ホメオスタシスの鍵
にしのし
13星座の話おもしろいなー。「ブームになったのに定着しなかった」のメカニズムって考えるのおもしろいですね。
人はすぐ「なぜアレが人気になったのか」を語ります。鬼滅の刃がなぜこんなに流行ったのか、みたいな。逆に、「なぜアレは失敗したのか」を語る人も結構いると思う。「どうして○○はキングオブコントで勝ったのにあんなに仕事が少ないのか」とか。
でも、「一時的に流行ったけどその後忘れられていったもの」については、みんながけっこう雑に「栄枯盛衰」とか「流行り廃り」みたいな言葉で片付けちゃうんですよね。耳目を集めるほど力があったのに、取って代わるまでには到らなかった、みたいな話って、文明の進化論を考える上でもけっこうおもしろいと思うんだけどな。
文明の進化論?
いや、文明の熱力学第二法則ですかね……。
というかもう、ほとんどのものは、長いスパンで見てみれば、「定着」なんてしないよね。「一時的に流行ったけどその後忘れられていったもの」なんて、普遍的すぎる話題で、ここからさらに深掘りできるものでもないのかな。
現代人の目から見て「この文化は残ったなあ」とか言ってるのも、縄文人がみたらびっくりするかもしれない。「何も残ってないだろ!」みたいな。「12星座? そんな新しい話はどうでもいいんだよ!」みたいな。
「お前ら、俺たちが必死で後世に伝えた土偶に、適当なこと言いやがって……何が祭事だ、何がまじないの道具だよ。どう見てもあれセクシー水着だろ。一世風靡したDJ DOGUUのファッションに誰もがあこがれて、ドグラーと呼ばれる人々が渋谷(渓谷)を練り歩いたことをそう簡単に忘れるな」
ごめんね……ぼくらは君たちのことを忘れちゃったよ……。
***
「名前をつける」というのは、「できればいつまでもそこにいてほしい」と呪/祝をかける行為だ。
一時的にこの世の中で恒常性を発揮している、でもいずれは溶けてなくなってしまう生命に、「少しでも長くみんなの記憶に残りますように」と。
……生命に限らないか。
文化様式であったり、芸術であったり。
行動であったり、思念であったり。
油断しているとすぐに忘れてしまうから、いろいろ名前を付ける。
旅をして飯を食い、縁起物を探して自分を振り返る行為に「お遍路」と名付けた人はすごい。
ぼくは、「旅をして飯を食い、縁起物を探して自分を振り返りながら、各所で写真を撮ったこと」を、もうほとんど覚えていないのだけれど、「お遍路を(五分の二くらいまで)車で巡った」ということだけは、名付けによって、覚えている。
名前がなければ忘れていた。
そういえば、どうして「さばくのひがさ」という名前を?
……いや、これをやると最終回になってしまうから、やめましょう。
そういえばぼくは近日中、もうひとつマガジンをはじめます。そのタイトルはたぶんぼくが付ける。どういう名前にするか、ずっと考えている。もしかしたら、この記事が公開されるころには、新マガジンははじまっているかもしれない。はじまっていたら、ニヤニヤ眺めてみてください。
(2020.11.12 市原→西野)