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見れ!まぶやかな咆哮

 どうも。あけましておめでとうございます。noteで記事を書くのもかれこれ数ヶ月ぶり、昨年散々我々を苦しめた猛暑もいつの間に過ぎ去り、すっかりコールスローの美味しい季節となりました。なにぶん久しぶりでお忘れの方も多いと思われるため改めてご紹介させて頂くと本年度の所得税および地域消費税の納付期限は令和6年4月2日までで、それを過ぎると延滞税が発生するため必ず期限内の納付を厳守すること。

 小手調べはこれくらいにして、これから俺がやることをあんまり真正面から直視しないでほしい。俺にとってかなり恥ずかしく、胸がドキドキ高鳴ってしまうようなことを試みるから。てなことを言うと勘違いしがちな翁等(おきなら)もいると思うので先に釘を刺しておくが、それは決してセックス(マンガにおける設計図のようなもの)のことではない。何をするかと言えば、その、2023年の仕事の振り返りというやつをやってみようかと。全国(東海地方を除く)のシャバ僧たちには先に謝っておくが、こういった、自身の活動内容をわざわざひけらかすような行為はドのつくシャバ僧、シャバゾードのやることでありカッコ悪いんじゃないかという偏見が俺にはあった。どうも分かりやすく調子に乗っているみたいで、それを看破されるのが気恥ずかしい。自意識過剰と言われても仕方ないが、俺のことを少なからず好ましく思っている人たちははしゃがない俺にこそ価値を見出しているわけで、それを自らの手でフイにしてしまうことが怖かったのだ。でもいい加減、俺も大人になった。一人でトイレにもいけるし、急に同僚から自家用車の燃費の話を振られても「あっ、アヒアヘアフウフエヘ、オッ、オッオッオッ、へへへへへ……、NISSAN……?」と巧妙にごまかすことさえお手の物だ(もはや俺の庭と言っても過言ではない)。同じく自分の仕事を振り返ることも、カッコ悪いことではなく当たり前にやっていいことだと気づいたのだ。とはいえ経験がない以上及び腰になるのも事実。嗚呼、勇気が欲しい。一歩踏み出す勇気が。前面にデカデカと「M」の文字が書かれたトマトを躊躇なくかぶりつけるような勇気が。フ―――――――――。いくぞ!


 4~5年ぶりに書いた特集記事だ。この直前に出した特集がムイズだと思われていることが偶にあるが、実はその間にも「書」という記事を出している。「書」でGoogle検索したらそのうちヒットすると思うので、もし出張先のホテルなどで気が狂ったら探してほしい。それはともかくムイズについてだが、今でもこの記事がそれなりの評価を頂いていることは確かに嬉しいが、いつまでも夢顎んく=ムイズだという印象しか抱かれないのも、それはそれで不服な気持ちがあった。ムイズばかりが俺のアイデンティティを証明するものではない、動画や個人サイトの記事だって出してるし足のサイズも28.5あるんだからそういった面にも着目してくれよ、つま先が階段からはみ出るから手すりがないと怖くて上り下りできないんだよ、と。果たしてその感情を汲み取ってくれたのかは分からないが、同じライターでオモコロの運営会社バーグハンバーグバーグの社員でもあるみくのしん氏より、是非また特集を書いてくれと声をかけていただき、此方も俄然やる気が沸いたので寝食を惜しんで一気呵成に3か月かけて書き上げたのがこの記事である。俺は面白いものを書いたつもりだし、事実、今回のために読み返してみたらしっかり面白かった。いや、「面白かった」なんて凡庸な表現に収まらないな。正直、爆笑だわ。しっとりさんとつるつるちゃんの爆笑ソフレだわ。え?本当に面白いのか?今ので少し自信なくなってきた。とはいえ、それ以上言うことがない。面白いポイントを自分で紹介するのも不粋だし、制作時の苦労なんかを語ってみたところでそれが面白さに寄与することもないし。どうする? ……俺と一緒に来るか?他の記事においても同じことが言えるが、強いて言うなら答え合わせをやりたい気持ちがある。読者たちに俺から答えを提示すればもっと楽しんでもらえるのではないかという淡い期待が。でも、それをやったら流石に全部終わるのでここは耐えるしかない。いつかわかってくれることを期待して夢顎の挑戦は続く。チンポ(飛影が欲しがってました)。

