見出し画像

娘の身体の動きや関節可動域、腱反射、側湾、リハビリの必要性などを3ヶ月〜半年に一度フォローしてくださっていた優しい眼差しの穏やかで温かな初老のSドクター。

このSドクターがいらしたから、娘は実生活に即したリハビリの必要性をアセスメントしていただいたり、普段の生活の中でどんなことをすれば良いか、何に気をつけて暮らせば良いかというアドバイスをいただくことができていました。

この病院の系列事業所でケアマネジャーとして働いていた時期もあり、このSドクターとも何度か一緒にお仕事をしました。

どの患者さんにも一生懸命で、丁寧で、穏やかな立ち居振る舞いは紳士然とされていて、大好きなドクターでした。

長年の障害者リハビリに対する功績を讃えられて厚労大臣と県知事から表彰を受けておられた先生です。


娘の、このSドクターによる半年に一度の診察が本当は9月1日にあるはずでした。

ところが、その数日前に事務長さんから『先生は急なご入院でおそらくこの先も診察はお出来にならないようなので退職されました』とお電話をいただきました。

どんなご様子なのかもわからない、もしかしたらとてもお悪いご病状かもしれない。でも聞くわけにもいかない。

とても胸がざわざわしました。

また、現実問題として、このまま整形外科・リハビリ診が中断してしまうのも困るので、紹介状をいただいて少し離れたリハビリセンターを受診することを事務長さんと院長先生にお願いしました。

その関連の書類を病院の受付にいただきに上がった際、旧知の事務長さんに『S先生にお手紙書いたらお届けくださいますか?』とお聞きしたところ、まだお荷物も置いておられるし、お渡しするかお送りするかできると思うよとお引き受けくださったので、帰宅して一生懸命思いめぐらせながらお手紙をしたため、病院の事務長さん宛にお送りし、転送をお願いしました。


先生がいらしたからいつも暖かで優しい気持ちに包まれて穏やかな雰囲気の中で受診することができたこと。

いつも丁寧に娘に話しかけながら背骨の角度や腱反射を測って下さったので、娘は先生が大好きであったこと。

いつも、実生活の中で、どんなふうにコミュニケーションをとっているのか、この子の言いたいことはどうすればわかってあげられるのか、と何度も何度も気にかけてくださったこと。

手先を使うことは何よりも大切なことなので、細かい作業をさせてあげてね、できるだけでこぼこした平坦でない道を歩くことで経験を増やしてあげてね、といつも言ってくださったこと。

いつも多動で落ち着きのない娘が、先生の診察の時はお利口に椅子に座り、時にベッドに横になり、されるがままに検査を受けることができていたこと。


などなど、挙げればきりがないくらい感謝申し上げたいことを書いて、もうお世話になれないのは寂しいですが、どうかご自愛くださいとしたためて病院にお送りしました。

事務長さんはすぐに送ってくださったようでした。

そしてほどなく我が家に1通のお手紙が届きました。

差出人に【内】の文字。

そう。先生は亡くなっておられ、奥様がご丁寧なお返事を書いてくださったのでした。

娘のワクチン優先接種1回目の折に院内で見かけて【今日はどうしたの?】と問うてくださったのが最後となりました。(娘を連れて行った夫談)


奥様にお手紙をいただいてから半月以上経った今も、まだ、お亡くなりになったことが信じられません。

それ以上に、せいぜい半年~3か月に一度の娘の受診と、数年前の仕事上のほんの少しの関わりだっただけで身近に何度も何度もお逢いした間柄じゃないのに、先生がもういらっしゃらないことがこんなにも悲しくて仕方がないことが自分でもどうにも信じられません。

いつも温かだった先生。娘の見ているものを一緒に見ようとしたり娘が心地よい過ごし方ができているかどうかを一番に考えてくださっていた先生のお顔が、物腰が、お声が頭から離れないのです。思い出しては涙が出てくるのです。

こんな突然のお別れ。こんなに淋しいとは。

ご連絡先をお聞きすることはできまいと思い敢えて病院から手紙を送っていただいたのに、奥様はお返事でご住所をお知らせくださいました。

【お返事はご無用です】と書いてくださっていたけれど…お花くらいお送りさせていただいてもいいだろうかと、心からの感謝と祈りとお送りしたい気持ちと…でも、ちょっと躊躇われる気持ちの中で今もまだ揺れています。


S先生。

私の大切な娘を、大切に大切に思ってくださって、接してくださって、優しく穏やかにいつも丁寧に関わって下さって、ありがとうございました。

心より、御霊の安らかならんことをお祈り申し上げます。


笑顔が増えるための活動をしています。 いただいたサポートは、稀少疾患であるアンジェルマン症候群の啓蒙活動、赤ちゃんから高齢者まで住み慣れた地域で1人でも多くの方が笑顔になるための地域活動の資金として大切に使わせていただきます(^^)