頬粘膜がん 236日目 本を持つヨロコビについて


 頬粘膜癌 236日目。

 血圧 104-72 mmHg
 血糖 - mg/dL (朝食前)
 酸素 99 %
 脈拍 75 拍/分
 体温 36.6 ℃
 体重 68.3 kg

 体重はここ3日感横ばい状態。維持を続けている。
 口の強ばりや痛みについてはあまり改善はみられない。もしかしたらやや増しているかもしれない。ただ、粘膜は多少ではあるが再生されていると思われる。熱い物や辛いものに対する耐性が少しだけ増したと思う。粘膜の再生がすすむとともに、唇の引き攣れみたいなものが少し強まって喋りにくいし、飲み食いしにくくなっている。
 飲み物が左唇端から零れそうな感じが常にある。うがいをすると左唇端から水が噴き出すので手で口を押さえながらうがいしている。
 普通に歩いていると口呼吸ぎみになるのだが、その時によだれが零れそうになるので少し焦る。まぁ、口周りの状況はまぁそんな感じ。良い所もあれば悪いところもある。

 さて、今日は背広の受け取りに午後から出かけたわけだが、引き渡し時間よりもずいぶん前に到着してしまったのでどうやって暇を潰した物だろうかと考えた末に、久しぶりに本屋に立ち寄ってみた。

 本屋に来たのは久しぶりだった。なんせ、考え無しに本を買わなくなって久しい。今はもっぱら電子書籍ですませている。amaoznのKindle Unlimitedというサービスに加入していて、雑誌のいくつかや興味がある本は流し読みがいくらでもできる。小説なんかは少ないので物足りない部分はあるが雑誌を数冊読めば元は取れている。

 欲しい本は電子本で購入することが多いがたまにamazonで紙の本を購入することもある。だから、本屋に行くことが殆どないわけだ。もう4~5年ちゃんと本屋に来たことがなかったんじゃないだろうか。僕がいう”ちゃんと”本屋に行くというのは、明確な目的があるわけじゃなくてそこそこ時間があって暇潰しに・あるいは本屋を散策するという目的で行く本屋巡りのことである。

 欲しい本が決まっていて購入にいくような訪問の仕方は”ちゃんと”していない。それは本屋を楽しむ事にはならないからだ。僕にとっての本屋っていうのは”アミューズメントパーク”のようなものなのである。土産のビスケットを買うことが目的でディズニーランドには行くのは本来の目的と違うってのと同じ事だ。本屋に行って、あれこれ棚を見て歩いて、雑誌をのぞいたり、絵本なんかを見てみたり、ビジネス書のコーナーで今時のトレンドを感じたり、意外な本に出会ったりしてワクワクしたり。そういうのが本屋の楽しみかたなのである。ちゃちゃっと用事を済ませて帰るような所ではないのだ。時間を浪費することを楽しむ場なのである。(人によるけど)

 ってわけで久しぶりに楽しみのために本屋を訪れた。やばいな。めっちゃ本が欲しくなる。これが日常化すると家の中に本があふれてしまうのである。一時期は本棚2本分がパンパンになるくらいまで本をため込んでしまったので、危険であると判断し(金銭的にも危険なのである)僕は泣く泣くアミューズメントパークを本屋から図書館に変更したのだった。その後、電子書籍が一般化するのに合わせて電子書籍に徐々に移行してきたわけだ。

 で久しぶりに本屋に行くと、欲しい本が山ほどあるわけだ。そりゃそうだ、本屋だものw

江戸川乱歩と名作ミステリーの世界(5) 2023年 4/26 号 [雑誌]

Amazon(アマゾン)

1,250〜4,680円


 こんなのを見つけてしまった。

 ディアゴスティーニのシリーズみたいなものなのかな。江戸川乱歩の著作をちょっと凝った装丁の単行本にして販売するシリーズだ。クラシカルでなんとも言えない素敵な色味の表紙に仕上げてある。

 ”パノラマ島奇譚”だ。江戸川乱歩のミステリーのシリーズの中では一番好きな本だ。自分と瓜二つの人間にすり替わって、莫大な資産を使って自分の夢だったパノラマ島を作り上げる主人公。・・・・・・妻に自分が本当の夫ではないと見抜かれて・・・・・・みたいな話だ。

 実は小学校の6年生の頃だったと記憶するが少女漫画で高階良子という作家の”地獄でメスが光る”というのを読んだ。どうやらこの漫画がパノラマ島奇譚をモチーフにしているという事だったと記憶している。それがもとで僕は江戸川乱歩の小説にのめり込んでいくことになるという記念すべき漫画と記念すべき小説なのである。漫画のほうはストーリーは全然違う。人里離れた無人島で頭のいっちゃった科学者が見にくい佝(せむし)のいじめられまくっていた娘を超絶美人に改造してしまう話である。すごく切なくていい話なんだ、これがw

 で、このパノラマ島奇譚、もうちょいで買いそうになるのをぐっと堪えて帰ったのだ。他にも乱歩氏の作品が赤や藍色の素敵な表紙で数冊復刻されていた。・・・・・・欲しい。読まなくても欲しい・・・・・・。これが本の魔力だ。

 ちょっとでも気持ちを持って行かれたらその本を買いたくなってしまう。手元において愛でたいわけである。本棚に並べるとか、書き物机の端に置いておくとか、それだけで楽しいのである。満たされるのである。本棚に並んでいる本の背表紙を撫でてみたり、机になんとなく置かれた本を持ち上げて、ページをめくってみたり。紙がめくれる音を聞きながら文の一節に目を通してみたりすると最高なのである。

 もちろん中身を読む事も楽しいにきまっているのだが、読まなくてもそこに本のある風景がすでに楽しい。手触りが楽しい。なんなら紙とインクの匂いだって楽しいのだ。何なら古書店で買った日焼けして色あせた背表紙の洋書だとかも趣があっていい。

 本棚に向かって手に持った本の背表紙に指をかけ、向こう側の下端を少し持ち上げるようにして本を本棚の本と本の隙間にそっと差し入れる。持ち上がっている向こう側をゆっくりと降ろしたあと、まだ出っ張っている本の背表紙をゆっくりと押して込もうとしたときに、本と本がすれあって聞こえてくるほのかな音に得もいわれぬ愉悦を感じてしまう。それが愛書家という生き物なのである。

夕日の差し込む書斎

 図書館に魂を売って、愛書家を辞してしまった自分ではあるがパノラマ島奇譚の装丁を見るに当時のほんのりとした楽しみを思い出してしまった。

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 これ、移動図書館なんだって。最高じゃん。


 今日もいい1日であった。


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