※よく考えたらみんな知ってるテイでいきなり「ムイズ」とか言われても「はぁ?知らねえよそんなの自惚れんなバカ」「カス」「口呼吸」となる人が大半だと思うので改めて説明する。ムイズというのは2019年に俺が発表したオモコロの特集記事で、正しくは「めっちゃムズいクイズ!ムイズ」というタイトルだ。スーパーや薬局で誰もが一度は目にしたことがあるであろう「めっちゃ熱いカイロ!マグマ」のパロディで全編が構成されている。


 前回の記事から数か月後に発表したのがこちらだ。この記事についてもチェズと概ね同じ感想だが、しいて言うならちょっとやりすぎてしまった。1本のストーリーで書くとどうしても途中で飽きてしまうので、短い記事を寄せ集めたオムニバス形式で制作したのだが、薄い内容では読者が離れてしまうのではないかという不安に常に苛まれついついボケを詰め込みすぎ、書いてる俺でさえそのマネジメントに苦慮する結果となった。書いても書いてもゴールに近づかないのでムッツリしちゃう。9ページというページ数は決してボケではなく、大きすぎる頭を持つものとしてどうしても避けられない宿命だった。だから特集って苦手なんだ、特集に見合うだけのボリュームをいつも見誤る。でも一度極北まで行ってしまわないとセーブすることも覚えないので、これはこれで貴重な経験であった。ムフ……♥。もうここまでやってしまえば、俺がこの先特集を書くことなんてないのかもしれない。ムイズ、チェズ、そしてこのホガスパー先生でムイズ三部作も無事完結したことだし、しばらくはセーブして自分のやりたいことだけを細々とやっていこうとこの時本気で考えた。俺は不義理で不誠実で親不知な人間なので、幾度となく周囲の人々に迷惑をかけてはヒイヒイ泣かせてきた。だからこのようなチャンスをまた頂ける確信が全く持てず、毎回毎回、もうこれが最後になるという思いを抱きながら、あれもこれもとネタを詰め込んでは見る人を胃もたれさせてきた。それに加えて早くアガリを迎えて隠居したいという願望を抱えて生きているので、動画や記事を制作している最中は毎度のように、これを作り終えたらこんなことはもう卒業かもな……と覚悟している。こんなことを、AKIRAのハリウッド実写化企画くらい何度も何度も繰り返している割に、全く成長していない。いまだにオモコロだけにみっともなくしがみついている。なにが卒業だ。ルーキーズか。


 こちらは俺の書いた記事ではなくライターの寺悠迅さんによるものだが、みくのしん氏からのご厚意(←オパーイみたいに言うな)によりお誘いいただき参加の運びとなった。以前AAにまつわる特集記事を書いたのと、かねてよりブーン系作者であることを公言していたことが功を奏したようだ。さて参加者たちは全員、興奮と狂熱に沸くインターネットアリーナに集いしインターネット戦士たち、その誰しもが三度の飯よりインターネットが大好きなインターネットバカ、かがり縫いのためのリソースを犠牲にしてネットスラングを覚えることに邁進してきた連中であるがゆえに、果たして俺の知識がどこまで通用するのか戦々恐々だったが、フタをパカッフワッと開けてみれば圧倒的大差をつけての優勝、まるで自分のことのように嬉しかったのを覚えている。最下位さえ避けられればいいと期待してたがまさか優勝とは、よくもまあやってくれたものだなあとしみじみ感慨に浸っていたが数日経つうちに考えも変わってきた。何を勘違いしてるんだ、俺は。当たり前だろ、優勝するのが。だって、俺はこれしかやってこなかったんだから。他の連中が恋に部活にオルグ活動にと青春を謳歌している間、俺は年120本のクソスレをVIPに立ててきたんだ。これで優勝できなかったら俺は、俺は、貴重な10代を棒に振ってクソスレ立ててきただけのクソバカ野郎じゃないか。優勝しても同じか。


