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さよなら、ブラック・ジャック(9)ノードよ輝け

こちらの記事(↓)の続きになります。本連載の最終回です。

今日は「さよなら、ブラック・ジャック」のまとめとして、雑感を述べます。前回までの記事でおもしろさは出尽くしました。今日はもうここで閉じていただいても大丈夫です。

なあに、今日の記事には、Twitter Japanの人とぼくがどんな話をしたのか、くらいのことしか書いていませんので。だいいち、まとまってない。ごめんね。読みにくいと思う。だから前回までで終わりでいいです。

それではみなさん、良いお年を。



それでも読みたい人はどうぞこの先へ。




・・・


12月13日に開催された「 #医療マンガ大賞  アフタートークイベント」を、ぼくがnoteにまとめはじめたのはイベントの翌日である。そこからわずか1週間ちょっとの間に、さまざまな医療情報系の催しが開催され、ドッカンドッカン盛り上がった。





そうそうたるイベントばかりだ。河野大臣まで言及している。すごいな。

けれども。

これらのイベントはいずれも、ぶっちゃけ、広く一般市民に知られた……とは言いがたい。

一部の医療系クラスタを追いかけていた人以外からしてみれば、開催されたこと自体、ほとんど気づかなかったろう。

正直に評価すると、「情報を持っていない人」にあたらしく何かを届ける役割は果たせていないと思う。

一部の際だった発言秀逸なひと言については、観測者たちによって「実況」され、あるいはインフルエンサーたちの引用RTなどによって、耳目を集めた。

けれどもそれには瞬間的な効果しかなかった。今朝になったら、もうタイムラインは昨日のM-1の話題一色。朝食はコーンフレーク。悪くないだろう。

イベントそのものがもたらす「具体的な情報伝達効果」は刹那的で、微々たるものである。

そもそも、医療マンガ大賞のアフタートークイベントで語られた内容のうち、どれだけのものが今もタイムラインに残っているだろうか?



では、このようなイベントに意味がないのか?

そうではないと思う。むしろ、大きな意義があるというのがぼくの考えだ。



イベントの役割は、元からこういう話に関心がある人たちの連携を強化すること

やさしい医療情報を伝えたいと願う人たちと、そのファンたちが、自分たちが進む方向がおそらく間違っていないだろうと確認するための道しるべ


これらがイベントをやる意義ではないかと考えている。上記の元になっているのは、おそらく「ファンベース思考」だろう。

あるコンテンツに対して、完全に興味がない人へ広告を打つのではなく、すでにコンテンツを愛用している人々(コアなファン)と交流をする。大金をはたいて不特定多数にいかに見てもらうかという駅の広告やTVのCMのようなやり方ではなく、「ファンと、自分たち」のために説明を尽くすのだ。

そうすることが結果的に商品の売上げをあげたり、商品自体のイメージを高めたり、あるいは商品開発のヒントを得たりすることにつながる。

これ、「コンテンツ」の部分を「医療情報」に置き換えてもけっこう通用するのではないかと考えている。

たぶん医療情報系のイベントというのはファンベースの情報共有手法だ。そのことにイベント開催側が気づいているかどうかはともかくとして……。



日常診療の延長((c)ほむほむ先生)として医療情報を発信する人たちは、イベントを通じて、すでに医療情報に興味がある人たちに言葉を届ける。イベントにやってくるだけで、そうとう情報リテラシーが高い。熱心に情報を集めようと意気込んでやってくる人々。つまりは医療情報のファンが集まってくる。

そこで得られるリアクションを元に、表現を磨く。より届きそうなやり方をアップデートしていく。足りない物を探し、長所を伸ばしていく。

あるいは自分と同じように医療情報を発信しようとしている同志たちと語り合いながらモチベーションを高めることも大切だ(「ファンベース」にもそういうくだりが出てくる)。発信者の輪を広げていくことにもつながるだろう。

これは、情報ひとつひとつを人々の頭に植え付けようとするやり方ではない。予備校で講師が学生たちに暗記する項目を授けていくのとは異なる。

だいいち、医療情報なんて量が多すぎて、ひとつひとつ暗記しようと思っても無理だ。だったら、「いつでも適切な医療情報を手にしやすい場所に居続ける」ほうがかしこい、すなわちネットワークの中にいればいい。発信者と受信者たちがネットワークの中で常に連携している状態。そうすれば、少なくとも、ネットワークの中でだけは、情報の精査が可能になる。もちろんエコーチェンバー現象には気を付けて……。


つまりイベントというのは小さなネットワークを作って強化する取り組みなのだなーと思うのだ。そういったネットワークが、この年末にはずいぶんといっぱい開催された。

毎回違うメンバーが、違うやり方で会を開いているが、登壇者たちは微妙にほかのイベントと繋がっている。ひとつひとつの規模は小さいけれど、そうやって少しずつ同じで、少しずつ違うイベントが複数ある状態……。



