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PCRを無節操にやっても意味ないと言い続けてすみませんでした

今日はお詫びの記事です。

昨晩ずっと、寝ないで考えていたことがあります。

これまでに私がTwitterやYouTubeなどで申し上げてきた、

「PCRをただ受ければいいというものではない」

「検査というのは未来予測であり、その精度を高めるためには工夫がいる」

といった、医学的・科学的に完全に正しい話ド正論

これらがいくら正しいからと言って、ただこればかりを申し上げてきたことは、下策でした。不徳の至りです。大変失礼いたしました。戦略が足りませんでした。頭も性格も悪かったと思います。

考えてみれば、世の皆さんは、別に、PCRが大好きであるとか、PCRをやらないと生きていけないとか、no PCR no LIFEとか、そういったことは一切おっしゃっていません。

ただ安心したいだけなんですよね。

ただ不安・不満をなんとかしたいだけなんですよね。

PCRはその不安や不満を解決するための一番シンプルで安易な手段

新型コロナにかかってる・かかってないが、ゼロイチで表示され(るように思え)ます。

専門家がどう言っているかはともかくとして、職場の上司や周りの家族、保育園のスタッフ、飲食店の店員などに「俺はPCRで陰性だったぜ!」と言えればたぶんそれで多くの人を安心させることができます。

みなさんが本当にほしいのはPCRそのものではなく、「(PCRで陰性だと言われたから)俺は安全だ」という証明のほうです。

ここでもしかしたらピンときた方もいらっしゃるかもしれません。

「ホームセンターでドリルを買う人は、ドリルが欲しいのではなく、自分の家で壁に穴を開けたいのだ。ほしいものはドリルではなく穴だ」

という話があります。構造はこれとまったく一緒です。

みなさんがほしいものはPCRではなくて、PCRによって得られる「コロナ陰性の証明」のほうです。

それなのにぼくは、ドリルの話……検査の話……PCRという道具の話を直球で解説してしまった。

ぼくは、みなさんの「本当に欲しいもの」に対して、あまり真剣に向き合おうとしてこなかったのだと思います。

思えば、PCRなんてやみくもにやってもだめだよとか、あらゆる検査には使いどころがあるよとか、検査をやるかどうかは医者が判断すべきだよみたいに、科学的に妥当で、医学的に強固な、PCR・検査についての細かい授業みたいなマネばかりしてきました。

「なぜみんなが検査を受けたいのか」を深堀りすることを怠ってきたと思います。

思えば私のTwitterやYouTubeを喜んでくださったのは、雑なくくりをすればファンの方々ばかりでした。

私が何を言っても、「おもしろいねえ」「なるほどねえ」「興味深いねえ」とほめてくれる人たちばかりでした。

現状の新型コロナに対する不安とは別に、たまにTwitterで目にする病理医ヤンデルが、今興味を持っており語りたいと言っている検査の話や科学の話、それ自体は娯楽コンテンツとして楽しそうだからまあ聞いてやろう、と思ってくれる方ばかりが、私の発信を喜んでくれたのです。

同業者(医師、医療者)。

医療系メディア関係者。

科学リテラシーが高いことを喜ぶ方々。

いらすとや愛好者。

こうした人たちにむけて「PCRは万能ではないんだよ」「検査は尤度比を考えて使う道具なんだ」と説明することは、ある種のプチ・エンターテインメントであり、ファンが喜ぶ娯楽でした。

でも私はそれを、「世の医療リテラシーを高める役に立ったぞ」と思い込んでいた。

おこがましいとは思わんかね。

自分が新型コロナウイルスにかかっていたらどうしよう、大切な人にうつしてしまったらどうしよう、という不安。

あるいは、新型コロナウイルスにかかっているかもしれない人が集まるとまずいから、この騒ぎが収まるまでは集まらないでくれと言われて、それでは商売にならないじゃないかとか、楽しみが味わえないじゃないかという、不満。

世の勘所はこっちです。検査のメカニズムなんてどうでもいい(娯楽として楽しんでくださる方々はほんとうにありがとうございます)

PCRという検査の性質を理解しようとか、PCRという検査の限界を知ろうと言われたところで、これらの「自分が感染しているかも」+「自分の行動が制限されていること」に対する解決にはつながりません。

