父の戒名を考えた話

先日父が亡くなり、両親が買っていた納骨堂のある寺の住職に会いに行きました。父の葬儀でお経をあげてもらうためです。

事前に戒名を付けるか確認されていました。どうやら付けない人もいるらしいのですが、父が付ける意思を持っていたことを知っていたので、迷わずお願いすることになりました。

私の勝手なイメージですが、寺は坊主丸儲けというくらいですから、何でも課金制のイメージがありました。実際祖母の戒名を付けた時は何十万も払った話を父から聞いた記憶がありました。

これから我が家の菩提寺となるこの寺の住職は、30歳くらいの若い方。どうやら去年先代が亡くなり継いだばかりとのこと。

寺に着くと住職は一枚の紙を見せてくれました。そこには生前父が書いた自分についての作文が記されていました。

幼い頃、疎開したこと。
頑張って働いていたこと。
結婚したこと、等。
娘が生まれたことは書いてません。
えっ、なんで。。。?

丁寧な字で、自分について冷静に書き綴っていた父。こんなところでも父の真面目さが分かります。

さて、どうやって付けるのだろうと戸惑っていると説明をしてくれました。

道号、戒名、位号の3つで分かれていて、位号は宗教上決まった文字が入ること

道号には生前の行いを、戒名には故人の性格などを表す言葉を入れること

生前の名前を入れる場合には、道号に入れることが多いこと

菩提寺の住職は戒名を付けるのにお金は要らないと言いました。他の寺ではお金を払えば頭に◯◯院といった高尚な名前を付けることもあるのは知っているが、うちはお金を頂いてません。そもそも◯◯院といった名前は、修行を積んだ人に付ける名前なので、修行をしていないお父様に付けることは出来ません。うちはお金を頂いてませんので、お金を積まれてもそういった名前を付けません。そんな話をしました。

生前の父がどんな人だったか、どんな病気をしたのか、どんなことが好きだったか、嫌いだったか。お酒は飲んだか等ひとしきり父について尋ねられた後、一冊の辞書が出てきました。

じゃあ、考えましょう、一緒に。
住職はうっすら笑って言いました。

え、一緒に?
戒名ってお坊さんが考えるんだと
ばっかり思っていた。。。

遡れば、父は自分で戒名を付けられるらしいと話していたことを思い出した。冒頭に触れた父の作文は「宿題」と住職は言っており、本当は生前に面談をして戒名を生前に決めることにしていたんだそうだ。ただ、なぜかその面談に父は来ず、名前を付ける前に亡くなっていた。作文を出したのは10年以上前。どんな気持ちだったんだろう?

やったことのない作業に途方に暮れていると、住職はまずは父の名前の漢字から取り掛かった。すると名前にある文字の一つが、人を支える、助けるという意味があることが分かった。父らしいなと言うことになり、一文字使うことにした。

働くことが生き甲斐だった人なので、働くという意味の文字も入れることにした。

性格は穏やかで寡黙、でも好きなことには熱心に取り組む人だった。優しく、温かい人。そんな話から思いやりがあり、優しいという意味を持つ文字を二つ選び、戒名が決まった。

親の戒名を娘が決めることになった我が家。
実は母も作文を出したのに面談をしていないことが発覚。何となくだけど、終活の一環として墓を買い、葬儀屋と契約して準備していた両親だけど、いざ戒名を自分で決めるとなると気が引けたのではないかと思う。特に父は小心者だった。痛がりだし、怖がりだった。

お父さん、新しい名前が出来たよ。
お父さんに私は名前を付けてもらったけど
今度はお父さんの名前を私たちで考えたよ。

喜んでくれたかな。

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