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下痢の時の食事とミルクはどうしたら良いですか?

急性胃腸炎は、小児科では頻度の高い疾患の1つです。
医療資源やインフラが整っていない途上国では、5歳未満の小児が毎年200万人死亡していると推定されており、重要な疾患の1つです。

日本を含む先進国では、急性胃腸炎で死亡するケースは非常に稀ですが、小児科外来で「下痢が出ました」と受診する患児と保護者は絶えることはありませんし、急性胃腸炎による症状(下痢や嘔吐)がひどい場合は入院が必要になります。

このように、急性胃腸炎は小児でありふれた疾患の1つですが、外来で保護者の方々から様々な質問を受けることがあります。
その中の1つで、食事・栄養摂取についてです。

例えば、
• 下痢がありますが、離乳食はどうしたら良いですか?
• 離乳食やミルクはやめて、経口補水液にした方が良いですか?
• ミルクは薄めた方が良いですか?
• 乳糖は避けた方が良いですか?
• 乳製品もダメですか?
と言った質問があります。

実は、小児の胃腸炎と食事をテーマにした研究は1980〜90年代に非常に数多く行われています。
今回は過去の研究を紹介しながら、これらの質問にお答えしていこうと思います。今回は、51の参考文献の知識がここに凝縮されています。

Q1. 離乳食やミルクを一旦中断した方が良い?

子どもが下痢のため小児科外来を受診された保護者から「離乳食やミルクは中断して、経口補水液を与えた方が良いでしょうか?」という質問があります。

確かに、あまりに嘔吐がひどい時、ミルクや離乳食を与えようとすると嘔吐してしまうケースがあります。
このような時は、経口補水液を少量ずつ与えるのが良いでしょう。

一方で、嘔吐はなく下痢のみの状況で「敢えて離乳食やミルクを中断すべきか」は別問題です。
中には、「胃腸炎で腸が傷んでいるので、少し休ませて、ゆっくりミルクや離乳食は再開しましょう」という指示をしている医療者もいるようです。

食事・水分が摂取可能な状況で、敢えて経口補水液のみに制限するメリットがあるかについて、既に多数の研究が行われています。

2011年にコクランデータベースから報告されたシステマティック・レビューとメタ解析を参照してみましょう。(1)
システマティック・レビューでは、過去に行われた研究を偏りなく網羅的に検索します。そして、個々の研究データが統合可能な場合に、それぞれを統計学的な手法を用いて統合することをメタ解析と呼んでいます。

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