私は間違っていました。

これからは、

「どうやったらみなさんがこの先、自分や自分の大切な人が新型コロナウイルスにかかっていないことを証明できるか」

「どうやったらみなさんがこの先、好きな場所に行って好きな人たちと好きなことをして楽しんだり、やりたいことをやりたいようにやってやりたい仕事をしたりできるのか」

を考えて発信しなければいけません。それが、医師である私が世間から求められているニーズだと思うのです。はき違えていました。本当に申し訳ございませんでした。

お詫びについてはここまでで終わりです。なので、お詫びだけ読みたかった人は、ここでnoteを閉じていただいて大丈夫です。

最後に書いた「万人のニーズ」について。

私がこのニーズに、正直に真正面からそのまま取り組むことは、もしかすると下策かも……ということを少しだけ考えはじめています。なので、ちょっと蛇足を書き加えます。蛇足なのでもう閉じても大丈夫です。

今から書くことはマーケティングに長けた人のnoteを読み、昨晩考えたことです。

上記をさらっと読んでいただければより伝わりやすいでしょうけれども、ここでは私が今日の時点で触れておきたい要点だけを、自分なりに都合よくアレンジします。それが嫌だという方は上の記事を全部読んでください。50分くらいで読めます。

ぼくは昨日考えていました。

消費者……じゃなかった、世にいるみなさんは、いつもロジカルに欲望を言語化しているわけではないということ。

自分が本当に取りたい行動なんて、自分でも説明できないものです。

「PCRを受けさせろよ! PCRをやらないと不安なんだよ!」

と口に出している人も、ほんとうはPCRなんてどうでもよくて、ただ「あなたは新型コロナウイルスにかかっていないしこれからもかからない。だから好きに行動していいよ」と言われたいのです。

そこが本当の、世間のニーズ。

でもぼくはバカだったので、「PCRを受けさせろ!」と騒ぐ人に対して、そのまま「PCRをただうけてもだめだよ」と、相手が口に出したままの不完全なニーズに誠実にこたえようとしました。

こんなことではマーケティングをまじめにやっている人たちに笑われてしまいます。

ところで上記の記事にこのようなフレーズが出てきます。

では消費者との会話はどのようにすればいいのでしょう?何を聞いて、いかにしてJobを発見すればいいのでしょう?答えは、消費者にダイレクトにJobを聞くのではなく、実際に取った行動に関して質問をし、Jobの仮説を立てる、です。

こんなこと考えたこともなかった! ぼくは呻きました。

「実際にPCRをやりたいやらせろと言っている人の話をきちんと聞いて、その人がまだ言語化していない真のニーズを探り出し、そこに医学でお手伝いできることがどれくらいあるものなのかを探る」。

これをやらなければいけないんだ!

さきほど私は、

これからは、

「どうやったらみなさんがこの先、自分や自分の大切な人が新型コロナウイルスにかかっていないことを証明できるか」
「どうやったらみなさんがこの先、好きな場所に行って好きな人たちと好きなことをして楽しんだり、やりたいことをやりたいようにやってやりたい仕事をしたりできるのか」

を考えて発信しなければいけません。それが、医師である私が世間から求められているニーズだと思うのです。

と書きましたが、これも、消費者……じゃなかった世間のみなさまにきちんと聞き取りをしてほじくり返したニーズそのものではありません。あくまで私が想定している「まあ一般人ってのはこういう考え方をしてるはずだよな」という、傲慢な上から目線の産物であります。

そういうとこだぞ、という声が聞こえるようです。

世の皆さんが「PCRをやりたい!」と言ったらその本意を探る癖をつけないとだめだな、と思いました。

人々のニーズが、実際にPCRによって解決できるパターンもあると思います。その場合はPCRをきちんと説明すればいい。

週末にドライブに行きたくてしょうがない人が車を欲しいと言っていれば、車を買う方法を考え、予算を見積り、車種を選ぶアドバイスをするのがよいでしょう。

でも、本当はPCRなんてどうでもよくて、ただ「新型コロナに対する不安をなんとかしてくれ!」なのだとしたら?

