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とある花崎さんの日常

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花崎さんの夏夢高校での生活日誌です。
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2020年8月の記事一覧

好戦手

 美鈴先輩とベビーカステラ、チョコバナナ、型抜きと回り、ある程度回ったところで一旦先輩と別れた。先輩はまだ遊び足りないようで、ルンルンとした足取りで人並みに消えていった。  私は人混みの多いところがあまり好きでは無いので、河川敷で休もうとやって来るとその人は居た。 「はぁー……」  そこにその人がいることが不自然だったし、顔色も浮かない感じなので声を掛ける。 「……如月さん、どうしたの?」 「え、……ああ、いや、なんでもない」  声色が明らかに沈んでいる。そして、今

7月/夏祭り

 梅雨の明けないこの時期だけど、今日は奇跡的に快晴。神様もこの祭りを楽しみにしていたみたい。  もちろん楽しみにしてるのは私達も同じで、特に如月さんは前日の部活の時から燃えていて、 「まずはたこ焼きとりんご飴を食べて、射的と型抜きは外せない!あっ、金魚すくいもやらなきゃ!」 などと、一人で必死に計画を立てていた。  かくいう私も如月さんほどでは無いけど、ある程度の計画は頭にある。もちろん、白波先輩とお近づきになる機会も設けるつもりだ。頑張るぞー!と意気込んだ。 ---

猛勉強、その結果

 如月さんを見つけて帰ってきた後、私達は4人で協力して勉強した。  その時に知ったのだが、如月さんはイギリスに住んでいた時期があり、その影響で英語が抜群にできることが判明した。  これは3年生の白波先輩の英語力を超えて、勉強会の最後の方は如月さんが白波先輩に英語を教えると言う、彼女の独壇場になった。もちろん、私も教えてもらった。皆、得意分野があって凄い。  その後、自宅でも猛勉強し、迎えた高校初のテスト週間。初めてにしては先輩方の力もあって、手応えは悪くなかったと思う。  

ブランコ-如月さん視点-

 私に好きな人ができた。背の高くて気遣いのできる優しい、一つ上の先輩だ。  きっかけは、私が中学生の頃に観に行った夏校の文化祭で先輩がライブをしているのを見たことだ。先輩の一生懸命だけど、どこか余裕のある弾きっぷりはカッコ良さを感じさせた。  私はライブが後に先輩に話しかけに行って、そこから私のことを知ってもらった。    高校はもちろん先輩のいる夏猫高校にした。もともと学力的にちょっと頑張れば届く距離だったし、私立だから設備も整ってて良いかなと思った。もちろん決め手は先輩が

6月/勉強会

 梅雨。雨模様で青空の見えない日が続く。空を灰色の雲が覆う。もしかしたら、このセカイの空はもとからこんな色だったかもしれない。 「というわけで勉強会をするわよ!」  しとしとと降る陰気な雨とは対照的な如月さんの明るい声が第二音楽室に響き渡る。空気が固まる。如月さんはどうやら白波先輩に向かって放った言葉らしいが、当の本人はポカンとした顔をしている。そりゃそうだ。如月さんは、なんの前振りもなく突然立ち上がって叫んだのだから。  沈黙を破るように美鈴先輩が口を開く。 「それっ