モアナと伝説の海がめっちゃ面白かった

ここ数年、ディズニーの3Dアニメがとても面白くて黄金期を迎えてるなと思う。

もうひとつのここ数年の傾向として、個人的にディズニー関係なく社会派のアニメが妙に多い傾向にちょっと飽食しており、モアナはそんな自分に直撃するストレートな冒険活劇だった。

モアナはいうなれば神話であり、というかまんま神話をエンターテイメントに仕上げた作品だ。(以下ちょっぴりネタバレあり)

まずストーリーについて。

物語の冒頭で世界の成り立ちが語られる。世界を生んだ神テフィティがおり、そのテフィティの心を半神マウイが奪ってしまったことで世界は闇に包まれる。マウイもまた、大地の神テカァに襲われた際にテフィティの心を失って彼自身どこかに消えてしまう。そして千年後、その物語を聞いて海に憧れるモアナはテフィティの心を返しに行く者として海に選ばれる。

このあたりでもう等身大の女の子の生活や恋の話なんて全く描く気がないのがわかる。そうだ海に出て冒険しろ!というストーリーだ。でもその中にきっちち普遍的なドラマは入っていたりする。

モアナは村の次の長という役目がありながら、島の外の海に憧れる。モアナは村に選ばれた人間でありながら、海に選ばれた人間でもある。そんなモアナが村を危機から救うため、海への旅に出る。しかし海はモアナにいくつもの試練を課す。モアナはそれを乗り越えていき、その中で本当の自分を見つけていく。あまりにもストレートな自分探しのドラマだ。

そしてもう一人の重要キャラであるマウイ。プロローグでは蛮勇の超人としかわからないマウイであるが、本編に登場したことでその本当の人間性が明らかになる。彼の登場時のミュージカルシーンは一応Youtubeにも英語版が公開されているが、出来れば先に見ないで是非本編で見てほしい。これは彼が過去の失敗から立ち直るドラマでもある。あんまりな外見のキャラだが、実際に動いてるのを見るとあの巨体で縦横無尽に飛び跳ねて打開していく姿がとてもかっこいい。まさに半神。

シンプルに魅力的なキャラクターがまっすぐなドラマを展開し、観客が満足するまできっちりと描き切る。シンプルゆえに極めて難しいことなのだけど、きっちりやりきっている。すごい。

アクションについて。

映像が見ていて気持ちいい。海に出てからは迫力の映像でどんどん物語が展開していく。ここらへんはテンポとリズムで展開するディズニーアニメ的な手法というよりはアクション映画っぽい。というか「アクションの連続で物語を描く」という発想がかなり「マッドマックス 怒りのデスロード」っぽい。ネットでよく海のマッドマックスと言われている理由はこのあたりだと思う。インタビューを見る限り実際意識してるらしい。中盤で割とそのまんまなシーンも出てきて笑える。ただしマッドマックスほど狂った構成はしていないので、普通にミュージカルシーンはガンガン入るし人間ドラマのパートもある。

もうひとつ大きな影響を感じたのは宮崎アニメ。これもインタビューで言及されていた。「海が意志を持って動く」とか「霊的な動物が登場する」というあたりの映像表現は確かにかなりそれっぽい。そもそもモアナで描かれる神話の世界はポリネシア神話あたりであり、自然と神がかなり近い世界観らしい。おそらくアニミズムを映像化するために宮崎アニメの手法を参考にしたのだと思う。

その他、どこか「ウォーターワールド」っぽい船の爽快感、「タイタンの戦い」っぽい壮大さなど、ディズニーアニメを見ているというよりアクション映画を見ている感覚に近い。(あと中盤以降の敵との戦いが妙にダークソウルっぽい)でもディズニーなので死人は全然出なくて、そこらへんのバランス感覚も上手い。

ラストバトルではアクションと積み重ねたドラマが結実してモアナとマウイが海と空を駆けて大暴れ。ディズニーアニメとしてそれでいいのかはともかくテンションは上がりまくった。(なおマウイの鳥形態がラストバトル以外そこまで活躍しなかったのがちょっと不満)

高い塔といういかにもなロケーションに立ったモアナにマウイが「歌うなよ」と言ったり所々古いディズニーアニメをネタにしてる所があったりして、この作品自体かなり大人向けに作られてる感じがする。


最近どの作品もストーリーがどんどん社会派になったり世の中に等身大すぎるキャラクターになったりして、社会情勢とか背景とか余計なことを考えずに見れる奇を衒わない物語に飢えていたので久々にまっすぐな物語が見れてとても満足だった。

「モアナと伝説の海」、ストレートな冒険活劇が見たい人はぜひ見に行ってほしい。

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