週末に旅行に行きたくてしょうがない人は実は電車でもいいのかもしれませんし、旅行というのはエクスキューズで、実際にはただデートをしたいだけなのかもしれない。あるいはVRで海外の絶景を見れば喜ぶかもしれない。

うーん医者なんて所詮は素人です。手に負えない領域な気もする……。

でも。うん、そういうこと、もう少し考えておこう、と思ったのです。考え始めたばかりなのですぱっと解決できるようなアイディアまではたどり着いていません。すみません。蛇足を終わります。読んでもあまり参考にはならなかったでしょ? でもありがとうございました。

ウィッス
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往復書簡マガジン複数やってます。文通相手たちに深謝。

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コメント (11)
ちょっとだけ違うと思います。検査をうけて、違うとわかって安心したいだけじゃなくて、何かあったときにちゃんとお医者さんにかかればなんとかしてくれるっていう気持ちを確保したいのだと思います。どんな病気であれ、かかるかとか治るか治らないかは最終的に運みたいなところがあったとしても、せめてそれまでにちゃんと最善の方法の中に運命をゆだねたいというか、どっちにしろ素人には病院に行くしかできないし、リテラシーのない人は死ねというならそれが傲慢って言うことですよね。命のことを見てるなら、素人だって、自分が死にそうだと思ってるから病院いくのにって思います。
わかる人にしかわからないと言われ続けたら自分は見捨てられてるんだと思う人だっていると思います。内輪だけで楽しそうで、あなたを擁護する人もきっと明るいところしかみない。そこからはみ出た人のことなんてどうでもいいんだろうなと思ってみています。あなたの言うことに賛同しなければ分からずやだ、あの人はわかってないんだと不安なのに揶揄までされないといけないんです。人に助けを求めることをそれでやめてしまうような人だっていると思う。大げさに聞こえるかもしれないけど
私はあなたと全く同じ世代の人間ですが、若い世代でも孤独死したりするような人がたくさんいるのは御存知ですか?そういう人はセルフネグレクトと言って、助けを求めることをあきらめて静かに死んでいくような人がたくさんいるのです。世の中がどんなに他者にたいして無関心か、肌身をもって感じているからあきらめてしまうのです。あなたは、一般人に医療の話ができるか、みたいなことを前におっしゃってたような気がしますが、医療が成り立ってるのだって病院にかからなければいけないような不安があったりする一般人がいるからだと思います。その人たちの話を、価値のない話みたいに言ってしまうことで、絶望する人だっていると思います。医療をおもちゃにしないでほしです。楽しいのもいいですが、真面目にしてほしいと思うのはそういう意味です。
まぁ、私の言うことなんて真面目にとらえなくてもいいと思いますけど。所詮素人の言うつまらないことでしょうから。
皆さんは理解している方も多いようですが私には全く分からないです。結果が出て「俺はPCRで陰性だったぜ!」で、いつまでそれを言い続けられるんでしょうか?結果が出た瞬間から無菌室に入り自己自粛するのかな。健康に暮らしていて感染しているかどうかがそんなに不安でしょうか?咳が出たり発熱、味覚がおかしい等不安でもあれば安心の対処、もし感染していたらという責任も含めて検査も有用でしょう。しかしただ不安だから、回りの人に自分は大丈夫と言いたいから、それだけで検査をして陽性者を増やし医療リソースを無駄に消費するのはどうでしょうか。それが不安解消にはいいんですかね。陽性者は増えてます。しかし重症者はゼロ近くまで減っていっていて、最近の死者数はない。無症状陽性者が大部分を占めるようになった現在に何の必要性があるのでしょう。それが「俺はPCRで陰性だったぜ!」という、自分や家族を安心させるためですか。その検査の効力はいつまで続くのでしょうか。私には全く理解できません。
明らかに体調不良の方も今だに検査拒否をされている現実がありますが、
そのようなケースについてはなんとお考えでしょうか。
「感染してない(または感染させない)安心」よりも、「感染したかもしれないので対症療法でもよいから治療したい、他人にうつさないためにはっきりと認定してほしい」というニーズがほとんどだと思います。無症状の方をとっ捕まえて片っ端から検査したい(してほしい)など誰も思っていないのではないでしょうか。
 また、感染者を検査・観察しないと言うことは、新しいウィルスに対して理解も研究も進まないことと同じことの様な気がするのですが、一向に未知のウィルスのままなのではないでしょうか。対峙してくださっているお医者様にお任せなんですかね。
 素人風情が!と非難されるかもしれませんが、健康と命についてはバリバリの該当者なので専門家も一般人も無いと思います。
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