これってなんだか、不完全な分散型ネットワークに似ているなあと思った。

下記の図でいうと、(B)かな。
(C)(分散型ネットワーク)までもう一歩、といったところ。

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引用元: https://www.researchgate.net/figure/Centralized-decentralized-and-distributed-network-models-by-Paul-Baran-1964-part-of-a_fig1_260480880

一番右(C)が「完全な分散型ネットワーク」。

一番左(A)は「集中型ネットワーク」で、真ん中(B)は「非集中型ネットワーク」。

(B)と(C)には、「情報発信の中心点がない」ことに注意してほしい。

(A)集中型ネットワークだと、情報は常に真ん中のエライ人から降りてくる。たとえば医療情報を世に広める場合、もし、「正確な医療情報」とやらが世の中に存在するならば、これでもいいだろう。

けれども医療情報ってさー、視点によって異なるじゃん。「さよなら、ブラック・ジャック」で見てきたようにさあ。

たぶんだけど、(A)だと今以上のことはできないと思うんだ。

かといって、「医療者と患者では視点が異なるねえ、人それぞれだねえ、困った困った。」では、なんの解決にもならないわけで。


複数の視点が交差した社会があるってのはもうとっくにわかってるんだ。「ケースバイケース」なのは前提であって結論ではないんだよね。

「視点が入り交じっていることを前提に」情報を整備するにはどうすべきかってのを考えないといけない。


現時点で、医療情報系のイベントって、(B)までは行けてる気がするんだ。複数のイベントが中心となって、複数のインフルエンサーたちが情報の集中点を担って、その周りに人が集まる、みたいな……。


でも、今、インターネットって、すでに(C)なわけじゃん?

ああブロックチェーンの話ね、などとピンとくる人もいるでしょ。


あるいは、これ、「ヒトの脳といっしょだね。」と思ってくれる人もいるだろう。

情報化社会におけるネットワークは、もうヒトの脳に近づいて来てるんだよね。無数の発信源が受信源とめったやたらに接続していて、もはやニューロンかってくらいにバカバカあちこちで発火していて、情報の中心点なんてどこにもない。情報の中心となる場所がわかんなくなってる。

脳科学で、ヒトの心が脳のどこにあるかが結局解き明かせなかったのも、脳という巨大で精巧なネットワークは分散型に近くて、中心点がないからだ。

ニューロンが入り乱れて、発火をくり返していくうちに、思考のけもの道みたいなものができて、それが意志になっていくように……。

たぶん、社会における情報ってのも、どこかが中心になって発信することでなんとかできた時代はそろそろ終わるんだと思う。


となるとぼくらにできること。

それは、ネットワークの中に埋め込まれたニューロンとなって、繰り返し、繰り返し、「やさしいやりとり」の中で発火し続けて、社会の意志をなんとなくよい方にもっていくこと。

野球のトレーニングのことを思い浮かべて欲しい。バットの素振りをくり返すとニューロンがその都度発火して、だんだん全身の協調がとりやすくなって、次第に動きが洗練されて、無意識にグッドスイングができるようになる。脳ってそういうところがあるんだ。適切な動きを反復し続けるとどんどん最適化されていく。あるいは武道でもいい。音楽でもいい。どれもいっしょ。「適切な反復」がカギなのだ。

これと同じように、「適切な情報を何度も何度も流し続ける」ことが、「社会が無意識によいswingをする」ことにつながらないだろうか。

であれば、ぼくらは、ネットワークであることを続けていくしかない

つながって、反復して発火していくしかないんだ。代謝していく世の中で。たとえひとつひとつの細胞が昨日と違うものに生まれ変わっているとしても、総体として、よい行動を反復していく。

イベントによるネットワークの補強ってのはたぶんそのためにあるんじゃないか。

そして、ここにはまだ改善点が眠っている気もするのである。




・・・



#医療マンガ大賞  アフタートークイベント に話を戻そう。

このイベントではハッシュタグで感想が寄せられた。

最初ぼくはここにすべてのツイートをまとめていたのだが、途中でtogetterがバグってデータが失われたため発狂し、2度目にまとめたときにはだいたい半分くらいしかまとめられなかった。すみません。


つまりは約1/2くらいの感想でこれくらいのボリュームなのだ。ぶっちゃけ、少ないと思った

オズマピーアールという広告代理店と、横浜市という行政が参加して、SNS医療のカタチという人気コンテンツ、さらにはそこに幡野さんが来て、佐渡島さんも関与している会で、この程度しか感想がないのはもったいない。

会が終わったあとでそれに気づいたぼくは、懇親会で、ただちに犬に聞いた。

「ワンワンワワンワ?」

すると犬はこう答えた。

「バウバウワンワンワオンワオン。」

なるほど……!

