見出し画像

小児の咳止めとしてのはちみつ(2022年度版)

2020年に書籍「そのエビデンス、妥当ですか? システマティック・レビューとメタ解析で読み解く小児のかぜの薬のエビデンス」にて「子どものかぜとハチミツ」について執筆しました。

その後、システマティック・レビューとメタ解析が2020年に、国内からのランダム化比較試験が2022年に報告されたため、知識のアップデートが必要となり、本記事を記載しました。


1. 要約:小児の咳止めとしてのハチミツ

咳は小児のかぜ診療において、非常によく見られる症状です。
子どもの咳は、本人や保護者において、夜間の睡眠の妨げにもなりうるので、ホームケアにおいて悩みの種となるでしょう。

ハチミツには抗酸化作用・抗菌作用があると信じられてきました。
このため、かぜの咳への効果が期待され、古くから民間療法としてハチミツが使用されてきました。近年、国外で1〜2歳以上の小児を対象にランダム化比較試験(RCT)が行われ、ハチミツが小児の咳止めとして有効であった報告が複数あります。さらに、これらのRCTを系統的に評価したメタ解析が2014年・2018年・2020年に報告され(1–3)、ハチミツが風邪の咳に有効であることは支持されています。

一方で、過去に行われてきたRCTには複数の問題点があります。
まず、コントロール群(治療を受けないグループ)の設定が不十分で、バイアスが混入している可能性があります(特に情報バイアス[差異的計測誤差differential measurement error])。実際、「本物のハチミツ」と「偽物のハチミツ」を比較した研究での鎮咳効果は同等であり、ハチミツそのものが有効というより、甘くてドロっとした液体で十分なのかもしれません(4)。
次に、ハチミツは製造された国や地域によって組成が微妙にことなります。このため、過去のRCTの結果が日本へ外的妥当性があるかは慎重に考えたほうがよいと思います。
最後に、ほとんどの方はご存知と思いますが、1歳未満の乳児はハチミツを摂取すると乳児ボツリヌス症になる可能性があるため禁忌であり、適応年齢は慎重に判断する必要があります。

ここから先は

6,642字 / 12画像

¥ 100

良質な記事をお届けするため、サポートしていただけると嬉しいです!英語論文などの資料取り寄せの費用として使用します。