見出し画像

掛け合い:お医者さんごっこ まとめ①


誤診

指導医
「先生、ちょっといいかね」
医師「はい、なんでしょう。」
指導医「君の担当している本城みゆきだが、本当に統合失調感情障害かね?」
医師「はい、これでも診断基準くらいは頭に入っています。定期的に発生する幻聴、気分の浮き沈みも顕著です。何か問題がありますか?」
指導医「うむ、問題だ、非常に問題だ」
医師「非常に?ですか」
指導医「例えば幻聴だが、君は幻聴を起こす疾病をいくつ知っているのかね?」
医師「それは、、、たくさんありますが」
指導医「統合失調症が当てはまる症状を見せていても他の全ての選択肢で最も疑われる病名を見つけなくてはいかん。君は患者の生育歴を敢えて無視したのかね。虐待、があるね」
医師「あ!」
指導医「このような虐待歴がある場合、幻聴だけじゃなくてフラッシュバックを疑うべきではないのかね。頓服もあまり効果がないとあるぞ。」
医師「はい...」
指導医「双極性障害についても疑わしい。炭酸リチウムの血中濃度はもう安定しているにも関わらず、気分のブレが見られる。解離性同一性障害の線は疑ったのかね?」
医師「いえ…抗うつ薬の使いすぎが原因かと思って…」
指導医「それにしては副作用も弱い。そもそもSNRIをこの程度服用して使いすぎだとなぜ思ったのかね。」
医師「すいません…他の患者で元気になりすぎて困るという話を聞いた事があったもので。」
指導医「患者は鬱症状も強く訴えてきているとあるじゃないか。それでは説明がつかない。複雑性PTSD、からの解離性障害を視野に入れ、心理と連携して検査をしなおしなさい。わかったね?」
医師「はい!すぐやります!」

手洗い

指導医「先生、待ちなさい」
医師「はい、なんでしょう?」
指導医「これから患者さんの回診です、先生は汚い手で患者さんに接するつもりですか?」
医師「え!先生、もちろんたった今綺麗に手を洗ったじゃないですか。先生も一緒に。」
指導医「先生、あなたは今ご自身の白衣に手を触れましたね。朝着たであろうその白衣は清潔なのですか?」
医師「え!」
指導医「ここがいくら患者さんと接触の少ない精神科病棟とは言え無神経にも程があります。待っててあげますから洗い直して来なさい」
医師「はい!」

自殺事故

指導医「先生、気にしないことです。避けようのない事故はあります。」
医師「でも先生...本城さんは良好に見えて...なのに壁に頭を打ち付け...うわぁぁぁ!」
指導医「患者は私が診ても良好に見えた。先生も知っているだろう、自殺とは突発的なパニックだ、本当の意味で防ぐには拘束しかない」
医師「先生、わたし医者やめます...」
指導医「君がやめたら君の生涯で助ける患者の命が失われる。医者の使命を軽く見るならば、それらの魂に詫びてからにしなさい」
医師「…」
指導医「医者をなめるな!」

弱音と励まし

研修医「看護師さん...わたしもう無理です...あんな小さな子が...あんな酷い姿で亡くならないといけないなんて...」
看護師「はぁ?センセ、あんたがその酷い姿を治すんじゃないの?オーベンとうちらに後始末任せてこんな所で泣いてるなんて、免許返納して帰りなさいよ!」
研修医「え...そんな...」
看護師「でもねセンセ、誰もが通る道よ。わたしも子供さんの死は未だに涙ぐむわ。黙祷する暇なんて許されてないけどね。がんばっていいセンセになりなさい。」

小児科とアンパン

研修医「はい、お腹みせてねー」
子供「うわぁぁぁぁん!」
研修医「大丈夫だよー、痛くないよー」
子供「いやだぁぁぁぁ!うわあああ」
研修医「はい!じゃあ一緒にアンパンマンうたおっか♪そっおっだ、うれしいんだ生きる喜び~♪」
子供「.....ぐすん」
研修医「あー!バイキンマンがおなかの中にいそうだぞぉ!一緒に探してみよう!」
子供「う、うん...」
研修医「一緒に歌いながら探そう!」
子供「バイキンマンいた?」
研修医「いたぞーみつけたぞー!(あー、なんとかなった...)」

野球

医師「あの、なんの騒ぎですか?」
指導医「君は阪神ファンじゃないのか」
医師「野球は見ません」
指導医「阪神を見ない医者なんてけしからんなぁ!これから阪神が優勝するから、特別に大きいテレビでみんなで見てるんだよ!」
医師「先生!患者さんまでいれて!大丈夫なんですか!」
指導医「大丈夫大丈夫!教授も阪神ファンだからな!28年待った甲斐があったぜ...」
医師「教授まで...」
指導医「君、硬いだけでは医療はいかんよ。こうして羽目を外すことも時には...おお!やったー!優勝だ!」

