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トイレトレーニングと科学的根拠

このnoteでは、トイレトレーニング(トイトレ)の開始時期、終了時期、トイトレのコツやポイントを中心に解説しています。

また、トイトレに関して、よくある以下の質問にも、科学的根拠をもってお答えしています:

Q1. トイトレの開始時期は、時代によって違う?
Q2. 布オムツ?それとも使い捨てオムツ?
Q3. 「昔のこどものほうがトイトレは早く完了」は本当?
Q4. トイトレの開始時期は2歳以降がよい理由は?
Q5. トイトレのスキルを覚える順番は?
Q6. トイトレの完了時期はいつ?
Q7. トイトレは早く開始したほうが早く終わるは本当?
Q8. トイトレの時に「ネガティブな言葉は言わない方がよい」は本当?
Q9. トイトレ前に便秘を治療したほうが良いって本当?
Q10. おねしょアラームがトイトレに有効?


トイレトレーニングとは?

トイレトレーニングは、「おむつを常時使用している状態から、自らトイレで排泄できるようにする訓練」と考えられてきます.

また、トイトレは社会的に容認できる時間や年齢において、排尿・排便に必要な技術を身につけることでもあり、社会的な訓練の1つともいえます.[1]

トイトレ完了とは?

「トイトレ完了」とは、時代や環境、文化によって大きく異なります.例えば、西洋式の文化でのトイトレ完了は、

• 尿や便の「おもらし」がない
• 社会的に受容できる場所で排泄できる
• 適切な姿勢で排泄できる
• 衛生的な方法で排泄できる

など、排泄行為だけでなく、社会的・文化的要素も考慮されています.[1]

トイトレの歴史は?

トイトレにも長い歴史があるようです.[1]

■ 1900〜1920年のトイトレ

例えば、1900年前後では、トイトレ開始のタイミングは保護者が決め、主導する方式が主流でした.

■ 1920〜1940年のトイトレ

1920〜30年頃になると、行動科学の研究者らの考え方が導入されました.保護者中心のアプローチは一層強まり「厳格に排泄習慣を訓練するべき」とする考え方が強くなりました.

例えば、1932年にアメリカ政府は「Infant care(乳児のケア)」を出版し「トイトレの生後6〜8ヶ月での完了」を提案していたようです.

この時代のアメリカでは、「soap stick」という排便を促す坐薬を使用して、定期的に排便させる方法が推奨されていたようです.(現代では考えられない方法ですので、決して真似をしないでください)

■ 1940年以降のトイトレ

1940年代からトイトレの主体は大人中心から子ども中心へと変わってきました.

その理由の1つとして、1歳未満の乳児期に厳格な訓練をしても、排便や排尿のコントロールにはつながらないことが分かってきました.さらに、この厳格な訓練が、子どもの行動上の問題を起こす可能性があると考えられるようになってきました.

このため、こども中心のトイトレ法が考案されるようになりました.これは、こどもがトイトレに適した発達段階までは待ち、子どもの準備が整ったら、その子のペースで始めるという方式です.

■ 1890〜1950年までのトイトレ法の推移

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時代とともにトイトレの指導法がダイナミックに変わってきたことが分かります.

1950年以降は、「子ども中心のトイトレ」が定着し、アレンジされてきています.
さらに、アメリカ小児科学会(AAP)[2]やカナダ小児科学会(CPS)[3]も「子ども中心のトイトレ」を推奨しています.

ここから説明するのは、一般的な「子ども中心のトイトレ」です.
トイトレには唯一無二の正解があるわけではありませんが、AAPやCPSといった学術団体や、過去に行なわれた研究の総説[1]といった、質の高い情報を基にまとめたトイトレ法をここからは解説していきます。

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