 昨年の出来事で一番印象に残ったことを挙げるとすればやっぱりこれになるだろう。ライターの山下ラジ男(以下山ラジ)が音頭を取り開催されたイベントで、同じくライターのオケモト氏を主演に据えた短編映画を各出演者が制作し発表するという取り組みの一環だ。出演者は山ラジ、オケモト氏の他に司会として加藤氏、監督としてライターのマッハ・キショ松氏(マッハ・キショ松氏!?)、神田氏、そして俺も監督の一人として映画を制作し登壇した。最初にこの話を山ラジから頂いたときは二つ返事で了承したものの、締め切りもそんなに余裕があるわけではなく制作にはかなり難儀した。他のライターと違い俺だけ大分県とかいう田んぼと歯医者と無人餃子販売所以外何もなくあとは果てしない荒野が広がるだけの土地に住んでいるゆえ、撮影にはどうしても立ち会えない。きっちり台本を固めた上で、その通りに山ラジたちに撮ってもらうしかない。まあ撮影は山ラジたちの尽力により完璧な形で終わったのだが、問題は編集だ。macに標準でインストールされているiMovieという動画編集ソフトを用いたのだがこれが名前にiMoを冠してるだけあってめちゃくちゃ芋っぽいツールで、全く思った通りに編集できない。刻一刻と迫る締切に焦りが募り、最悪ココアを客席にぶちまけてそれを映画と言い張ろうかと覚悟した。どっちも湿っぽいから多分騙されてくれるだろう。いや、駄目だ。何のために山ラジは俺を誘ってくれたのか。人の期待には応えなければならない。なるべく。毎日のように時間を見つけてはコメダに入り浸って編集作業を行い結局本番の一週間前になんとか動画が完成した。


 本番当日。その日の飛行機で東京に降り立ち、15時頃にイベント会場のある渋谷に到着したが、出演者の会場入りは16時半からでまだ1時間以上空きがあったので東急ハンズに寄り、おもちゃ売り場の試供品のルービックキューブを揃えては崩し、崩しては揃えることをひたすら繰り返した。暇つぶしという目的もあったが、それ以上に今の俺の姿を偶然イベントの来場者が見かけて「あっ!夢顎んくだ!夢顎んくがルービックキューブを揃えているぞ!」「しかもたった5分程度で6面揃えてる……!インテリすぐる……!」「普段あんなバカそのものな記事書いてるけど、それも確固たる地頭の良さに裏打ちされたものなんだな、納得 (ポンッ ←納得膜が破れる音)」とあわよくば尊敬の眼差しで見てくれることを期待したからである。けれど現実は残酷であり後でSNS等を調べてもそのような投稿は一切見かけなかったので、ただ田舎者のオッサンの手遊びを渋谷の地に刻むだけの結果と相成った。滝廉太郎に続いて二人目の快挙だ。

 そのうち16時を回ったのでぼちぼち会場へと向かう。Googleマップに従い、腰振り道玄坂の表通りを横に折れ曲がり路地に入るも、どこを歩いても同じような景色ばかりでしばらくウロウロとあてどなく血迷った。都会特有の慌ただしい喧騒に翻弄され、ざるそばの出前自転車とぶつかっては叱られるイベントをおよそ35216153147回繰り返し(エルフが生涯にするまばたきと同じ数)、ようやく渋谷ロフトにたどり着く。まだ5分くらい時間があったのでロフトへと続く坂を一旦降りて、横断歩道の前でコーラ飲みつつ時間を潰すことにした。歩道の隅には地面に座り込みワンカップを煽っている前期〜後期高齢者らしきおじいさんがいて、あまりじろじろ眺める失礼かと思い目を逸らしたのだが、さすが年の功というべきか、向こうはそんな俺の姿を目ざとく見つけ声をかけてきた。「アンタ冷たい目をしてるな。まるで昔の俺を見ているようだ」要約するとおそらくそんなことを言っていた。フガフガした声のせいで大半聞き取れなかったが。(歯が奇数らしい)


