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「君にウケなきゃ意味がない!」

本山(高3)
真島(高3)
あい(高2)
らん(高2)
ゆめ(高2)
丸(高2)
まき(高1)
はる(高1)
たつき(高1)
林 (高1)

一場

高校の校内。怪しげな男が1人、「占い」と書いた看板を掲げ座っている。
そこにたつき、林が話しながら通りがかる。

た「なんでやねん」
林「なんやろな…もっとこうおもろくできん?」
た「…な↑んでやね〜ん!」
林「…」
林&た「はぁ〜…」
本「(身を乗り出し)何か、お困りですか」
林&た「うわっ!!」
た「いや、大丈夫です。間に合ってます」

たつきと林、そそくさと去る。

今度は丸とはる、2人喋らないが困った表情。
丸は赤いボーダーの服を制服の上から着ている。

本「そこのおふた方、困ってますよね!」
は「ひっ!え、いいえ!?いや…(まるを見て)…はい、まぁ…」
本「うんうん、よ〜く分かる。困って困って、もうどないしよ〜〜って顔だァ!…でももう大丈夫。この稀代の占い師『M』がなんでも解け…」
は「ややややっぱ大丈夫です!!」

はる、丸を連れて走り去る。間もなくゆめ、走って登場。

ゆ「あれ?どこ行った!?はるちゃーーん!!!」
本山を無視して走り去る。

今度はあいとらん、2人で話しながら登場。

あ「さっきの声、ゆめやんな。」
ら「はるちゃん探してるな」
あ「はるちゃんって、連れてる男の子に衣装着てもらったら慌てて逃げてもた女の子?」
本「どうもこんにちは」
ら&あ「!?」
本「君ら占いに興味無い?」
ら「ないです!!」
あ「らん、職員室行こ!!」

らんとあい、走って職員室に向かう。
すると真島、何か呟きながら通りがかる。そして本山に話しかける。

真「なあ。今部活動体験入部期間か?」
本「そうですねえ。」
真「わかった。すまないな」
本「いえいえ」
本「今の人どっかで見たことあるな…」

間もなくしてあいだけ戻ってくる。話しかけようとするが、たつきと林がやって来てやめる。

本「あれ、さっきの」
林「あ、はい…俺ら、やっぱ困ってます。」
本「あら〜〜そおなんですねぇ!いやはや、私の所に戻ってきたのは大正解!何でも解決してみせましょう」
た「やばい」
林「え?」
た「林、俺今…めっちゃ帰りたい」

たつき、後ろ向いて勢いよく帰ろうとする。
林、それを慌てて抑えながら

林「あー待て待て待て!!俺だって怖いよ!」
本「そ、そんなに…」
林「もう藁にも縋る思いなんや。藁でも何でもいい。何でもいいから、何か、ネタを…」
本「ほう、ネタ」
た「ここに占いって書いてあるぞ!ほら!!この人、占いする人なんやろ、無駄や!」
本「まあまあお二人さん落ち着きなさいな。占い屋とはあるけれども、皆様のお悩みを聞き、皆様の未来を照らす。私がしたいのはただそれだけ」
た「うさんくせえ」
本「勿論お金は取りませんよ!申し遅れました、私は『M』。さぁ、どうぞ。何でも話してください」
林「俺ら、芸人なりたいんす」
た「待てよ、俺なるなんて言ってな」
林「いいから!とりあえずネタないと何も始まらん」
た「うさんくさい占い師と話しても何のネタにも…なりそうやな」
も「貴方達は芸人になりたいんですか?」
た「いや、俺は…笑かしたい人がおるんです。」
本「女の子ですか?」
た「はい」
林「Mさんに恋バナするんか」
本「そういうの大好きだ」
た「朝いっちゃん早く来て、絶対教室の鍵を取りに行って。教室に入ったら大体電気付けるじゃないですか」
本「そうですね」
た「その子、1度も教室の電気を付けたことないんです。それで大体次に朝早い俺が付けるんですけど」
本「けど?」
た「こないだ、言われました。『まだ明るくしないで』…って。辛そうに。俺なんも言えなくて。」
林「ワケありっぽいな」
本「それで、笑かそうと…難しいですね」
た「はい。笑った顔なんて見たことない」
林「俺も無い。あんま目立たんから余計にかもしれんけど、笑ってるイメージは無いな」
た「でも!…だから俺が1番最初に笑わせようっ、て。あの子がそれこそ、明かりが付いたみたいに笑う顔が見たいんです。」
本「素晴らしい!いいじゃないですか!!」
林「俺は!本気で芸人目指してて。こいつ…たつきはおもろい。おもろいこと分かっとるし、人の笑顔が好き。やからコンビ組もって言ったんすけど」
た「芸人にはならん。はるちゃんテレビ観んらしいし」
林「テレビ出てない芸人もおる」
も「なぁるほど〜よく分かった。貴方は想い人の笑顔を、貴方は全ての人の笑顔を求めている訳だ」
た「まぁ」
林「はい」
も「そんでもってやるネタがないから、ネタ探し…と言ったところかな?」
林「そういうことです」
も「さてさてさて…じゃあ未来を見てみましょうかね …むむ。来ますよ…来た!!(カードをめくる)」
た「何が!?」
本「貴方達の未来を照らす光ですよ。…ふむ。たつきさん。貴方は未来が大きく変わっていますね。そして…貴方は」
林「林です」
本「林さんはそのまま、何があっても自分を信じることが大切です。」
た「なんか…」
林「アバウトやな」
た「やっぱうさんくせえ」
本「(慌ててカードをめくる)そして近々!」
た「具体的なん来そう」
本「…細くて長身な、赤いボーダーの服のメガネの男が現れます。その男が貴方達のキーパーソンとなるでしょう。探してみて下さい」
た「その特徴はもう完全にウォーリーやないか!」
林「はぁ…やっぱラクしようとしたらあかんな。まあでも探そか、ウォーリー。Mさん、ありがとうございました」


