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JBE Pickups™️ Modern T-Style

Joe Barden Engineering™、JBE pickups という名前で再スタートを切って久しい、その代表作 Gatton T-style 。Danny Gatton との出会いから生まれたとされる、おそらく市場で初のテレキャスター用ダブルブレードピックアップ。

1990年代には Telecaster に載せるノイズレスなピックアップと言えばコレだろうなぁ的存在でした。その後、有名ブランドからも沢山のシングルサイズドハムバッカーがリリースされ、Joe Barden pickups Inc. が販売をやめていた時期には中古市場での価格が高騰したことは記憶に新しいです。

現在では様々なギターに、Joe Barden 発案の構造を広めるべく、Stratocaster 用はもちろん、ソープバースタイルや、Jazzmaster、Jaguar、Jazz Bass、Precision Bass、Rickenbacker 用などなど、様々なモデルに対応する製品群がリリースされています。

私は Telecaster が大好きで、特に太いネックとスティールのネックプレートとブリッジベースプレート、弦が2本づつ乗るブラスサドルにといった定番の構成、0.011-0.048 等の弦を張ればピッチもちゃんと合う。特に24フレットの位置に設置された、カバードネックピックアップのサウンドに魅了され、自分の中でのメインのサウンドとして位置付けていた時期もありました。

ギター1本で弾いている時は何も違和感を感じないのですが、バンドアンサンブルに入ってしまうと、どうもネックピックアップのサウンドはヌケてこない。当時は情報もギター雑誌や書籍で得られる程度。マグネットの種類がどうとか、直流抵抗値が高ければ音がデカいのかとか、おぼろげながらにしかピックアップのことは知らないに等しい状況で、様々なネックピックアップを購入し、試してみるものの、理想的なサウンドに巡り合うことはできませんでした。

そんな中、雑誌の小さな広告に載っていた、 Joe Barden Pickups Danny Gatton model 。ダブルブレードのルックスがどうもなじめなかったのですが、サウンド優先で考え、期待して購入。当時は日本の商社からのセット購入しかできなかったので、高額だったなーという思い出ですが、高額なのは舶来品だからではないな、と納得がいくサウンドで、ハムバッキング構造であってもハムバッカーっぽさは感じることはなく、ブリッジポジションのサウンドも、サステインの「感じ」がシングルコイルよりも使い勝手が良いと思えてしまうほどのものでした。

その後、テレキャスターにシングルサイズドハムバッカーなんて邪道だという、今ではどうでもいいとさえ思える思考の芽生えや、ルックスの違和感が拭えずに手放してしまうのですが、その音抜けの良さやノイズの少なさは鮮明に記憶に残っています。

今回、使えるテレキャスター用ブリッジピックアップは何かないか?とご相談をいただき、真っ先に Gatton T-style を提案させていただきました。
調べてみると、ブリッジポジションのみ 出力をアップさせた Modern T-style というモデルが新たにリリースされていたことがわかり、オーナーのプレイスタイルには、こちらの方がマッチしているかもしれないと判断。ネックピックアップはそのまま使いたいとのことでしたので、ブリッジピックアップのみ交換となりました。

Fender Japan TLR-135RK 。富士弦楽器製造もしくはダイナ楽器の逸品。太いメイプルワンピースネック、R12 のジャンボ22フレット指板、グリーンバーストの個性的な色、コンター付きのボディはアッシュでしょうか。オーナーにより様々なカスタマイズがなされ、Schaller HIP SHOT はかなり使いやすいものです。

ご存知のようにtelecaster は、2つのピックアップバランスを取る事が難しいギターに属しますので、単に好みで片方だけ変える、という視点での交換が難しい場面が多いです。

ネックピックアップは、TLR-135RK のデフォルトである DiMarzio® DP173 Twang King™。参考までに直流抵抗値を計りました。ブリッジピックアップは別物なので、特に意味を成しませんが、マグネットは AlNiCo 5、もしかしたらバランス良いサウンドが得られるかもしれません。ブリッジプレートがブラス製であることが、サウンドにどのような影響をもたらすのか楽しみです。結果については後述します。

Joe Barden が目指したのは、ローノイズのシングルコイルテレキャスターサウンドだったんだろうなと、その明朗な音を聞いていると想像できてしまいます。このサステイン感、クセになる弾きやすさ。ピックアップに対してダブルブレードをずらして均一に弦の動きを捉える構造も関係していると思われます。ロゴはレーザー彫刻でしょうか。ちなみにこのブリッジのサドル幅は11mmです。

マグネットはセラミックが使われているようです。以前は無かった記憶のグラウンドプレートが設置されていましたが、インダクタンスに影響はあるのでしょうか。配線は白線と赤線が既に結線されていました。4芯であることは、ピックアップ交換時に位相反転を容易にする為の回答であると思われます。これをもってサウンドバリエーションがどうとか、否定はしませんが宣伝文句として使わない方が良い気がします(苦笑)。コイルワイヤーはどんなものが選択されているのでしょうか。

細く強い磁力のバーマグネットを使用して、Gatton T-style の 4kΩ台の直流抵抗値に対してこの数値。ハムバッキング構造とは言えど、磁場はシングルコイルサイズ中での構成の為、通常のハムバッカーほど広くはない。こういった事から直流抵抗値が高いから低いからとか、単にハムバッカーだからという視点は、実は出音の参考になりづらい事がわかります。

こちらも以前は無かった記憶、JBE になってから追加されたと思われる、ピックアップの天板に使われているのはベイクライトでしょうか。この部分にピックのアタックに負け難い素材を選択している点も尊敬できます。ホワイトとアイボリーも選択できますが、その素材は不明です。

TLR-RK デフォルトの回路はオーナーにより変更されており、ボリュームには250kΩ、トーンには500kΩ、高度経済成長期の MATSUSHITA 製と思われるセラミックキャパシタはそのまま使用し、配線は少し変更を加え、ジャックは交換させていただきました。内部配線の選択は重要です。
厚みのあるブラス製ブリッジプレートと Modern T-Style は相性が良いと思います。

このブリッジアッセンブリー、実は問題があります。弦長とサドルの位置関係、ベースプレートマウントスクリューの位置が、残念なのです。サドルハイトスクリューが、ブラスであるベースプレートとスティールであるマウントスクリューにランダムに乗ってしまっており、これでは素直な響きという視点で疑問符が付きますが、出音が良ければ何も問題なし。
これはオリジナルのブリッジアッセンブリーと加工無しで交換可能として開発された製品であるがゆえ仕方のない事ですね。

さて前述のネックピックアップ Twang King™ ですが、個人的意見として、ブリッジのベースプレートがスティールである個体において使用される事がポイントのような気がしています。ブラス製プレートは、言葉で表現することは難しいですが、反応がまろやか、重たい響き、といった感想を持ちます。サドルもブラスなので、その辺りが顕著に感じられ、デフォルトで搭載されていたであろうブリッジピックアップ THE CHOPPER T™ とは相性が良かったかもしれませんが、この JBE Modern T とは明暗の差が如実に出ていました。これは良い悪いの話ではありません。

JBE pickups Modern T-Style。Gatton T も含め、ここ日本で見かける機会がかなり少ない印象ですが、名作である事は間違いないです。

ご協力いただきました、このギターのオーナーに感謝申し上げます。最後まで閲覧いただき、ありがとうございました。Pōmaikaʻi

※ 当記事の内容につきまして、あくまで筆者独自の視点から執筆された内容であり、できる限り正確性等を保つため最大限の努力をしておりますが、執筆及び編集時において参照する情報の変化や実体験により、誤りや内容が古くなっている場合があります。
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