 その後会場入りし、出演者全員が揃ったところで軽いリハーサルを行う。それまではただ椅子に座って観客と同じ立場で楽しめばいいと考えていたのだが、ここにきて初めて、映画の各製作者がPCを操作して動画を再生しなければならないと知り愕然とする。PC筋が貧弱だからうまく操作できる自信がないぞ。否応にも高まる緊張。それ以上に、どれくらいお客が来てくれるのかという問題もあった。別に俺は客が全く訪れず浅草キッドの2番みたいな様相を呈したところで構わなかった。なにもステージの上でみっともなく喉を掻きむしったり右尻と左尻を交互に上げ下げするためにわざわざ上京したのではない(結果的にそうなったが)。俺はただ、みんなとタバコを吸うためだけに来たのだ。美味しいタバコ、他愛もない会話、レインボーアートで描いた馬。その目的さえ達成されれば何の悔いもない。仮に客が2〜3人居たとて、そいつらのことはメンソールタバコの中で膝を抱えて潰されるのを待つカプセルと同じものとして扱ってやる!と、半ばヤケクソに息巻いてい、た、の、だがそれは19時ちょうどのことだった。「オケモト、抱いて、オケモト、抱いて」という天使のラッパにも似た荘厳なBGMに迎えられつついざ控え室からステージへ飛び出してみれば、もう客席のふもとから頂上まですんごいことになっていた。まるで森久美子の掲げるデッカイろ紙に吸い込まれる悪臭のごとく大量のお客様にご来場いただき俺は思わず目を剥いた。感情の申し子と呼ばれるだけあって動揺は隠せない。長机の手前に並ぶ4cm四方のパイプ椅子がとたんに頼りなく思え、腰かけて0.2秒で早くも右尻と左尻を交互に上げ下げすることになる。どこを見ていいか分からないので山ラジの方にちらっと目をやり、ほのかな想いを寄せてみた。あんた、すげえよ。俺ごときに言われなくてもとっくにご存じだろうが、これだけの客を彼が集めたのだ。もうタバコどころではなく、責任が開始される。全員を余さず楽しませるという責務が。なにもそれは俺一人でやる必要はないが、ゼロで良い訳もない。始まる前は緊張する山ラジに「飲み会感覚でいいよ」なんて呑気に声をかけて、実際俺もたいして気負ってはなかったのだが、実際はこれだ。記事にしろ動画にしろ、そして今回のようなイベントにおいてもそうだが、それを目当てにする人がいる以上、作り手側が十全に楽しむというのはできないものだ。各々注文したドリンクがテーブルに届き、これから乾杯というタイミングでけたたましい音が会場に響く。「あーっ!」というどよめきで顔を上げると、オケモトさんが床に盛大にドリンクをぶちまけていた。彼には悪いが、助かったと感じた。この時俺が発した「いいアイスブレイクになった」というガヤは本心だ。飲んだことないけど、ほぐし水ってこれのことだと思う。


 乾杯や出演者の紹介が済んだところで、いよいよ映画の発表が始まる。俺の作品は一番最後、いわゆるトリである。他の監督たちの作品を見てみると、なんというか、思った以上にみんなちゃんとしていて焦った。最初から最後まで一本芯が通っており、テーマに対するブレがない。トップバッターであるキショ松さんの「オケモンボール」は言わずもがなドラゴンボールのパロディであり、原作の人造人間編をオケモトさんのコラ画像だけで再現するという挑戦的な作品だったがセリフ回しなどにキショ松さんが培ってきた独特の持ち味がふんだんに生かされ、また要所要所でもびしっと盛り上がりどころが用意されていた。全体として緻密に計算された稚拙さというか、キショ松さんがやりたいことと実際に出来上がった動画が完璧に合致している印象を覚えた。続いて山ラジの「オケモトップガン」、これもトップガンのパロディであるが、山ラジの知識や技術、そして熱意があらんかぎり発揮された映画であった。トップガンだけあって途中にドッグファイトのシーンなどが差し込まれているのだが、戦闘機の模型などを用いて本格的な特撮として制作されており、モノづくりにこれほどの情熱を傾けられること、そしてそれがこうやって一本の作品として実を結んだことは幸福であり、憧憬なのか羨望なのか判断がつかない感情に心が揺さぶられた。おためごかしはなしにして正直な感想を述べれば、このイベントにおいて俺が最も嫉妬を感じた瞬間である。とても真似はできない。次に神田さんの「ドキュメント・オケモト」。こちらは、オケモトさんのインタビュー動画に、それを見るオケモトさんのワイプ映像が挿入され、さらに会場で流れるその動画をリアルタイムでオケモトさんが眺めているというマトリョーシカのような複雑な構造になっている。プロのカメラマンに撮ってもらったとのことで商業作品と比べても遜色のないクオリティの映像になのに、肝心のインタビュー内容は薄っぺらでこちらが知りたい核心には全く迫らず、かつそれに対しワイプのオケモトさんが発する感想も自分のことなのにまるで他人事という、大真面目に作ってあるのにどこか少しずつ意図的なズレが組み込まれていて、そのズレの絶妙さが、さすが神田さんというか、うまく言葉で伝えられない一筋縄ではいかない面白さだった。3作品とも、各監督の撮りたいものや伝えたい内容が観客側にも届く内容だったが、それに比べると俺の作品というのはどうしてもとっちらかっている。俺の作品も有名映画のパロディで、その名も「オケモはつらいよ」。男はつらいよのパロディであることは言うまでもなく、昔1本だけ見た原作の記憶を頼りにひたすらネタを詰め込んだ構成となっている。俺もそれなりに楽しんで作ったが、あまりにまとまりがないというか、お気に入りのガラクタが詰まったおもちゃ箱を逆さに振って中身をぶちまけたような作品なので、他作品と比較したときにどうしても構成に頼りなさを覚えてしまう。果たしてこの場で通用するのか?これまでオモコロのイベントに動画を提供したことはあっても生の反応を目の当たりにしたことがなく、後から「会場ではめっちゃウケてたよ」などとフォローされても信じることができなかった。今回は、俺が実際に動画を流し、その場でみんなの反応を伺うことになる。怖いのか?怖いよ。俺の番がきて、席を立ちあがった瞬間、無意識にため息が出た。それで実際、どうだったかといえば……。特にここでは書かない。なぜならば俺の話であるから。これまでも俺の話を散々書いてきたのだから、ここでバランスを取らないといけない。


