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STEAM化ごんぎつねーごん生存ー復刻

小学校4年生の国語で習う、国民的物語「ごんぎつね」。
兵十氏が「ごん」を火縄銃で撃ち Bad End で終わる悲哀なストーリーで…

という感覚に陥りがちとなりますが、よく読んで見ましょうね。
こだわりの「ごんぎつね」ラストシーン。
(フルストーリーを読みたい方は、青空文庫でどうぞ。こちら

"兵十は立ちあがって、納屋にかけてある火縄銃をとって、
 火薬をつめました
 そして足音をしのばせてちかよって、今戸口を出ようとするごんを、
ドンと、うちました。ごんは、ばたりとたおれました。
 兵十はかけよって来ました。家の中を見ると、土間に栗が、かためておいてあるのが目につきました。
「おや」と兵十は、びっくりしてごんに目を落しました。
ごん、お前だったのか。いつも栗をくれたのは
 ごんは、ぐったりと目をつぶったまま、うなずきました。
 兵十は火縄銃をばたりと、とり落しました。
 青い煙 が、まだ筒口から細く出ていました。"

ラストシーンの描写は、
「ごん」が撃たれる    ←記述されている
兵十氏が「火薬を詰めた」 ←までは記述されている
ですが、
弾を込めた
とは、一言も書いてないんですよ!

ですので、これまでの学校教育の国語では「ごん」は銃創を負い、流血しながら死んだものとして解釈されがちですが、杉下右京さんの言葉を借りれば、「僕としたことが!」な感じです。

・江戸時代(新美南吉原本より)には、農民が武器を有することは御法度。
 しかし、猟には特別に所持や利用が許可されていた。害獣を脅すための「脅し鉄砲」もあった(実弾禁止)
 脅し鉄砲用の火縄銃は当時「四季打鉄砲」とも言われ、場所はごんぎつねの舞台とは違いますが、所持許可願いが、国立歴史民族博物館に、江戸期の「四季打鉄炮願「乍恐以書付奉願上候」(猪鹿威しにつき四季打鉄砲所持願)が所蔵されてます。
https://khirin-a.rekihaku.ac.jp/chibaumachino/sab-36)
 俳句の季語にも「脅し銃」と季語があるくらいです。

・銃に詳しい方ならば、当時の火縄銃は、先込め式で、仮に「火薬を詰めた」の表現を「弾込めした」と同種の意で表現したとしても、先込め式の火縄銃で、短時間に発砲準備して、至近の射撃対象に向けての俯角での射撃は素人には困難です。

詳しくはこちらから。「ごんぎつね」と火縄銃
https://www.steam-library.go.jp/content/137

・ただし、納屋にいた兵十氏(鈴木三重吉の編集の粗さのおかげで、物置と納屋が別々になっていますが、ここでは兵十氏が納屋にずっといたと仮定しています)。キツネに気付き、火縄銃で撃とうとします。
 火縄銃発砲までのシーケンスを考えると、

「火薬詰め」(弾込め)〜「火皿に火薬を盛る」〜「火種付き火縄を差し込み」〜「発砲」

までの時間、「ごん」が戸口に入って、土間に栗置きダッシュをかけるまでのあまりにも短い時間に行われており、兵十氏は相当な手練れである可能性が高いので、俯角での発射は可能かもしれません。
 しかし、「ごん」に気づかれぬよう、俯角をもって発砲したとしても、小さめのキツネであることを考えると、的が小さく命中する可能性は低いはずなのです。

詳しくはこちらから。「火縄銃の撃ち方」
https://www.steam-library.go.jp/content/137

 兵十氏が専業猟師ではないよう(他の村人と話をする際、必ず職業+名前ですが、兵十氏は最後まで職業不詳)なので、不明ですが、やはりかなりの手練れのようです。

仮説1(空包の場合)
・ただし「発砲した場合、空振によって穴があく」くらいの威力は空包といえどあったようなので、命中しなくても、「ごん」に傷を与えた可能性は否めない。
【参考映像】13秒くらいから。音でかいので注意。
 俯角では射撃されていません。
 https://www.youtube.com/watch?v=luZ30y0DBO8

仮説2(実弾入りの場合)
・兵十氏の火縄銃取り扱い技量が優れ、実弾(おそらく鉛製の丸球)が至近距離で命中した場合、うなづくことなど不可能で、キツネは即死している可能性が高いこと。

 鈴木三重吉本(教科書原本)だと、発砲後に「ごん」はうなづいていますが、新美南吉原本だと、
「権狐は、ぐつたりなつたまゝ、うれしくなりました
というドMなキツネに化けてしまいます。

 ここの解釈、うなづいたように見えるのは、死後硬直のタイミングと兵十氏が発した独り言のタイミングがシンクロして、うなづいた反応と勝手に人間側が解釈したのかもしれません。

 いずれにせよ、発砲された後も、新美南吉・鈴木三重吉の両者の版ともに、撃たれた後も意識はあったようです、「ごん」。

 さて、空包で至近で大音響などの突然の外的刺激で脅された場合、キツネやタヌキなどはいかがなるか。タヌキなら簡単です。「タヌキ寝入り」という言葉があるように、ばったり倒れます。
 ごんがしたのは「キツネ寝入り」と解釈することも可能です。
(追記:「タヌキ寝入り」を英語で言うと Fox Sleep だそうです。)

