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優雅だったZ32の想い出

 私がZ32を手に入れたのは、いつの頃だろう。当時まだ30歳と少し位、結婚して岡山へ転勤して子供が生まれるかどうかの年齢だったと思う。  
 フェアレディ、 Z32、2シーターの車は、ずっと昔から私の心に宿るフェアレディの憧れであり、その輝きは私の給料では届かないほど高価だった。けれども、それでも欲しいという熱い想いが 通じたのか、 私の 手の届く価格で譲ってくれると言う人が現れたのだ。
 譲ってくれる車は当然2シーターだったのだが、私の心を駆り立て、 子供が生まれるかもしれないと言う状況をも払いのけ、手に入れることになったのだ。

 Z32の姿は、ただただ美しかった。落ち着いたシルバーのボディとモノトーンの内装が相まって、まるで夢の中から飛び出してきたような風貌だった。エンジン音が響くたび、私の心は高揚し、まるで空を切り裂くような爽快感に包まれた。特に高速道路を優雅に疾走する余裕感は、まるで自分自身が風と共に走っていくような気分だった。

 3リッターで4速AT、よくZ32の事をスポーツカーでないなどの批評がありましたが、そんなことどうでも良かったです。サーキット走りたいならRX-7でもCR-Xでも持ち出しますね。

 当時、好きだった憧れのコピーがある。「ドイツのエグゼクティブは時間をお金で買う」と言うコピーなのだが、その感覚は、この車に乗ってる時だけは感じられた。 ちなみにこのZ32は、あのドイツ車の名車、ポルシェ928を参考にしたクルマである。

Z32の時代はまだフィルム写真なのです。

 Z32との新たな日々が訪れた。自分はZ32に乗り込み、さまざまな場所を走り回った。時には鳥取の広がる砂丘近くを駆け抜け、時には大山の雄大な景色を満喫する。どこへ行くにしても、Z32とのドライブは、 疲れを感じさせないまるで魔法にかけられたような楽しさで満ち溢れていた。
 フェアレディZの特徴であるTバールーフはとても爽快である。 関西、淡路島にドライブに行った時、Tバールーフを外しオープンにして走った時、 オープンとはこんなに気持ちいいものかと、周りの視線を浴びながらも改めて思ったのである。

 しかしその楽しい日々も、やはり子供の誕生と共に終焉を迎えることになるのである。約1年たった頃に、私たちは新たな家族の一員を迎え入れ、Z32を手放す決断を下した。子供を安全に運ぶためには、Z32では限界があった。2シーターであった事に後悔はない。別れの瞬間、私の心は深い寂しさに包まれた。

岡山でドライブ、どこかの道の駅。

 Z32は私にとってただの車ではなかった。それは、夢のかけらが現実と交差した証しであり、私自身の成長と冒険の記録でもあった。今でもその走りの感触や風景が、私の心の中で鮮やかに蘇る。何度か買い直したいと思ったものだが、今や部品の調達も難しいらしい。と同時に無茶苦茶に価格が高騰してる…
 Z32との出会いは、一生の中で輝かしい一ページとして、決して忘れることのない大切な思い出となるだろう。

TIサーキットにて

(終わり)


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