 イベントは結果的に大成功で終わった。お祭りだから多少失敗してもいいよね、なんて慰め程度のなあなあな振り返りになることなく、隅から隅まで面白さの汁を浸透できたのは本当に快挙だ。やってよかった、出てよかったと心から思えた。イベント終了後の物販では畏れ多くもお客さんにお釣りを渡すという大役を努めさせていただき、誠心誠意ひとつひとつ思いを込めて手渡ししたが、果たして俺の渡すお釣りがお客様の求める基準に達していたのか今になっても自信が持てない。こういう時いつも大学を出とくべきだったと後悔に襲われるのである。またその際、生意気にもサインを求められることがあり(当然、他の出演者のついでではあるが)そこで改めて痛感したが「夢顎んく」って書きづらすぎるな。1クール目と2クール目で画数の差が激しいせいか何度も繰り返し書いていると脳が異常をきたし「夢顎くん」と誤記してしまうことが数度あった。気安く呼ぶな。一応お客さんにはごめんなさいのキスで許していただいたが、よほど舌を絡めるべきか迷った。

 物販も終わってロフトから撤収し、もう時間も遅いので打ち上げなどもすることなく山ラジとふたりで帰路についた。途中買った1本のコーヒー牛乳をふたりで分け合いながら、お互いの健闘を称えあった。コーヒーの右半分を飲み終えて彼の顔を見ると誇らしげで、そこに俺自身の表情を伺うことさえできた。俺たちはやったのだ。山ラジは俺なんかの百倍やった。加藤さんには司会として本番でめちゃくちゃ盛り上げていただいたが、それ以外は全くバーグの手を借りることなく。資本呼ばわりするのは若干申し訳ないが、資本に勝ったのだ俺たちは確かに。陳腐なことしかいえないが、本当にすごい。もう、これだけの偉業を成し遂げたのだから、他に出来ないことなんてないんじゃないか。御殿だって立つさ。それほどのことだ。見れ、まぶやかな咆哮を。