二場

たつきと林が退場。
あいが本山に話しかける。

あ「…ほんまに何してるん、こんな所で」
本「あ、あいちゃん。職員室行かれたかと」
あ「先生には言ったで。また本山かって相手されんったけど」
本「まあそうやろなぁ。でもよく気付いたな、俺って」
あ「こんなんしとる人もとやん以外おらんなって思っただけ」
本「ここでは俺先輩やねんから、本山さん、やろ。Mさんでもええで」
あ「はぁ〜??何がMやねん」
本「すみません…占い師ぽいかなって…ていうか!最近喋らんなったな。昔はあんな仲良かったのに」
あ「家も遠くなったからな。かと思ったら高校一緒やし。」
本「びっくりしたわ」
あ「もとやん、まだ言ってるんやろ。昔言ってたこと」
本「『全人類にウケる』?」
あ「それそれ。ウケようとしてスベってたことの方が多かったけど。」
本「ほっとけ。俺はとにかくウケたかったねん。ウケんでも、楽しんで貰いたい」
あ「そんで今度は占い?」
本「そう。最近駅の占い屋流行ってるやろ?俺もこれならウケるんかなっ、て」
あ「…出来てへん」
本「え?」
あ「そんなん、全ッ然、出来てへん。」
本「あいちゃん?」
あ「分かっとん?やってること、詐欺師と一緒やで」
本「ちゃ、ちゃんと勉強したわ!!」
あ「ほんまに?」
本「ネットで」
あ「…人をさ、楽しませようとするのはいいと思うで。私が下向いとっても、よく笑かしてくれてた。でも今のもとやん、人を騙してるだけやん。」
本「…」
あ「中途半端な気持ちならやめたほうがいいと思う。」
本「俺だって必死で」
あ「聞きたくない」

あい、退場。
しばらくして、ゆめとらん登場。

ゆ「台本ならもうすぐできるからぁ!!」
ら「どうせまたあんたヒロインの少女漫画みたいなやつやろ!!」
ゆ「転生モノや!」
ら「演劇で!?面白そうやな」
ゆ「面白そうなんかい」
ら「…ん?待ってさっきの怪しい奴!!」
ゆ「何これ、占い?生徒がやってんの?」
本「何かお困りですか、お嬢さん方」
ら「行こか」
本「あー!待って待って待って。私は『M』。気軽にお悩み相談」
ゆ「MかLか知らんけど、ここに演劇部入りたそうな女の子通らんかった?」
ら「どこがやねん!絶対ないわ。断言する」
本「もしかして、さっき叫んでた『はるちゃん』という方かな?」

はる、登場。

ゆ&ら&本「あ。」
本「さっきの」
ゆ「はるちゃぁ〜んさっきは逃げてたけど、演劇部の活動、とっっても興味深そ〜にしてたよなぁ!!」
ら「(ゆめを抑えながら)ごめんなぁ。えっと、はるちゃん?やっけ。もう放課後やし、下校時刻過ぎる前に帰り。あと一緒におった男の子の衣装返してもらわな」
ゆ「らん!余計なこと言わんでよ。はるちゃんはな、『演劇部って面白そう!入ってみたいけど、入部させて下さいなんて恥ずかしくて言えないよ〜』っていう、内気な子なんや!」
ら「あんたにはるちゃんの何がわかんねん!?」
ゆ「やからここは先輩のゆめ達が背中を押してあげな!…らんやって、部員欲しいやろ。」
ら「…分かった。」
ゆ「おっ」
は「いや、あの私は…」
ら「はるちゃん!私ら演劇部やねんけどな、今、ちょ〜〜っと部員が少なくてなぁ?ほんまちょっとやで?でもこんなおもろい先輩とか、優しい先輩おるし、顧問の先生もめっちゃいい先生やねん!毎日楽しいで、私は入ってからテストの点上がったし、まだおらんけど彼氏もできるで!」
ゆ「後半急にうさんくさなったやん」
本「俺といい勝負やな」
ら「さ、はるちゃん。入部届けならここにあるで(にじり寄る)」
ゆ「流石部長、持ち歩いてるんやな。…さて。ボールペンならここに」
は「ひっ!!いや!!!」

