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イドの端のConversation:序(ジョ)PART2: 出会いと「さらば」をめぐる思考

前回に引き続き、フォロワーであるジョンドウ氏(@JDo_man)との放課後の教室的対談を掲載する。主に、エヴァ関連の話題を中心に抜粋した。今回は、彼と私のエヴァ、そして庵野秀明という作家についての出会い、そして『シン・エヴァ』がどういう「さらば」になるのか、について語っている。少々長い文章になっているのが恐縮であるが、軽い気持ちで読んでいただければ幸いである。どんなスタンスであれ、このようなスタンスのファンもいるのだ、という、彼の考えの一つの足跡として記憶していただければ幸いだ。




──エヴァンゲリオンの発見

シクリム(以下、S): 自分の話になっちゃうんすけど、自分は元々漫画版から入って。当時は漫画少年だったので。
ジョンドウ(以下、J): それはいつ頃?中2ぐらい?
S: いや、小5(の終わり)頃ですね。その時、古本屋の100円の漫画で何か新しいのを探すっていうのにハマってて。それで、有名だし読んでみるか、と。
J: そうなのか。他に読んでたのとか、直接的にハマったきっかけは?
S: 『鋼の錬金術師』にはエヴァ以前にハマってました。こう、アニメで言うと「嘘と沈黙」のパートにあたる、リリスが本部の地下にいることがわかるとこで、「なんだこれは!?」て。あと、やっぱ「血が出るロボット」ってなんか背徳的でいいなっていうファーストインプレッションはあったな、と、こないだのリバイバルで思い出しました。『:序』が2009年に金曜ロードショーでやってた時、チラっと見たところが血の雨に降られながら歩いている初号機のカットで。エヴァも、使徒もカッチリした見た目なのに血は出るわ臓器はあるわ……ていう。
J: 後ろめたいというか、いけないもの見てる感じか。
S: ただ決定的だったのはトウジがバルディエルに汚染されるところですね。6巻かな。エントリープラグを握り潰して、トウジがどうなったのか直接的にわからない引きだったんですよ。続きの巻が手元になかったので、パソコンで調べて、漫画版では死亡って書かれているのを知って衝撃で、またゾクゾクしたっていう…。で、アニメだとその顛末が違うって言うのも。
J: 本当は殺すつもりだったらしいけどね。大人の事情で。
S: その結末というか展開がちょっと違うのもそそられた気はします(龍騎世代なので)。
J: で、テレビシリーズをその後に見たのか。
S: いや、その時出てる漫画を一通り読んで、親に『:序』と『:破』を借りてもらって観ました。そのあと一応テレビシリーズの展開はなぞれてると言うことで『EOE』を観て。
J: え、小5ってことは2009年ごろから『:Q』の2012年でしょ。持ったの?
S: まぁ、当時は展開ありましたしまだ持ったと思いますよ。というか、現にそれ以上の8年持ってるやないかい、と(笑)
J: そりゃそうだけど(笑)。『:破』はリアタイでは観てないのか。
S: そうですね。もう少しハマるの早かったら映画館で観れたかもしれないんだよなぁ。



J: 自分は2012年、中3の夏休みに、何かアニメ観てみるか、ということで、当時の違●動●●●●(本人の了解を得て掲載しています)で観たんすよ。もう、わかんなかった。訳わかんないの嫌いですから、インターネットでどういう意味なのか調べてさ。その数ヶ月後に新しい映画やるらしいってんで、『:Q』を映画館で。
S: 直接ハマったきっかけとかは。
J: 「最後のシ者」
S: やっぱりやられますよね(笑)。
J: もう、あれはスゴイよ。このアニメを観てる自分もスゴイと思わされるアニメだよエヴァって。何!?カヲルを一文字ズラすとオワリになるって。一文字ズラす理由ってなんだよってな(笑)。
S: やりがち(笑)。シ者が、使者、死者、くっつけたら渚になるってのも(笑)。
J: でも逆に言うと当時はその後と比べるとそんなになんすよ。やっぱ、あそこまで行ったのは2014年の「庵野秀明の世界」*1からですね。


