頬粘膜がん 171日目 やりたかった事をやりなさい2


 頬粘膜癌 171日目。

 血圧 116-81 mmHg
 血糖 - mg/dL (朝食前)
 酸素 98 %
 脈拍 72 拍/分
 体温 36.3 ℃
 体重 73.9 kg

 小学校1年生の時に僕は将来ハイヤーの運転手になりたいと作文に書いていた。実際にはハイヤーの運転手にはならなかったし、自動車免許も持っていない。車の運転とはまったく縁がない。残念な事だ。
 小学校の高学年の頃にちょうどスーパーカーブームというのがやってきた。ランボルギーニやフェラーリ、あるいはポルシェというスポーツカーが人気を集め、当時の少年達は自分はどの車が好きなんだとか、最高時速が何キロなんだとか、そういう事に夢中になっていた。僕の住んでいる北陸の田舎にもスーパーカーブームは平等に訪れて、市の大きな展示館に高級なスーパーカーが何台も展示されて、入場料を取って展示会が開かれたりした。
 僕も父親に連れられてスーパーカーを見に行った。
 ランボルギーニカウンタックLP400、フェラーリ365GTB、ポルシェ911ターボ、ロータスヨーロッパ、ランチアストラトス(これはぶっちゃけスーパーカートはちょっとジャンルが違うんじゃねと思わなくはないが)などが展示されていたし、A4サイズのブロマイド写真を何枚か買って貰って宝物にしていた。
 そう、僕はそれなりに車の大好きな少年だった。勿論スカイラインのプラモデルも作ったw 僕の世代は箱スカじゃなくてケンメリだ。シルバーのケンメリがプラモ屋の棚に入った時はすぐに欲しかったが小遣いが足りなくて実際に買えたのは数ヶ月後だった。
 実際には小学校の1年の頃に、先天性の白内障の手術を両眼受けており、学校の座席はいつも一番前だった。絵に描いたようなびん底メガネで矯正視力が当時で0.3ぐらい。全然遠くは見えないので球技を中心にスポーツはさっぱりだったし、そもそも黒板が見えてないので勉強もさっぱりだった。まぁ最終的には盲学校に進学して鍼灸師として社会人になっていく。
 さて、車好きの少年は小学校を卒業する前にはすでに自分が車の免許は取れないんじゃ無いかと言うことをなんとなく感じ、中学の頃にはそれは確定的な事実として受け止める事になる。車やバイクは自分には縁のない世界だと分かっていても、憧れは憧れでありつづける。中学や高校のころも車のプラモデルはたまには作っていた。コスモAPだとか、ベンツのSLとか作ってたなぁ。
 で、まぁ医療はそれなりに進歩はしたんだが車の免許は取れるようにはならなかった。それからすでに30年あまりが過ぎて50代半ばである。
 車の運転がしてみたいなぁと、今でも思ったりする。勿論、現実的に無理な事もわかっているし普段は”もしも、車に乗れたらもっと便利なんだけれど”みたいな事を考える事もない。無い物ねだりをしても気持ちが良い事がないのは知っているのでそういう無駄な思考はしないようになっている。
 それでも、ドライブゲームなんかは今でも好きで、車の免許もないくせに手を出してしまうのだ。プレステは持っていないのでGT7なんかはやったことはないんだが、もしプレステを持っていたらきっと買っていたことだろう。yoububeの所ジョージさんの動画とかでGT7やってるのを見ると少しうらやましく思ったりする。
 という訳で、今日は車の運転をしてみたいという小学生の頃からの憧れを現実にしてみようという事である。
 腹が減っては戦さは出来ない。という訳で、温泉施設で午前から風呂三昧して昼食にパンとコーヒーをいただく。あんぱんは昔は殆ど食べないパンだったんだが、病気になって味覚がおかしくなってからはまともに味のする食べ物として食べやすいものの一つになった。

