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掛け合い:リアル女医日常

後輩「先生!なんですかこの車!」
女医「〇〇ちゃん久しぶりー!わー、うれしいー!」
後輩「え、なんですかこれ?救急車ですよね!?」
女医「はーい、送迎ありがとうございますー。〇〇ちゃん久しぶりーだねー!」
後輩「先生、聞いてます?これ救急車じゃないんですか!?」
女医「あー、これね!前話したじゃない、あそこ!あの民間救急と訪問看護やってるあそこ、講習会の仕事受けたとこ。そこで講習があってね、ついでに送ってくれるって所長が言うもんだからさ、乗ってきたの。中古の救急車みたいよ。」
後輩「先生…わたし今までの人生で待ち合わせに救急車できた人初めて見ましたよ。」
女医「あはははは!わたしも待ち合わせに救急車で来たの始めて。でもみてみて、引退した救急車だからサイレンとか大事な道具は全部取り外されてるの。」
後輩「その車なら絶対煽られないですね…。」
女医「そうかもね!で、ここのへん宝町って言ったっけ?近いの?〇〇ちゃんが見つけたワインバー。」
後輩「はい、この路地入ったところです。」
女医「やった!今日は旦那っぴも夜勤だし明日はお休みだし、飲むぜっ!やっばテンションあがるぅ!」
後輩「先生、モチベ高めですね!わたし明日日勤なんですけど!」
女医「どうせそっちの医局の外科連中とか、今日は朝まで飲んでるんでしょ?それよりマシよ、美味しいワインが飲めるんだから!」
後輩「そうですね、あの人たち、5時過ぎまで飲んで普通に7時半のカンファ(カンファレンス:ミーティング)に出席してとかやりますからね…人間じゃないです。なんなら6時00分クルズス(勉強会)とか入れてくるらしいですよ。」
女医「医者の不養生を突き抜けちゃってんじゃない、やだ!あ、もしかしてこの店?」
後輩「そうです!ワイン博士です!可愛い名前だけど、グラスワインがそろってるんですよー。この前きたときなんか、シャトー・リューセックの2009年飲ませてくれたんですよー!」
女医「ちょっと、リューセックの2009年って大当たり年じゃなかった!?」
後輩「ね、期待できるでしょう。入りますよー。マスター、こんばんはー。」
女医「わぁ、いい雰囲気じゃない、お名前は可愛いのに!」
後輩「マスターが店名の通りに、ワイン博士なんですよ!」
女医「それは楽しみねー。」
後輩「で、先輩。シャンパンなんですけど、お任せ頂いていいですか?」
女医「え!?ちょっとなになにー?いいのあるってか!?」
後輩「ふふふ、きっと気に入りますよー。」
女医「え!今マスターがもってきてるの、クリスタル・ロゼじゃない!」
後輩「うふふ、先輩ピンクの車買ったでしょ、だから、これは私からのお祝いです!」
女医「ちょーっとバカ!もうー!こんなシャンパン頂けちゃうっていうか、おいてあるこの店すごいんだけど!」
後輩「では先輩、新車購入かんぱーい!」
女医「まってまって!あれは中古車よ(笑、あっおいっし!これ美味しい!素敵な香りぃー、もうたまんない飲んじゃう。」
後輩「先輩、シャンパン好きが爆発したような飲み方してますね!注ぎますよー。」
女医「〇〇ちゃんもね、こんな美味しいお酒独り占めしたらバチあたっちゃう。飲もう飲もう!」
後輩「先輩って趣味いいですよねー。ドンペリよりエレガントで、わたしはクリュグとかより上回ってる気がします、クリスタル教えてくれたのは先輩ですよね!」
女医「そうだったね。なんかさ、ドンペリって俗なイメージついちゃってるっていうか、美味しいんだけどさ!なんかね、ドンペリ入りましたーなイメージがあってカッコ的に避けてたらおすすめされたの。」
後輩「クリスタルすすめてくるって先輩以外にやっぱちゃんといるんですか?ユアダーリン?」
女医「エノテカ(有名なワイン屋さん)のバイヤーさん。でも家飲みしたいって言ったのにクリスタル勧めてこられてもおサイフ困っちゃうよねー。」
後輩「またまた、あんないい車買う経済力あるくせに。」
女医「車は飲んでなくなってトイレに出てったりしないじゃない。でもあの子は気に入った車だからどうしよ、最後まで乗り潰そうかな。ともかくシャンパンで満足できるのはやっぱり家飲みは無理よね。」
後輩「わたしこの前安い酒屋さんあるじゃないですか、配達してくれるようなとこ。ドンペリ9800円で見ましたよ?」