 あと他にイベントの思い出といえば、そういえば、開始直前ぎりぎりまで、帽子を被ったまま登壇するかどうか迷った記憶がある。控室で待っている間、お気に入りのキャスケットを被っては外し、外しては鏡の前に立ち、そしてまた被るの繰り返した。ナージャのEDか。というのも数年前とあるイベントに出演した時のこと、終演後にネットで来場者の感想を漁っていた際にひとりの愚か者カスが書き込んだ「夢顎めっちゃハゲてた」という一文を目にしたからである。ぶん殴るぞ(センスで)。俺が、自身のハゲに気づくこともなく目鼻立ちの整った甘いマスクで日々を過ごしているとでも思ったのか。そんな俺の油断を突くことで精神的優位に立とうとでも画策したか?バカめ。自分の体は自分が一番よくわかっとるわ。だいたい、直接目撃する以外に俺の頭頂部の状況を知る手段を持たないくせにまるで熾烈な情報戦を制したような顔するんじゃない。次そんなこと書き込んだらジャパンフリトレーに言うからな。そもそも厳密に言えば俺はハゲているわけではない。美容室で「ワイルドスピードの全登場人物の髪型にしてください」とリクエストしたら結果的にこうなっただけである。そのバックボーンを顧みることなく浅学非才な連中は無責任にハゲハゲと罵ってくるので我々が要らぬ苦労を背負うことになる。こんな輩が現実にもネットにも跳梁跋扈するから日本の芸術分野は衰退する一方だ、なにがクールジャパンだ浮かれるのもいい加減にしろ、クールなのは俺の頭だけで十分だ。

 とにかく素晴らしいイベントだったので一度は見てほしいが、もうアーカイブも残っていなければ動画も販売終了しているのが残念だ。どうしても観たいという方は全国の書店・スーパー・コンビニ・抜きありのお店でお買い求めください。


 以上が、2023年中の活動内容のすべてである。総括するなら、人の縁に支えられた一年であった。常に俺を気にかけて発破をかけてくれたみくのしんさん、記事に俺を迎えてくれた寺悠迅さん、イベントに誘ってくれた山ラジ、動画に出演頂いたオケモトさん、キショ松さん、たかやさん、彩雲さん。その他にも様々な人にご協力いただき、この方々がいなければ、きっと太ももの上でトイレットペーパーを畳んで尻になすりつけるだけの一年になっていたに違いない。ありがとうという感謝しかない。いや、感謝だけではだめだ。感謝は当然だ。こちらも仕事で返さなければ。振り返りも済んだ、飯も食った、茶も飲んだ、ここいらで2024年の抱負をぶちあげていこう。記事を頑張る、というのは言わずもがなだ、当然、本業が落ち着いていることが前提だが。昨年後半は目を回すほどの忙しさでとても落ち着いて執筆ができるような状況ではなかった。俺の本業はベルトコンベアで流れてくるあんこ餅を右手でギュッと握って赤福にする仕事なのだが、昨年は折からの半導体不足のあおりを受け赤福の需要も異常に高まり大変な忙しさとなってしまった。今年はある程度沈静してくれることを願っている。これを読んでいる読者愚妹どもも、お母さんを悲しませたりすることがないように。話を戻すが、記事以外に今年是非とも挑戦したいことがある、それは同人誌を出すこと。他のライターが文フリに出品している様子を横目でチラチラ見るたびつい羨ましくて指をくわえてしまう(最近はとうとう第4関節まで入るようになった)。よそはよそうちはうち、隣の芝は青い、ひとのときを想う。(JT)など、そんな俺の焦りを慰めるための箴言はいくらでも用意されているが、でも、やっぱ、出したいのは出したい。羨ましい以上に本を出したい気持ちがオーバーテイクだ。知ってか知らずか、俺も今年で32歳になる。オーソン・ウェルズは24歳で市民ケーンを撮ったのに、俺はといえばこの年になって何一つ成し遂げられていない。30代も半ばに差し掛かり、気力も体力も想像力も衰え、グラフにしたら黒棒の端っこのごとくカーブを描きながら下降していくのだろう。だとすれば残された時間は少ない。アメスピ3本吸い終わるころには老境に至っているのだから。はーん。想像するだけで濡れてきた。だから、やります。きっとやる。なあ、俺がもし本を売ったら、もちろん買ってくれるよな?だってお前ら、夢顎の強火ファンだもんな。夢顎が撫で終わった後のフェレット、集めてるもんな。期待してるぞ。その他には、やっぱ、ちょっと結婚したい気持ちがあるかも。周りでそういう話題を耳にすると自分ひとり取り残された気持ちでお腹いっぱいになるから。これはまあ努力目標だ。やりたいからってそうそうやれるものではない。でも出来ることならあのちゃんと結婚したいな。あのちゃんと結婚したら苗字変わって古畑任三郎と同じ名前になるから。嘘です。どこからといえば全部が嘘。所得税の納付期限は令和6年4月2日ではなく4月1日。


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