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三題話の大研究2023 冬-春

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「あれ かえる 推し」の3つの単語を使って、小説やエッセイなどを創作します。裏のテーマとして過去も入れないとならない、超難しい三題話にドリームライブラリの作家陣が挑みます。
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2024年1月の記事一覧

推しエルの巡礼 by 吉田真澄

 数年前に年賀状を出すのをやめた。 それまでは11月に入るとパソコンを駆使し、どんな絵柄にするかとフリー素材を探し、それに少し手を加え、そこに文字を当てはめ、年賀葉書の裏面にプリントアウトしてオリジナルの葉書にしていた。 この自己満足で作成したものを誰かに見せたい気持ちもあり、創作する一連の作業は楽しいものだった。  でも、あれ、なぜこの楽しさをやめたのだろう。  コロナ禍で外出もままならず、家にいることが多くなり時間はたっぷりあったはずなのに、だ。  貴文と連絡が取れなくな

年明けのおかまバー「しろうさぎ」by御美子

カランコロン 「オオクニ※ちゃん、いらっしゃい。やっと顔見せてくれたのね。年明け早々、日本列島大変だものね」 「そうなんですよ、ママ。『神も仏もない』なんて言われて。どうしたらいいものやら」 「神様たちも、苦労が絶えないわね」 「ふむふむ。『神も仏もない』と言われたとな」 「えっと、どちら様ですか?」 「あら、ごめんなさい。先客がいるの忘れてたわ。こちらはアレちゃんよ」 「えっ? もしかして、古事記の編纂に関わったという…」 「そう。古事記の内容を全部暗記してた稗田阿礼(ひ

わたしの推しって? by Miruba

「推し」とは、 人にすすめたいほど好きなアイドルや俳優、タレントなどを指す「応援」を意味する言葉、とある。 動詞「推す」からだろうから、推薦するという意味になるだろう。 90年代後半にモーニング娘のアイドルファン(アイドルオタク)の間で流行り定着した言葉だという。 一般に広く使われ始めたのは、2010年に発表された、AKB48の「チームB推し」という楽曲が、きっかけらしい。同年流行語大賞で「推しメン(メンバー)」もノミネー トされた。 現在ではアイドルや俳優など芸能人だけ

推し友 by 夢野来人

昔々、あるところに動物好きのタケシという少年がいました。タケシは犬や猫にとてもなつかれていました。 でも、最近のタケシはいつも森で見かける不思議な『あれ』に夢中だったのです。その『あれ』は風に乗って村に時折現れ、子供たちの心をわくわくさせてくれます。 タケシはその姿が見えると、どこからともなく冒険心が湧き起こるのです。 「あの物体が空に浮かんでいるのを見ると、何だか心が躍るんだよな」 その物体を見かけた時には、タケシはその物体が消え去るまで、ずっと見つめているのでした。ある