女医「やだー。9800円だって高いしー、そんな所のどんな保存されてるかわかんないドンペリなんてますます9800円出したくないよー。」
後輩「そりゃそうだ、あははは(笑」
女医「ちょっと!ここお料理やばくない?」
後輩「そうなんです!ここのシェフいい腕してるんですよー。」
女医「ホタテ…泣かすわぁ、味付けがまたシャンパンとあう…」
後輩「でしょ、先輩いつか磯の香りとブドウはあわないんじゃない?とか言ってたから、ここのマスターとシェフに相談しといたんですよ。」
女医「わぁー!ちょっと〇〇ちゃん、あんたやるねぇー!」
後輩「そうだ、先輩、うっかりしてた。この前アドバイス頂いた患者さん。」
女医「あー、あの27歳女性SZ(統合失調症)の。」
後輩「はい、やっぱりありました。性被害歴があります。」
女医「でっしょ!こっちの病院でわたしが診たら2秒でわかるわ。幼少期の性被害があってからの児童相談所介入で、その後にってパターンでしょ。」
後輩「はい、本当に本人にも記憶がないような状態だったのですが、毎週診察入れて少しずつ話を聞いていったら出てきました。」
女医「当たり前よね。わたしは性被害にあってございます!なんて初対面の医者、それもさ、医者ってったって最初の医者男でしょ?男性に言える話なわけないじゃない。DIDでしょ。」
後輩「おっしゃるとおりです。幻聴幻覚についてしっかり洞察保持(幻聴や幻覚が幻だと自覚できていること)できていたのと、注意深く発生状況や内容を聞いていくと強い男性恐怖が確認できたので、あとは間隔を開けず週次で診察を続けて判断しました。」
女医「そっちの病院じゃ大変だったでしょ。あのアホ部長、とりあえず統合失調症にして抗精神薬盛ればいいと思ってるでしょ。にらまれたんじゃない?」
後輩「カンファなんかめっちゃ空気悪かったですよ。しかもあの部長なんて言ったと思います?」
女医「なんてなんて?」
後輩「トラウマが原因だとして、先生は箱庭療法(トラウマのある患者に有効とされている療法)でもやるのかな?ですって!」
女医「そこ箱庭なんだ(笑、EMDR(眼球を運動させる療法)ですらないんだ(笑」
後輩「先輩、なんか今の精神学会って、白い巨塔みたいですね。」
女医「大学と国公立はそうでもないんだけどね。〇〇ちゃんがいってるような民間で入院施設がある病院だとそんな雰囲気って、聞くね。」
後輩「わたしも大学病院にすればよかったな。」
女医「元祖白い巨塔に来てどうすんのよ(笑」
後輩「先輩って将来どうするんですか?やっぱり開業するんですか?」
女医「〇〇ちゃんは?」
後輩「はい、すごく迷ってます。Dr.コトーみたいな所を妄想もしたんですが、実際のコトーってきっと医者いじめ倒すような村民がいそうだし。」
女医「あー、そうね。正直年3000万って言われてもいやだわ。命の代金としてはお金じゃ安すぎる。」
後輩「ですよね、その3000万が税金で2000万以下に減った上に使う暇もないってありえない。」
女医「そうそう、いくらあっても使う暇と健康がなかったらただの紙屑だからね。」
後輩「エルメスにいって1000万使ったらバーキン買える権利がもらえるって噂聞きましたよ。」
女医「無医村とか島でバーキンもってどうすんのよ(笑」
後輩「ほんとですね(笑」
女医「わたしはできれば大学に残ろうかなって思ってる。臨床(実際に患者を診察、治療すること)に関わっていたいのもあるし、大学だと研究にも何かと便利だしね。とくにうちみたいなブランド病院の大学名ってまだまだそれだけで名刺代わりになるし。」
後輩「わたしも大学戻ろうかな。ぶっちゃけて言っちゃうと、SZつけて入院させるだけのためにあるような病院なんで、罪悪感もあるんです。」
女医「SZが精神分裂病だった時代について読んだ事があるけど、下手な病院いったらその時代と変わらない治療されてて、治療って言っちゃ失礼か…胸が痛むね。」
後輩「はい、先輩、将来独立する時は絶対雇って下さいね!」
女医「お!?独立しちゃう!?」
後輩「ついていきます!」
女医「じゃシャンパン空いたし、次ワインいってみようー!」
後輩「はい!」

2024年8月8日
プロジェクト・シルフ
みゆき・シェヘラザード・本城

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