──庵野秀明の世界へ

J: Twitter始めたのもそれが理由だから。1週間前ぐらいかな。
S: あ、そんなにちょうどなタイミングだったんですね。もう少し前ぐらいから見かけした記憶があったんですが。
J: そのぐらいだった気がします。情報集める為に始めて、繋がるべきヒトに繋がる。やっぱ乗り遅れるの嫌いなので…。映画も「庵野秀明の世界」から見始めたからなぁ。これは何か観ないといけないな、と。新文芸坐に通って。
S: 何観られたんですか?
J: 『シャイニング』とか『ゴッドファーザー』とか。ちょうど黒澤明の選んだ映画〜みたいな企画をやってて。シクリム氏はなんで映画を?
S: やっぱエヴァと……あとメタルギアですね。『ピースウォーカー』の小ネタで『2001年宇宙の旅』を観てみました。
J: ママルポッド*2とかモロにHALだよな。


(メタルギア、『デス・ストランディング』などの小島秀夫作品の話を50分ぐらいする)


J: メタルギアの方が好きかな。こんな安直な言い方になるけど、やっぱちょっとエヴァみがあるので(笑)。
S: 『デススト』もエヴァっぽいと思いましたけど、そうですか。絶対あそこ好きですよね?『ピースウォーカー』の、あのクライマックスの……。
J: コールドマンが核発射ボタン押して。
S: 大統領室に電話するやつ(笑)。


S: 「庵野秀明の世界」からの新文芸坐の企画に行ったりってめちゃくちゃ理想的な流れじゃないですか?
J: いや、本当にそう。やっぱり「庵野秀明の世界」がデカい。元々名前は意識してなかったし。名前はもちろん知ってはいたけど、全く作家としての名前は意識してなかった。
S: へえ。
J: でも、「庵野秀明の世界」行って、庵野秀明どころか、映画も『ゴッドファーザー』とかでそうだし、本とか、絵も見るようになった。
S: もう完全に「庵野秀明の世界」で人生変わったのか。
J: そうそうそう。だから(『シン・エヴァ』の)最初は日本橋で観たいんだよね。

J: (庵野秀明)本物が入り口から出てくるって言う。関係者入り口とかからじゃなくて、普通に通路の、俺たちの横側を通って舞台に。完全に俺たちのイエス・キリストだよね。俺たちと同じ目線に立って、俺たちと同じ飯を食ってくれるような。
S: (笑)
J: マジ普通に出てきたからさ。何も言えねえみたいな(笑)。
S: いやぁ、行きたかったなぁ。
J: (行けなかったの)キツイな。その時俺が高2だったから、高1か。
S: そうですね。「秀明の世界」。
J: (笑)。すげえ名前だよな。「秀明のセカイ」(笑)。
S: ちょっとツレみたいな呼び方しちゃいましたけど。
J: 俺たちの神様がそこに。いや、「なんで秀明の世界行ってないのにエヴァオタやってんだよ」ってなってた。完全に面倒臭いオタクなんだよな。それに疲れちゃった、のかも!
S: 燃え尽き症候群みたいな。
J: いや俺めっちゃ燃え尽きるからさ。『:Q』(をはじめて観た時)も燃え尽きたんだよ。本編でもう燃え尽きたんだけど、『シン』の予告流れて、「まだやるんですか」って(笑)。
S: そうして、やっぱり転機は「庵野秀明の世界」だったと。
J: 14、15、16、17、18、19、20…て。いや、もう、ここまで付き合ったら、完結させないとね。ちゃんと観にいかなきゃ。
S: さっきまで「俺たちの人生がシンエヴァなんですよ、観にいかなくても」みたいな事言ってたのに!(笑)
J: (笑)。観ないとですよ。変わっちゃうんで、言ってることが。2、3日で。めっちゃブレブレな人間なんでね。これ絶対入れて欲しい(笑)。
S: 人間らしくていいです(笑)。
J: 今の俺の感情として残しておいてくれ。とにかく、観なくちゃいけん。喋ってきて砕けてくることもあるじゃん。やっぱ。観ないといけんよ。
S: 観ないといけん。劇場で!
J: …うーん、まぁ……劇場で観ないといけないよね。早く終わらせたい!


J: エヴァ終わったらどうすんの。みんな。生きるの?
S: うーん、まぁ…シン・エヴァについて考えるのはやめます(今となっては確証がない。)。
J: 空いた思考をどう埋めるの?
S: うーん、ハムスター全振りで!


