補聴器は処方せんによって作りだされる

補聴器は処方せんによって作りだされる

病院を受診し、お薬を飲む必要があるとが決まるとお医者さんから「処方せん」をもらいます。調剤薬局の薬剤師さんに対してどんな薬を出して欲しいか細かく指示を書いた書面が「処方せん」です。

例えば、細菌感染症の患者さんに対して抗菌薬を出すとき、問診、視診・触診(全身・局所)、検査データ(聴診、採血、レントゲン、心電図などの生理検査、膿の性状を知るための細菌培養検査など)などから、いくつもある抗菌薬の中からどれが最適が判断し、体重や年齢や合併症・基礎疾患を考慮して、処方せんには、この効能の抗菌薬、1日何回、1回につき何錠(mg)、何日間飲ませてください。という具体的な指示を出します。

補聴器の処方せんも調剤処方と同様に医師から事細かな指示をもらうことなしには成立しません。外耳道や鼓膜の視診所見、純音聴力検査や語音聴力検査や快・不快レベル検査、高齢者の場合だとさらに認知機能や手先の器用さ、日常生活動作レベルややる気スコア(意欲)などの情報から、1)スタイル、2)装用側、3)耳せんかイヤモールドかをまず決定し、ADLやライフスタイルや意欲を勘案して目標利得を設定、そこからどの処方式でその目標利得を達成していくかを決めていく必要があります。

抗菌薬を選ぶときに、ペニシリン系か、セフェム系か、キノロン系か、マクロライド系か薬剤師に対して指示するように、補聴器処方せんにおいてもハーフゲインか、NAL-NL1か、NALNL2か、DSL5.0かの指示を頂かないと認定補聴器技能者の人はどうして良いか困ってしまいます。一側聾とか高音域がスケールアウトの症例だったり高域がDead Region化している症例のときは、CROS、FM、周波数移転など特殊な補聴器の適応の有無についてしっかりと処方せんで言及してくださらないと、現場は「比較選択法(聞き比べ)」でしかはなしを進めることができません。規定選択法という現代の補聴器のフィッティングのキホンのキホンを実践できない理由は、認定補聴器技能者の怠慢ではなく、医師から提供される診療情報があまりにpoorだからにほかなりません。

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