 昼食をすませて、いざ目的地へ。
 ドライビングシュミレーターを扱う専門店が去年あたりに開業しているらしいのをネットで見つけてしまったのだ。まぁ、実車はさすがに無理なのでここは本格ドライビングシュミレーターで我慢である。法律的には私有地であれば実車に乗っても無免許運転にはならないがそんな広大な土地を持っているわけでもないし、そういう事ができる施設があるとも聞いた事がない。今日の所はドライビングシュミレーターを体験してみよう。
 件の施設に行くと、そこにはシュミレーターといわれる筐体が3台設置されていた。マルチモニター3画面でハンドルやシフトレバーがあり、ドライビングシートが組み合わされた様子は高級なゲームコーナーのような感じがしないでもない。7軸のアクチエーターを組み込んだ筐体はハンドルやアクセル、ブレーキの操作に合わせて前後左右に微妙に動くように出来ている。ハンドルもカーブの時やハンドルを切った時にはその動作に会わせてハンドルに返る動きがハンドルの重さや振動になるという仕組みだ。
 車を選んでコースを選んで、さぁレッツゴー。ってわけで30分ほどレースコースをロードスターで走らせて貰った。多分、初めてなのでマニュアルは無理だと思ってオートマでお願いした。本当はクラッチありでHパターンのシフトチェンジをしてみたい気持ちはあるんだが、やったことがないのにいきなりクラッチ操作は多分無理だと思ってオートマである。
 壁に激突はしなかったがスピン数回。第一コーナーがシケインになっているんだが、どうにもこのシケインが綺麗に走れなかった。コースアウトしまくりである。減速が足りなくて曲がりきれなかったり、カーブの途中でアクセルを早く入れすぎてしまってオーバースピードになってしまったりとか、まぁゲーム脳になっているのでスピード出しすぎなんだろうね。目の前の景色はかなり綺麗でリアルになっているんだろうけど、でも僕の目からみてゲーム画面と思えるくらいにはゲーム画面だ。
 もしかしたらシュミレーターのソフトによってはもっとリアルな画面だったり、今時だからVRなら没入感がもっと違うのかもしれない。それでも、きちんと調整されたダイレクトドライブで10ニュートンぐらいの力が出るハンドルや、きちんと調整されてフルブレーキするにはかなりしっかりと踏み込まなければならないペダルなんかは操作感がなかなかリアルなのかもしれないと思わされた。
 最終コーナーをフルスロットルで加速しながら立ち上がりスタートラインを最高速で駆け抜ける感じはなかなか気持ち良かった。ちょっとわくわくした。
 もっともっと、リアルなシュミレーターなんかも体験してみたいと思ったし、機会があればサーキット走行を助手席で体験できるようなものがあれば体験してみたいものだ。
 ほんの少しだけど、やりたかったことをやりなさいという僕のテーマは達成できたんじゃないだろうか。少なくとも、パソコン画面のゲームをしているよりもリアル体験だったろうしねw

 実は、中学の頃に親父の仕事の手伝いのバイトをしたことがある。親父は土建会社の下請けの仕事をしており、ひとりで請け負った小さな工事を一人で、あるいはその時々に必要な人を雇っていろいろやっていた。
 で、親父と僕の二人で田んぼの側溝を作って田んぼの間の砂利道を舗装路にしたりとかの仕事をしたことがある。2tのダンプに砂利を積んで持ってきて、それを小さなショベルカーでならして道路の下地を作ったりとかね。
 その時は、ダンプの取り回しや、ショベルカーの操作なんかをさせて貰ったりした。どっちも勿論僕は無免許だし、当たり前だが中学生くらいの子供が操作しちゃ駄目なんだろうけれど、完全に通行止めされて人も車も入ってこない現場であるから安全は最低限担保されてはいたと思うが、本来はアカンやつだ。もう40年位前の話だから時効ということでよろしく。
 その時に、ダンプは1速とバックで場所を移動したりみたいな運転はした。この時の方がドキドキしたのは確かだ。シュミレーターにはないリアルがあった。(そりゃモノホンなんだからリアルでしょw)

 もっと小さかった頃。僕が小学校の中学年ぐらいだった頃かな。親父はもちろんその頃から土建の仕事をしていた。家の前に、親父が乗っていて廃車にしたダットサンのワゴン車が1台駐車してあった。後ろの荷台に工具やなんかを倉庫がわりに突っ込んであった。ナンバーもないし、もちろんエンジンもかからない。
 こっそり、鍵を持ち出して運転席に座ってハンドルを握った時のワクワクした感じ。ギアを見よう見まねで入れ替えたり、ウィンカーのレバーを動かしたり。運転のまねごとをしたことを覚えている。あれは本当に楽しかったなぁ。後で凄く怒られて大変だったけれどw

 僕の中には、多分その時から変わらない車への憧れがそのまま残っているのかもしれない。今日はそんな憧れをすこしだけ実現させる経験だったかもしれないね。

 帰宅途中にコンビニでカフェオレを買った。スティックシュガーをしっかり入れて、シナモンシュガーもちょっと入れて。甘めのカフェオレを飲んで今日の体験は終わりである。

 今日もいい1日であった。


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