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週刊DL短編集『"こいばな”と怖い話』

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「こいばな」という言葉をいれなければならないというお題に、さらに怖い話で短編を作るというしばりに同時に挑戦。
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#小説

虹がかかる日 by 吉田真澄

 電車と路線バスを乗り継いで、関電トンネル電気バスに乗った。  長くて薄暗いトンネルを駆動用モーターとリチウムイオンバッテリー4パックを搭載した電気バスはゆっくり進む。  車内は満席で、その目的地は観光放水が始まったばかりの黒部ダム。  80人ほどの観光客がバスから降り立ち、目の前の看板を見ている。右に行くと220段の階段を上って、最も高いところから黒部ダムを一望できるダム展望台に。左に行くと60段の階段を下りて、ダムのえん堤に直接出ることができる、と書いてある。水をせき止め

怪談・人面魚 by 網焼亭田楽

毎度バカバカしいお笑いでございます。 最近は何でもかんでも科学というもので判断してしまうような世の中になってまいりまして、特にAIが出て来てからというもの、この人工知能に頼り切りになってしまっているようでございます。 「おい、よたろう」 「何でございましょう、だんな様」 「おまえさん、最近変なものを見たって言うじゃないか」 「ああ、人面魚のことですか」 「何だい、そのジンメンギョって」 「だんな様は見たことないのですか。人の顔をした魚のことなんですけど」 「そんなバカな。ま

アラサーたちの午後 by 御美子

とある会計事務所の休憩室。 仲良しアラサー3人組が、食後のお茶を飲みながら、お喋りに花を咲かせていた。 しっかり者の絵理と少し頼りない由香は学生時代からの付き合い。そして同僚の美菜だ。 「絵理、最近お肌の調子がいいみたいね。男でもできた?」 「まあ、そんなとこかな」 「聞き捨てならないわね。どこで知り合ったのよ。私にも紹介して」 「絵理の恋バナ? 聞きたい。聞きたい」 「マッチングアプリで知り合ったのよ。会計士に興味があるんですって、由香と美菜も登録すれば?」 「マッチング

ぼくの明日 by やぐちけいこ

その言葉だけが記憶に残ってそれがいつの出来事で誰から言われたか全く覚えていない。 もしかしたら自分の妄想? 夢? ずっとずっと心の中に引っかかって抜けないのだ。 普段は忘れていても急にこの言葉が脳裏によぎってくる。 一度思い出してしまったらしばらくこの言葉に呪縛されたように頭から離れない。 そして今この時もこの言葉に縛られている自分がいる。 「また明日会いに来るから待っててね」 そう優しくも、悲しくもとれる感情がこちらに伝わってくる。 誰からの言葉だったろうか。何故自分は覚え

知らない隣人 by Miruba

帰宅したばかりの私は、急いで靴を脱ぎ、夏日続きですっかり熱気のこもった寝室と居間のクーラーをつけて回り、それからようやく鍵をテーブルの上に置き、肩にかけていたバックを椅子の上に投げ置く。 「あっついな~汗ビショビショだ」そのまま脱衣場に行き洗濯網に今脱いだものを突っ込みそれを洗濯機に洗剤ボールと一緒に入れてスイッチを押す。 頭からシャワーを浴びて一日の汚れを流す。 部屋着に着替えて、冷蔵庫からビールを出してコップに注ぎ、一気に飲み干す。 「あ~~~美味しい! たまりませんね