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山際の向こう、2秒の先に(3) できるだけバズらないように

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時刻は11時。#やさしい医療 の本編がいよいよはじまろうとしている。

登壇者は、Twitterでおなじみ、株式会社タニタ公式アカウントさん、シャープ株式会社公式アカウントさん(依頼順)。

司会を引きつづき、浅生鴨さんにお願いして……。

SNS医療のカタチから、小児アレゥイ科医・ほむほむが参戦する。


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本編のセッションにおける登壇者は、いずれも、医者の人数が多くなりすぎないようになっている。

このセッションも、堀向(医者)ひとりを、シャータニ鴨の3人が取り囲む。



ぼくは今回のイベントにおいて、「絵面として医者が多い画面はきつい」、と思っていた。

だから、ぶっちゃけた話、オンライン中心となった構成、モニタの向こうに医者3人がいる状況を、ぼくは悪くないと感じていた。

もともと医者は前に出すぎだ、自分たちだけでしゃべりすぎなのである(個人の感想です)。これくらいがちょうどいい。これくらいのほうが、いろいろ見えていい。



ただし、スタジオの医者役をひとりまかされた、堀向のストレスはやばかったとは思う。

・・・ごめんね!



***


「医者の人数」に関して、もうすこし。

この日、YouTubeのコメント欄やTwitterなどに散見された意見として、「医者をもっと映して欲しい」というのがあった。ハッシュタグを付けて投稿されていたり、コメント欄に連投されていたりしたのが、幾度となく目に留まった。

SNS医療のカタチのこれまでの活動を追いかけて、「医者側のファン」として視聴していた人々にとっては、医者を見ることが何より大切だったのかもしれない。

そのものずばり、「医者の医学的な話を見に来た、素人の話はいらない」と公言している人すらいた。強い言葉は、少なくても、記憶に残る。

そこまで強い言葉でなくとも、

「SNS医療のカタチをずっと応援してきた。今日はクジラTシャツ(イベント物販。おかざき真里先生作画)を着て視聴している」という人は多くいた。


クジラ修正版


そもそも本イベントの運営費は、グッズ販売(物販)の収益とスポンサーによって成り立っている。

これらはいずれも「ファンの力」だ。

ぼくらは、自分たちの活動に賛同して支えて下さった方のために、がんばるべきである。それは礼儀としても信念としても、当然のことであろう。



そういえば、医療情報の中には、「ファン向けの情報」というのがけっこう存在する。

こうやって書くとわかりづらいから例をあげよう。


自分自身がアトピー性皮膚炎に悩んでおらず、家族や周囲の人も誰もアトピー性皮膚炎ではない場合、その人はアトピー性皮膚炎の情報を集めようと思うだろうか?


そういうことはまれだと思う。

もちろん、アトピー性皮膚炎のファンだ、という人はいない。

しかし、「(自分がアトピー性皮膚炎に苦しんでいるので、)アトピー性皮膚炎に関する情報を多く発信している医者・堀向健太のファンだ」という人は数多くいる。

ファンという言い方がしっくりこなければ、こう言い換えてもいい。

「追いかける人(フォロワー)」。



本セッションの冒頭付近で、堀向は述べた。

ほむ「医療情報は専門性が強く、医者が個人で発信するときには『すごく狭いところの話』をすることが多いです。だからぼくは、特定の情報を必要とする限られた方々だけに届けばいい、と思って発信しています。」

医療情報は膨大だ。しかし、そのすべてを、国民全員が知る必要はない。

だから堀向は、「自分の情報を必要とする人に向けて、自分を追いかける(フォローする)人に向けて、情報を置いている」。


さらに堀向は語る。

堀向「専門的な医療情報って、ある人にとってはメリットになるけれども、ある人にとってはデメリットになる、もしくは心がつらい状況になるということがあります。情報を発信するときに、そういったかたちにならないように気をつけて書くようになりました。」


「やさしい医療情報」というのは受け取り手によって異なるということ。

だから、「自分がやさしくあれる場所に向けて、狭く、深く、大事に情報を置いておく」ということ。

「その情報をやさしく使える人だけに気づいてほしい」ということ。


ほむ「そして、ふだんはできるだけ、”バズらないように” しています。届く人に届けばいいくらいの気持ち。」

ほむ「リツイートが1000を超えると、あっ、伸びすぎた、と思うくらいです。」


だから、バズりたくない、ということ。




堀向はここで、意図してか、無意識にか、

ズレを作るのだ。

それは自然な流れ、流暢なセリフの一部。

しかし、ぼくはおもわずぎょっとして、キータッチの手をとめて、画面の向こうの堀向を凝視した。


堀向「たぶん、企業さんがSNSなどで宣伝・広報をされるのは、(ぼくのやり方とは違って)たくさんの人たちに知ってほしいという部分があると思うんです。」


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彼は、「たくさんの」のところで、ガッ、と手を広げ、

ぼくはとても狭いところを、と、その手をすっと閉じた。



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ぼくの目は光った。

たぶん。



【マスクと体重計と医療の、やさしい入り口はどこですか(57分34秒~)】

(続く)



(2020.8.27 第3話)


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