ぼくは犬の意見にぐうの音も出なかった。その後、席を立って、まずはSNS医療のカタチのコアメンバー(堀向、イケメン、B'z)の元に寄っていき、腰を下ろして、開口一番彼らにこう伝えたのだ。



ぼく「われわれには反省点があるようです。犬に聞きました。」

堀向(スン……)(両手をひざにのせてぼくの方をまっすぐ見る)

山本(スン……)(グラスを持ち直してぼくの方をまっすぐ見る)

大塚(スン……)(ぼくの方をまっすぐ見る)

ぼく(かわいい子犬かよ

ぼく「では申し上げます。ぼくら、どうやら、話が長いらしい。」

堀向(スン……)山本(スン……)大塚(スン……)

ぼく「もちろん診察室ではそれでいいんだと思う。ていねいに、やさしく、患者といっしょに情報を共有するために、起承(転)結、順序よく話をしていくことはとても大事だと思う。けれどもイベントでそれをやってしまうと……起承の段階で結が見えていないと……聴き入ってしまって、実況ツイートができないんですよ。」

堀向「おお……」

山本「ああ……」

大塚「ウルトラソウル……」

ぼく「たぶんイベント用のしゃべり方ってのがあるんだ。ていねいに、やさしく、かつ、イベントに参加している人たちが実況しやすいようなしゃべり方を手に入れるために、ぼくらはさらに進化した方がいい。もっと実況されるようなイベントをやれば、それだけ、反復してネットワークが発火する。そのほうがきっと情報がよく伝わる」

堀向「うわあー難しそうだなあー。」

山本「ああ……わかりますよ、しかしセンセーショナルにならずにそれをやろうと思ったら相当……」

大塚「ハァイ……」



ぼく「やあ竹内さん。どうでしたか」

竹内「おもしろかったです……そういえばこないだ話していたんですけれど、たとえばTwitterで、公認マークってのあるじゃないですか、ああいう感じで、適切な医療情報の発信者にマークを付ける仕組みみたいなのってできないんでしょうかね? 私たちメディアの人間からすると、そういう『頼れる医者の目安』がわかればすごく助かる気がします……」

ぼく「……なるほど、しかし、それやると、公認をとったとらない、あそこまでは公認とれたけどこっちはとれない、みたいになって、だんだん収集つかなくなるでしょうね」

竹内「あー……」

ぼく「たぶんなんですけど、これからの医療情報って、発信者をことさら強調するよりは、受信者とか、拡散者のほうを強化して、総体でのやりとりを高速に反復することのほうが大事な気もするんですよ……」

竹内「(目をひらいたまま首をかしげる)」

ぼく(天使かよ)「あっいやこの話あとでnoteに書いときます」



ぼく「やあ谷本さん、どうでしたか」

谷本「おもしろかったです。Twitter Japanも今後こういう取り組みのお役に立てればと思いますよ」

ぼく「それは心強いです、大塚や山本、堀向たちをよろしくお願いします」

谷本「そういえば先ほどニューロンのアナロジーを使われていましたよね、となるとやはり今後はニューロンが接続しまくっている状況で、発信者をどんどん強化した方が……」

ぼく「いや……ぼくはむしろ経由地というか、ノードの部分でストレスなく情報がすべっていって、発火がフィードバックしてループするような感じで、ニューロンが何度も何度も反復して発火するような……中継点の部分こそ大事なんじゃないかと思うんですけれど……」

谷本「……そうか……

ぼく(今の話だけでわかるのかよ、天才か……?



ぼく「いやー今日はありがとうございました、やっぱあなたの実況があると盛り上がりが全然違いますね、さすがだなー、もしかして、文脈の勘所を掴んで編集する才能がおありなのでは?」

犬「おっバカ野郎、それはぼくの本職じゃねぇか、君に向かって『顕微鏡みる才能がおありですね』とか言ってやろうかコノヤロウバカ野郎」

ぼく「……それはうれしいかもしれない」

犬「ワンワワン」

ぼく「じゃあぼくはまたちょっと向こうに行くからあとよろしく」

犬「君はもうすこし会話とかコミュニケーションの訓練をしたほうがいいぞ」

ぼく「うるせえ! 足りない物はネットワークで補えよ!」

犬「ワンワンワワン」

ぼく「ワンワワン」

オズマピーアール「仲いいですね」

ぼく「しょっちゅう発火しあってるだけだよ。世の中もう中心点なんか要らないんだ、これからは、何度も何度も発火し続けて、世のありようが少しずつ意志をもって動き続けるように、いちニューロンとして反復して発火していけばいいんだ。このイベントに主役はいらないんだよ、ブラック・ジャックが治して終わりの時代じゃないんだ。強いていえばこれから必要なのは、観測者……プラットフォーマー……拡散者……そして、人と医療に対するファンのような存在」

オズマピーアール(ここまでイベント設営が大変だったらしく泣き出す)

ぼく「めんどくさいからここはあとはまかせます」

取り残された人々「あいつにネットワークはまかせられないな」

犬「ワンワン(チャンチャン、みたいな発音で)」



(文中敬称略)(2019.12.23 第9話・最終回)