(将来の話をすげーする)


J: 今日全然ダメだわ(笑)。盛り上がる?これ?お蔵入りじゃね?なんの話すれば盛り上がる?
S: またメタルギアの話でエンジンつけてもらわな。まぁ、エヴァ回ということでエヴァの話を。
J: あったじゃん、庵野さんの対談読んだら、うわ、エヴァ作ってる人の話めちゃおもろ、過激、みたいなさ、ある、これ(この会話)、今?
S: (笑)。あ、今また資料めっちゃ買い漁ってますよ。
J: 資料買うよなぁ。
S: 『スキゾ・パラノ』とかさ、読んだのも「庵野秀明の世界」後ですか?
J: 「世界」すぐだったかなぁ。庵野秀明公式ウェブ*3見てさー、買い漁るように。
S: そこですね。やっぱり。公式が情報最大手というのは良い。
J: 流石ですよ。
S: やはり庵野さんを作家意識するようになったのは「庵野秀明の世界」と。
J: です。そこまではエヴァオタでした。
S: そこから庵野オタに。……〝オタ〟でいいんですか。
J: 庵野オタです。いや、庵野キモオタですよ。
S: (笑)。


──庵野秀明の世界とわたし


S: 自分はエヴァ観て『トップ』観て『ナディア』観て…て感じでした。
J: 優秀じゃん。やっぱそういう(掘り下げる)ところあるのか。
S: 元々そういう気質だったのかもしれない。小島秀夫のラジオも聴いてたし。
J: 結局、ワイらぐらいになるとそっち行きすぎちゃうっていうのがあるのか。

S: 『:Q』と『ナディア』が同時期でしたけど、そこまで原理主義者じゃなかったですよ。
J: そこまで観てたら原理主義者でしょ。
S: 原理主義者ですか?(笑)いや、作家として本格的に意識したのは『彼氏彼女の事情』ですね。エヴァの後半みたいな演出ばっかりやん!って。
J: 『カレカノ』みたいなのもやるもんなぁ。もう……(ため息)。『エヴァ』の次に『カレカノ』ですよ。俺と庵野さんの関係がわからなくなってきちゃった。

J: 『シン・ウルトラマン』までやるもんな。監督じゃないとはいえ。なんでやらなかったんだろうね。
S: なんでですかね。やっぱある程度距離をあけたいというか、しんどいからでは。
J: しんどいよなぁ……。自分でやりたかったのかなぁ。
S: 監督じゃないとはいえ、『シン・エヴァ』の後の庵野作品がすぐ夏に来るの、正直どんな顔して観ればいいのかわからん(笑)。


──「さらば」の仕方

J: ライフワークの完結だけど、どうするの?
S: 目下、新劇場版はゲンドウすよね。どうするんだろう。和解?
J: 握り潰すんじゃないの。
S: 「父に、ありがとう」としても和解する余地が無さすぎる(笑)。人類大虐殺して、友達目の前で爆破したし、旧劇より無い。
J: どうすんの?知らない天井?夢オチ?
S: それは無い、無い(笑)と思うけど…。
J: 宮崎作品かもね。■■■■■■■■では。
S: ■■■■■■■■とか。
J: んー。8年、庵野をディープラーニングした、貴方のなかの秀明はどうやって終わらせるんですか?
S: !? うーん……。早く終わらせたい(笑)。終わらせて救われたい
J: だよな。観たら救われる
S: エヴァで救われる。なんか怪しい雰囲気に……。■■■■■■が■■■では。
J: でもそれは、■■■■■だね。それだったらなんか、疲れたんだなぁってなっちゃうよね。
S: うん。じゃあ(貴方の)本心では、どう終わると思ってる?
J: それは観ないとわかんない
S: おい(笑)
J: (笑)。それは今考えても観ないと意味ないしな〜。
S: 今までの時間は何やってん(笑)。



──禁断の、ラストシーン考察


J: エヴァが………終わるんすよ。エヴァ消える。その中でシンジはエヴァがあった記憶を持ってる。エヴァが無い世界でもシンジはもがくんすよ(半笑いで)。
S: ……要点は!?
J: エヴァは無くても、辛いこと、悩みは変わらないっていう。学園エヴァ的な。
S: あぁ、エヴァが解決しました、チャンチャンではないってことね。現実世界でも辛いことがあると。
J: そうそう。
S: 振られたりとか。
J: 学園生活の中で。委員長とか………やりたくないことをやらされる。運動会の応援団とか
S: 応援団!?
J: 悩みはある訳ですよ。エヴァが無くなっても。ジャンケンで負けて……こんなのやりたくないよォ!つって。エヴァが応援団に変わっただけで。

(両名、爆笑)


