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Seymour Duncan JB Jr.™ SJBJ-1b

オークションで購入されたという、所謂ストラト“タイプ”ギター。
中国製ギターについて先日 Epiphone P-90 でも言及させていただきましたが、その完成度は高いという認識です。もはやマシニング加工こそが、加工精度の高さや、人間が他に時間を使えるという意味でも最強である事は周知の事実であろうと思います。

とは言ってもトータル的にはコストダウンの集大成といった感はあるので、部品交換の必要性は正直、あります。

オーナーが入手される前からレリック加工されていたとのこと。ブランドは SELDER かもしれないと出品者の方がおっしゃっていたそうです。
ポリエステル塗装を部分的に剥がす、これは音響面でも面白い効果があると認識しており、個人的には好きな方法です。この個体は部分的とは言えませんが(笑)。

アームが付属していなかったとの事で、トレモロレス設定にし、ご自身でネック調整をされたとの事で、ストラト特有のスプリングリヴァーブ感も相まって生鳴りは非常に良く感じます。

ほぼ真っ直ぐなネックは、トラスロッドの調整はヘッド側でできるようになっていますし、22フレット指板。細く背の低いフレットを除き、かなり弾き心地の良い仕上がりという印象でした。適度に太くて、かなり良いグリップ感、これだけでお買い得な印象です。

今回、ブリッジピックアップ及びコントロール系統の交換をご依頼いただきました。同梱いただきましたのは、Seymour Duncan JB Jr.™。シングルサイズドハムバッカー です。

ピックガードを開けさせていただいて個人的に感動したのが、センターピックアップが逆巻逆磁極になっており、ハーフトーン時のハムキャンセルが採用されている点と、3つとも直流抵抗値を変えてある部分。

このスタイルのシングルコイルは昔から個人的にとても面白い音がすると思っていて、一人で弾いている時は気持ち良いのですが、いかんせんバンドアンサンブルの中では抜けにくい面があるとも感じています。

日本がコピーモデルを量産していた時代は、DM-50 や YM-50 が使われていましたが、 Alpha 社のコピー品と思われる 5way Switch 、エフェクターなどでお馴染みの16mm ポットの採用、独立したキャパシタの2個使い、セラミックマグネットピックアップのシールド線の採用など、企業努力という点で勉強になります。ご存知のように、これらを変更する事で音のレンジは確実に広がりますので、定番の変更をしていきます。

ボディの座繰り形状が、16mmポットに合わせてあり、24mmポットをインストールするには、ピックガードの加工か、ボディの座繰り範囲を増やす必要が出てきました。打ち合わせにより、様々なメリットを考慮するとボディ座繰りの拡張が“近い”だろうということになり、ポット位置に合わせてザグリます。

イレギュラーではあるのですが、ポットが収まるギリギリの座繰り形状としました。
キャパシタについてはあれこれと検討しましたが、セラミックを採用、配線材、スイッチ、ジャックも変更し、なかなかの仕上がりとなりました。内部配線の選択は重要です。

各樹脂パーツの白がそれぞれに違い、ここにギター用樹脂パーツの白の色見本が集まっているかのようで楽しいです。

サドルサイズは10.4mm でしたので、ピックアップのポールピースのピッチとも相性抜群だと感じます。こちらでも言及させていただいておりますが、この部分は個人的には重要視しています。
サドルに関してはやはりスティールのプレスサドルに、サドルハイトスクリューも変更したいところ。ここも響き方に影響し重要な点と考えています。

直流抵抗値はこの数値です。マグネットはセラミック、狭い磁場。さて音の方はというと、ギター本体の鳴りの良さも相まってボリュームの追随性やサステイン感、シングルコイルっぽさを“感じる”部分など、 JB™ に近いものを感じ、現場でも大変扱いやすいだろうと感じました。Seymour Duncan JB Jr.™ 、なるほどといったネーミングですね。

細かいところを挙げればキリがありませんが、中国産ギターを骨格としてフレットや電気系統をイジる。
ギターが色々な場所を移動する道具であるという様々な面での日常力、サウンド面での破壊力を秘めていると感じます。

ご協力いただきました、このギターのオーナーに感謝申し上げます。最後まで閲覧いただき、ありがとうございました。Pōmaikaʻi

※ 当記事の内容につきまして、あくまで筆者独自の視点から執筆された内容であり、できる限り正確性等を保つため最大限の努力をしておりますが、執筆及び編集時において参照する情報の変化や実体験により、誤りや内容が古くなっている場合があります。
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