【医師解説】間葉系幹細胞の創傷治癒効果
創傷には外傷、切り傷、熱傷、あるいは血液循環障害である床ずれや糖尿病性の潰瘍も含まれます。創傷治癒は炎症期、細胞増殖期、組織再構築期に分けられます。
創傷直後は血小板集合、凝固あるいは血管収縮による止血が起こります。
創傷早期 (炎症期) では単球、マクロファージが創傷部に集積し、IL-1αとβを分泌します。
これにより、損傷部位にT細胞、B細胞、NK細胞など免疫細胞が集積します。
T細胞やマクロファージより産生されたIL-6は抗菌、抗ウイルス作用を持つ好中球を集合させます。
また、IL-8、IL-17aも炎症を誘導し、細菌感染を防御しています。
これらの作用により、創傷部に残った壊死細胞の除去あるいは細菌、ウイルス感染を防御しています。
細胞増殖期では、炎症、発赤、発熱などが治まる時期です。ヘルパーT細胞などより産生されたIL-12 は炎症反応を抑制します。
また、T細胞やNK細胞から分泌される IL-4は内皮細胞増殖を促し、線維芽細胞により産生された HGF は表皮細胞の増殖を促します。
また、創傷部における表皮細胞増殖を促すのは HGF以外に HB-EGF が知られています。
線維芽細胞増殖はHB-EGF、FGF、PDGF、内皮細胞増殖はVEGF以外にIGFが同様な因子になることが知られています。
組織再構築期では、組織として機能するために表皮細胞と毛細血管を結合させるコラーゲン線維の増生による組織化が起きます。そして、コラーゲン線維および弾性線維の規則的な配列が完成して始めて組織としての再構築が完成します。
しかし、毛細血管、表皮細胞および結合組織が無限大に増殖したら組織再構築とは言えません。
その為、T細胞からTGF-β1とβ2が産生されて種々の細胞増殖が抑制されます。
最後に真皮部でのコラーゲン線維弾性線維、ヒアルロン酸あるいはフィブロネクチンによる結合組織の再構築により創傷治癒が完了します。
間葉系幹細胞は、炎症期に皮膚損傷部位に集積し種々の増殖因子やサイトカインを分泌して治癒を助けることが知られています。
青山メディカルクリニック 院長 松澤 宗範
参考文献:
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4) Madlener M, Mauch C, Conca W, et al. Regulation of the expression of stromelysin-2 by growth factors in keratinocytes: implications for normal and impaired wound healing. Biochem L. 1996; 320: 659-664.
5) Madlener M, Mauch C, Conca W, et al. Regulation of the expression of stromelysin-2 by growth factors in keratinocytes: implications for normal and impaired wound healing. Biochem L. 1996; 320: 659-664.
6)国際抗老化再生医療学会雑誌 第1号(1-20)2018 間葉系幹細胞による治療と抗老化 佐藤茂 劉效蘭
・院長プロフィール
総合内科、形成外科、美容皮膚科、美容外科。
がん診療に関しては10代の頃に母親を末期癌で亡くした経験と形成外科で癌術後の再建で患者様と日々関わることで、早期発見、予防医療の重要性を痛感し、がん検査や治療も行っている。
疾患の種類を問わず、アンチエイジングまで幅広い患者様に対応し、体の内側・外側ともに健康に綺麗にをモットーにしている。
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