微罪


この街で見上げる空はいつも不機嫌で、私のことを歓迎なんてしない。
これはただの錯覚なんかじゃない。
街の空気から疲弊していて、やさぐれている。おかえりなんて言ってやらない。そんな匂いがするから、間違いじゃない。気持ちばかりの街灯も逆にこちらを小馬鹿にしているようで気に入らない。

夜、私の家から半径200mで一番明るいのは自動販売機の光で、これがまた不自然に明るいところが、「お前らにはこれくらいで十分だろ」と嘲笑われているようだ。しかし貧しい人間の中で成金が1人でもいたら多少は浮いて見せるが、結局その成金に人が集まるように、夜遅くにその自販機の前でダラダラと群れる若者がいるのもまた事実だ。彼らも東京だったらスタバにいるはずなのに、コーラを片手にガードレールに腰掛けている自分に不本意な部分を認めているのだろうか。それとも、抗うことなどしないのだろうか。
都会に生まれた子を妬むには十分なくらい田舎だけれど、かといってネタになるほどののどかさではなくて、愛もなければ憎まれることさえ知らない、要するに退屈な街だ。

私はあと何年耐えることができるだろうと考える。私は日常に毒されている。自由に対する幻想ばかりが甚だしく膨れ上がり、ひどく混乱している。私が間違いを犯すとすれば、それは焦りから生まれるものだ。いったい
何に急かされているのかさえ、私は知る由もない。知らないでも良いだろう。
もういい。明日には忘れてる。