J: 応援団で、太鼓を叩くんすよ(笑)。ウェーブとかしたり。エヴァが無くなっても、根本的な解決にはならない。なんでこんなことやらなきゃいけないんだよぉ!つってるのに、碇シンジくん、あなたがやるのよって、バックで劇伴に合わせて応援団の太鼓が、デデン、ドンドン(太鼓)、デデン、ドンドン(太鼓)(EM02#070720のリズムに合わせて)。
S: みんなに見られて(笑)。躊躇ってたら(運びこまれたレイみたいに)女子が代わってくれようとしたら、逃げちゃダメだ、やります!僕が乗ります!(笑)
J: 虚構の象徴であるエヴァとさらばしても、現実の辛さはエヴァだけではないことがわかる絶対向いてない応援団長という役職をやらされる辛さが。
S: そう言われるとある気がしてきt……絶対無いよ!応援団長はともかくとして。でも、切実に耳に染みる。小学生の頃、応援団やることになって泣いたので(笑)。そうなったらオールタイムベストですよ。俺がシンジだったのか!って。

J: もうこれで決まりですよ。いやこんな終わり方だったら庵野ファンやめるわ(笑)。応援団ってなんやねん(笑)。

S: まぁ、これもすべてのエヴァンゲリオンのなかの全てのひとつということで、なにとぞ。


S: て言う感じで。
J: ディープラーニング出来たでしょうし、俺を演じて書いてくれ。今まで読んできたこれは、実は私が作り上げた彼との脳内対談ですって。確実にあなたより喋っているので、間違いなく近いですと。
S: 考えます。お疲れ様でした、ありがとうございました。
J: お疲れ様でした。




おことわり、と、あとがき

 彼(ジョンドウ氏)は私が知りうる限りで最もユニークな視点を持つエヴァファン、もとい庵野ファンのひとりだ。今回、その理由がなんとなくわかっていただけたかと思う。こないだの3/4のチケット争奪戦の際、私は彼に「あんだけ嫌って言ってたチケット争奪戦参加するんすか?」と聞いたら、「エヴァ関連今までほぼ狙ってたけど、シンエヴァだけスルーするのなんか文脈だし、かっけーからスルーキメる!」と言っていた。どうやらガチらしい。しかし、彼のエヴァ、そして庵野秀明に対するスタンスは本物であり、ひとつの有り様だと思っている。

ヒトそれぞれの『シン・エヴァ』がある。ヒトそれぞれの人生がある。そうした事を、改めて感じ取っていただければ幸いです。そして、改めて長時間の通話を苦にせず乗っていただいたジョンドウ氏に感謝申し上げます。ありがとうございました。


最後に、


この対話
及びnote
及び脚注は、
事実を元に構成されていますが、
諸般の事情により、22%程
捏造して有ります。

改めて、御了承下さい。





【脚注】

*1
 2014年の東京国際映画祭にて開催された「庵野秀明の世界」という庵野ファンにとって伝説的な企画のこと。『新世紀エヴァンゲリオン劇場版』『式日』などの劇場公開作、『ふしぎの海のナディア』『トップをねらえ!』などのテレビシリーズ、OVA、『流星課長』といった短編はもちろんのこと、ジブリ美術館でしか鑑賞出来なかった未ソフト化作品『空想の機械達の中の破壊の発明』、高校時代の『ナカムライダー』、アマチュア時代の短編、アニメーター参加作品の担当パートの抜粋集など、プロアマ時代問わずの作品が鑑賞できた一大レトロスペクティブであった。
 庵野秀明編集・鷺巣詩郎作曲のトレーラーはこちら。


チラシのpdfは現在も公式サイトからDL出来る。表紙の電柱の写真は庵野秀明撮影。


*2

 PSPソフト『メタルギアソリッド ピースウォーカー』に登場するボスステージのAI兵器達の筒状のコアのようなもの。HPを一定まで削り取ると、内部に入って、記憶板を抜き取るフローに移行する。これは、『2001年宇宙の旅』のHAL9000の電源をオフにするシーンのオマージュである。なお、厳密に言えばママルポッドはAI兵器の中でも、主人公のネイキッド・スネークの亡き師匠であるザ・ボスの人格が移植されたものであり、ピースウォーカーの脳となる部分のことを指す。

*3
 言わずと知れた庵野秀明公式ウェブ。株式会社カラー公式サイトからアクセスできる。庵野秀明個人履歴から、詳細な仕事履歴まで網羅されている。公式がすごい。なお、GAINAX時代ではまた別の構成になっていて、過去携わったデザインやイラストが閲覧できたり、極め付けはなんと彼のブログがあった(エヴァの登場人物の名前の由来から結婚式のスナップまで載ってる。載せるんだ!?)。GAINAX公式サイトをインターネットアーカイブから開けば閲覧できるので、興味があれば是非。

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