(北海道でキタキツネが夜間に自動車のハイビームのライトを見ると、硬直する性質があり、それで自動車にはねられるようです)
 このあたり、CiNiiやらJSTAGEなどで探したのですが、エビデンス不足です。が、仮定として、荒唐無稽なものでもないので、この説で続けます。

 そしてそして。両者の版ともに、

 流血の記述はありません


「うつ(平仮名ですがたぶん「撃つ」でしょうね)」の語を勝手に解釈して、なぜだか実弾が命中して流血して死ぬという認知バイアスの可能性を検討もせず、この正解でもない仮説のみを児童に押し付けて兵十氏の心情を類推させる非常に酷な授業を、
・文部省や文部科学省の教育課程課も、
・国語教育学者も、
・児童文学者も、
・教科書会社も、
・これまで教えていた/いる教師も、
・児童(当時)も、
・保護者も、
誰も疑うことなく、日本の学校教育は延々と続けてきた/いる可能性があります。
 「ごん」を死骸と化すことで「ごん」や兵十氏の心情を類推させる…。

 なんで、Bad End 一択なんだよーーーーー!

 あぁ、大人の私は、この授業に耐えられない…。


 ラストシーンをさらに解釈すると、まずは、銃撃のあった位置関係。
(鈴木三重吉版だと、物置と納屋の2つがありますが、同一のものとして解釈します)

1. 兵十氏の空包による威鉄砲(四季打鉄砲)の発砲行為で、「ごん」は「タヌキ寝入り」ならぬ「キツネ寝入り」状態に。(死んでない)

1.5オノマトぺとしては、火縄銃の発砲音は、現代人ならば「バン」あたりで表現するところ、ここでは「どん」。
よほど口径の大きな火縄銃(射撃はさらに難しくなるし、発砲までの時間を要します)であったか、通常は「バン」あたりの発砲音がする火縄銃に何らかの異変があったのかもしれません。(後述4)

2. 兵十氏の発した音声という外部刺激により「ごん」が耳を動かすor危険を察知して動こうとしたが動けず、呼吸するために首を動かしたのを、勝手に「うなづいた」と作者側なり兵十氏が勝手に解釈した。

3. 兵十氏はいっときの感情に任せて、
 ⑴ 高価な火薬をキツネ威しのために使用してしまった
 ⑵ 火縄銃破損の疑い(後述4)もあり、とんでもなく修理費が必要となる。
   または買い替えが必要となる
 ⑶ 村の中で昼間に、事前通告もなくキツネに発砲してしまった
  (おそらくお咎めがくる)

やっちまった

という兵十氏の後悔が、火縄銃を取り落とすという行為に繋がった可能性がありますね。

4. 空包でも、しっかりと火薬ごめをしていなかった、火縄銃のメンテを怠っていたが故に、発砲後に火縄銃が破損し、煙がずっと出ていた。
(火縄銃を撃った後、銃口から煙が出続けることは異常の可能性が高い)

5.発砲時、家の裏口から出た「ごん」を納屋の外から撃ったため、発砲煙に
 陽光が差込み、レイリー散乱によって、煙が青く見えていた。
 (レイリー散乱はこちらで
       https://www.steam-library.go.jp/content/137 内資料
 「煙と色の関係」)

この後、「ごん」が兵十氏に捕獲/保護されたのかどうかもわかりませんし、兵十氏が火縄銃を召し上げられたのかもわかりませんが、「ごん」が死んで終わるというBad End は確率的に少ない可能性も出てきました。

「おっ母死すとも、ごんは死なず」

 板垣退助先生の言葉を借りればこうなりますが、
文章をしっかりと読み取っていれば、違和感に気づくはずなんですよね。
さらに「ごん」が死なないことで、その後のストーリーが想像できたり、広がって面白いはずなんですよね。
(子どもたちやその保護者世代は、ゲームでルート分岐や複数のEndがあることに慣れてますから、相性はいいでしょうね)

 みなさんが学校で習って、もしかするとトラウマになったかもしれない、
「ごんぎつね」のラストシーン。
 火縄銃から辿っていくだけで様々なルートEndが見え、本当に面白いわけです。
(火縄銃って、長篠の戦いで、小6社会で出てくるんですけど、誰ももう「ごんぎつね」を思い浮かべることはなかったのね、きっと)

火縄銃について詳しいことは、経済産業省「STEAMライブラリー」に情報が詰まっています。


「ごん」は生きていたんだ!

 から始まる二次創作。
 Creativeな国語になると思いません?

 さて、この Bad End 化の単一ルートのフレームを作って実践し、拡散しやがったのは誰だ?という話。個人的には、これまでずっと、小学生にトラウマ植えつけやがった張本人たちは誰だ?ということは、大変に興味深く思っている次第です。

 まずは何より、「ごん」は生存していた!
 その可能性が高いことを、科学的に推測できてしまいました。

 いやはや。
ごん、お前だったのか。生存しているヒントをくれたのは

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