基礎

指導医「よく聞きたまえ。正しい治療などというものは存在しない。患者によって病状も違えば効果のある治療法もみな違う。病名などというものは治療の目安のためにつけられたタグのようなものだ。諸君は患者ひとりひとりと常にまっすぐ向き合い、その場で有効な治療を施していかなくてはならない。学生気分ではやってられないよ。」
研修医「はい!」
指導医「とはいえども、基礎は何よりも優先される。しっかりとした診察と、それに合わせた処方、これこそが医者の基礎というものだ。」
研修医「はい!」

難病

指導医「今日の患者は少々大変ですよ」
医師「は、はい」
指導医「27歳女性、長く統合失調症と診断されていたよくあるパターンですが、簡単な診察ですぐに解離性の諸症状がわかりました。幻聴と幻覚についても統合失調症からではなく恐らく複雑性PTSDからくるフラッシュバックでしょう」
医師「解離と統合失調症はよく間違えられるのですか」
指導医「あるいは、間違えたいのではないでしょうか。解離に有効な薬はありませんからね」
医師「有効な薬がないのに治せるのですか」
指導医「患者次第です」

退院

患者「先生、わたしはいつ退院できるんでしょうか」
医師「焦らない事です。ゆっくりがんばっていきましょう!」
患者「先生、わたしは退院してもいい人間なんでしょうか」
医師「当然ですよ。病気だからこうして入院する。元気になったら外に行く。当たり前の事です。」
患者「でも今日も聞こえるんです。お前みたいなキチガイは外に出るなって。」
医師「それが幻聴だとわかったんですか?」
患者「はい、部屋には誰もいません」
医師「それがわかるようになったのは大きな進歩です。元気になってきてますよ」

透明人間

患者「先生、実はおれ、透明人間なんです。」
医者「あら、透明人間だったの!?」
患者「はい、何日か前から自分の体が透き通って、透明人間になったんです」
医者「あらあら、大変。透明になっちゃったの?」
患者「はい、透明になりました。」
医者「透明人間だと、廊下を歩いてる時に人にぶつかっちゃったりとかして大変でしょう?」
患者「ぶつかる、はい」
医者「ぶつかって自分も怪我しちゃわないように、透明じゃなくなる方法はないかなぁ」
患者「先生、やっぱりおれ、透明人間じゃないです」
医者「よかった」

天国

患者「いやー!先生。この病院は快適だね!なんてたって上げ膳据え膳な上に綺麗な看護婦さんがしょっちゅうきて相手してくれるだろ!それ以外は寝てりゃいいっていうんだから、シャバよりずっと快適だよ!酒が飲めたら天国だな!」
医者「お酒はだめ」
患者「こんな良い世界があるなら、もう家に会社にも行きたくなくなっちまうな!」
医者「それも困りますね」
患者「だよな、3ヶ月たったらここを出て、またあの嫌な家に帰らないといけないんだよな」
医者「なにが社会の中での幸せか、探していきましょうね」

患者の心配

患者「先生、〇〇さんの心臓手術、どうなってるんだい?」
医師「手術室の中の事はわかりませんよ。それよりあなたはあなたで、ゆっくり休んで下さい」
患者「けどよ〇〇のやつ、昨日心配で眠れてないんだぜ。あ、麻酔で寝るのか」
医師「はい、今頃はしっかり麻酔で眠りながら手術を受けてますよ」
患者「先生麻酔ってやつはほんとうに何も感じないのかい?」
医師「はい、麻酔をかけたと思ったらもう手術終了までタイムスリップしてるような感覚だそうですよ」
患者「わかった先生、〇〇のやつ助けてやってくれな」

説得

指導医「〇〇君か、どうした。」
医者「わたし、小児科向いてません。」
指導医「そうか、向いていないと思うのか。」
医者「はい、子どもたちが可哀想で見てられないんです。よく泣いてしまいます。」
指導医「そうか、子どもたちが可哀想でよく泣いてしまうのか。」
医者「先生、傾聴されてるんですか?」
指導医「いや、呆れ果ててオウム返しをしている。」
医者「え」
指導医「可哀想だから君が治すんだろう。君が可哀想なのは胸を痛めている君自身だろう。」
医者「!」
指導医「そのツラはわかったようだな。行きなさい。」
医者「はい!」

2024年8月6日
プロジェクト・シルフ
みゆき・シェヘラザード・本城

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?