読んだものメモ その三

感想を書くのをサボってたので、まとめて書いときます。

アルジャナン・ブラックウッド
「The Man-Eater」
マレーの農園主パターソンのもとにノーマンというイギリス人がしもべのマレー人サカを連れて泊まりに来るが、彼は客たちの何となく獣じみた目が気に入らなかった。そんな折、農園の近くで人が虎に襲われる事件が多発する。
「犬のキャンプ」「片袖」と同様、強い感情が獣の姿をとって体外に現れる……という話。ラストも同じような感じ。重苦しい密林と、ノーマンたちのどこか妙な言動・風体が合わさり、異様な雰囲気が立ちあがる。……が、分量の割にまわりくどい気がしないでもない。

「La Mauvaise Riche」
語り手の「わたし」はジュラ山脈のいとこの家に滞在していた。いとこの娘イジーは近くに住む悪名高い老婆コービヤと親交があり、いとこと妻はよく思っていなかったが、老婆が亡くなっても墓に花を供えたりしていた。
老婆と生前に交わした約束を破ったために(というか破らざるをえなくなった)老婆の怨念(?)が甦る……という短篇、すぐとなりにいた娘が老婆に変貌するところはなかなか恐ろしい。

「The Stranger」
モアランド大佐はかつて恋をしていた婦人の見舞いに来ていた。そこへ妙に背が高い男がやってくるが、「また来ます」という言葉を残して彼は消えてしまう。
件の婦人は奇跡的に回復し、大佐はやがて彼女と結婚して幸せな日々を送っていたが……
何となく察せられるが、謎の男は死の使いみたいな存在ぽい。もちろん恐怖もあるんだけど、同時に死によって愛する者と永遠に添い遂げるという暗いよろこびも描かれている。

「Lock Your Door」
ラジオ怪談。
勇敢な婦人であるジェンキンスは、寝る前に部屋に鍵をかけることを習慣としていた。ある夜、列車が荒野の真ん中で脱線してしまったため、駅のポーターに教えてもらった家に泊まることになる。すると誰もいない部屋なのに「鍵をかけなさい」という声がしてきて……
無口で不気味な家の主人、無人の部屋の声など不穏な雰囲気には鬼気迫るものがある。ぞっとする話ではあるけど、主人公の婦人が気丈かつ勇気凛々なのであまり湿っぽくならないのもいい。

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