかもしれない。でもそのことに、少なくともぼくは気づいていなかった。用いる日本語がメディア用語に引っ張られている。解像度が足りなかったと言ってもいい。



2.医療者は個人レベル・ボランティアでさまざまな情報発信をはじめており、複数の優秀な発信者が育ちつつあるが、内容と発信力が揃った人の数は少ない。

これはまてぃさんの指摘された「定期性」、すなわち個人レベルでは情報発信を定期的に運用することが難しい、という話につながります。

仮に、「くつ王」とか「けいゆう」のような、言ってみれば人類がラッキーにも引き当てたSSSSRキャラ(200連ガチャを三ヶ月毎日やっても当たらない)レベルの優秀な書き手が2000人いるなら話は解決するかもしれませんけれど、それはさすがに虫が良すぎるというものです。

だいいち、くつ王が永遠の命を得て未来永劫すてきな記事を書き続けてくれる可能性は、残念ながら20%くらいしかないと思います。

ボランティアで医療情報を扱う医療者の頭数を増やさないといけません。少数の天才に頼っている現状は普通に問題です。



3.レガシーメディアや新興のウェブメディアなどが「編集長を据えたシステムづくり」をすでにやって発信している。しかし、医療者たちは「これじゃ足りない」と思っている。

すでに存在する「編集長付」のメディアは、大変多くの情報を発信していますし、そこにはおっしゃる通りの信頼があります。

たとえばぼくは、震災以降どんどん進化していくNHKの災害報道姿勢を心から尊敬しています。また、Twitterで叩かれがちな新聞社も、SNSのバイアスを除いてよく見てみれば、よくぞ毎日高クオリティの報道を続けているなあと感心することしきりです。

しかし、そういった「編集長付」メディアが今も出し続けている医療系情報に関する信頼性がさほど高くないことを、ぼくの立場から指摘しないわけにはいきません。多くの医療者が自分で発信しなければだめだと危機感を募らせている理由の一つは、そこにあります。

編集長がいたって、医療記事の質が上がるわけではありません。ウェブメディアを見れば一目瞭然です。編集長自体がしょっちゅう炎上する医療系メディアだってあるわけで。

ここはまてぃさんの記事を読んではっきりと「わかった」ことなんですが、「これ以上メディアを作っても、少なくともぼくがやりたいことは叶わない」と思います。そもそも、もうメディアはいっぱいあるんだもの。

もっとも……まてぃさんのおっしゃる「編集長」+「定期運用」+「善意の医療者」の組み合わせで、これから新しくメディアを作ることが全く無駄だとも思いません。というか、新たにメディアを作れば役に立つだろうとはっきり予想できるジャンルはあります。それは

 ・難病
 ・希少疾患
 ・マイノリティ

に関する情報を出すメディアです。

これなら、編集長システムは十分に機能するでしょう。ある程度限られた領域の記事を揃えてクオリティを担保すればいいからです。ニーズはまだまだいっぱいあります。

でもぼくが今回の連載でまてぃさんに聞きたいのは、たぶんそっちじゃない。それがよくわかりました。



4.「メディア運営」で利益を生む構造を作らないと、金を出す人がいないし、アイディアを具現化できそうな人の興味を惹きづらいし、そもそも人件費が払えない。

このことはずっと考えていました。医者がボランティアで医療記事を書いたり講演をしたりしているのを、多くの人が助けてくださる昨今ですが(各種メディアとかほぼ日とかほんとありがとうございます)、すでにあるメディアの一部を間借りさせて頂く構造では「強みをもっと強化する」ことはできても、「穴を埋める」ことはなかなかできません。さらに、まてぃさんのお手紙をずっと拝見して、人件費を継続的に投入して新しいシステムを立ち上げることの難しさを痛感します。




以上の問題点が前回のまてぃさんの記事で一気に明らかになったんです。ほれぼれしますね。

じゃあこれを解決する「アイディア」はあるのか……。


twitterの「トレンド」枠に医療カテゴリを設けていただけるよう働きかけ、twitterで医療従事者がupする有益な記事リンクを紹介できるスキームを設けていただくとか。

妄想ですが。


いや、この妄想、同感です。ぼくもずっと考えていました。

既存の分散型ネットワークとして広く普及し、ユーザー外の人にすら既存のメディアが引用するかたちで届く可能性が高くなっている、ツイッター。

これを使うしかないんじゃないか、と思います。


ただ……まてぃさんがおそらく気にされて、きちんと「妄想ですが」と付記されたように。

我々は、別にTwitter Japanの運営に携わっているわけではなく、ツイッターに新しい機能や権限を付与する力もないですね。






だからツイッターの中の人に聞いてみようと思います。

そして、ほかにも、いろんなメディアの人たちに聞いてみようと思います。NHKの人とか。新聞社にお勤めの方や、雑誌を作っている方。

さらには、医療者にも聞いてみましょう。



となると……まずはこの記事にたどり着くまでの一連の流れを、プレゼンにまとめないとだめかな。連載を全部読んでいただいてもいいですけれど、やりとりが少し、長くなってきましたよね。


だったら……


えー、これは提案なんですが。

まてぃさん、この話題で、座談会やりませんか? YouTubeで、リモートで。

何人集められるかはわかりません。誰を呼ぶかも決めてません。ほんとうに今考えたことですので。

ただ、ぼくらとまてぃさんが話し合う姿をみなさんに見て頂くことで、もしかすると、現状の複数の問題点をもっとあぶり出して……



それらを一気に解決する「アイディア」が、みんなの頭から出てくるかもしれません。もちろん、ぼくの頭からも、です。


どうでしょう。ご検討ください。

次のお手紙を楽しみにお待ち申し上げます。



(2021.1.20 市原→まてぃさん)