はる、うずくまる。

本「はるさん!?どうしましたか!?」
ら「どうした!?」
は「無理なんです。そんな、大勢の人前に出るなんて。明るい舞台なんて。」
ゆ「大丈夫か?裏方もあるで…?」
ら「あほ。はるちゃん、大丈夫?ごめんな、脅そうとしたわけじゃないんよ」
本「ほぼ脅しでは」
は「すみません。ちょっと1人にさせて下さい」

はる、退場。

ら「…心配やな」
ゆ「めっちゃ顔色悪かったで。」
ら「とりあえずあいと合流しよか。あの子さっき忘れ物あるとか言うてはぐれてん。」
ゆ「珍しいな。はるちゃん、無理やったって言わな」
ら「Mさん、はるちゃんがまた来たら謝っといて下さい。あと、」
ゆ「衣装返してって」
本「分かりました。」

ゆめとらん、退場。


三場

まき、1人で登場。

ま「あの」
本「はいはい」
ま「占い…やってるんですか」
本「はい!占い師の『M』と申します」
ま「私はまきです。Mさんの噂は聞いてます」
本「えっ!う、うわさになってるなんて…!ちなみにどこで!?」
ま「職員室ですかね」
本「(青ざめる)」
ま「悩みを聞いて、解決するっていうコンセプトの占い屋。先生には無許可で。そう聞いて来ました。」
本「…まぁ大丈夫。ここは先生通らんはずや。見つかる前に片付ければ…」
ま「話してもいいですか?」
本「すみません!いつでも、貴方のタイミングでどうぞ?」
ま「私…占い勉強中なんですよね。好きで」
本「え?」
ま「人々の悩みに寄り添い、未来を見る…ミステリアスな雰囲気、タロット、六芒星!」
本「いや、あの」
ま「Mさんは何の占いをするんですか!?私はアストロロジー推しです西洋占星術って言うんですけど」

その時、はるが登場。

ま「あ、はるちゃん」
は「まきちゃん…」
本「あ、はるさん!さっきの演劇部の2人が心配してましたよ。体調悪いなら早く帰った方がいいかもしれませんね。」
ま「え、はるちゃんしんどいん?」
は「もう大丈夫。ちょっと怖かったけど…」
本「あと、衣装…」
は「あ!すみません。今丸先輩は…オカルト部に居ると思います。まきちゃんは相談?」
ま「はるちゃんには関係ないよ。そっちは?」
は「あ、ごめん。私は…言おうか悩んでる」
ま「言いなよ、見たところスリーカードスプレッドっぽいし。Mさん、はるちゃんが今どうしたらいいか占ってみて下さいよ」
本「えっ」
は「じゃあ、お願いします」
本「わ、わかりました。(カードを3枚並べる)」
ま「あれ、はるちゃんにカードきらせないんですか?」
本「おぉ〜っと!!あはは!!忘れてました。はるさん、カードをきってください」
は「は、はい」」
ま「『今からどうしたらいいのか』っていう質問を思い浮かべながらね」
本「はいそうです!はるさん」
は「はぁ…」
本「…はい、ありがとうございます」
ま「あの。カードの位置は左側ですよね」
本「んん〜〜??ちょっと手が滑りまして」
ま「それと上から7枚目だと思うんですけども…Mさんのやり方はちょっと違うんですかね?」
本「あーー!そうかもしれません流派が違うのかもしれませんねということでまきさん」
ま「えっ」
本「まずはまきさんの流派のやり方を見せてくれませんか!?」
ま「いいですよ。(カードをめくる)うん、後悔してることがあるんかな?でもって(カードをめくる)今どうしたらいいかわかんない。(カードをめくる)その悩み、なるべく多くの人に打ち明けたらいいかもしんないって」
本「や、やりますねまきさん。そんなやり方があるんですね」
ま「至って一般的なスリーカードですよ」
は「やっぱり、当たるね。まきちゃんの言う通りだよ。じゃあ聞いてくれる?」
ま「勿論。あ、でもさっき『塔』のカードが出てたから、はるちゃん、どっかで崩壊するかもしんないね」
は「崩壊!?」
ま「冗談。変わるかもしんないし。さ、話して話して」
は「…今、どこも体験入部やってるでしょ?そんでね、…知り合い、知り合いの先輩に案内してもらって、色んな部活に行ったの。」
ま「…知り合いの先輩」
本「それで演劇部も見てた訳か」
は「はい。…最後に、オカルト部にも行きました。丁度その時、こっくりさんをやってたので、私と先輩も参加したんです。」
ま「これ、もしかして怖い話…?」
本「かもしれない」
は「そしたら部員さんが、『たまに呪いにかかることがあるけど、いつも部長が何とかしてくれるから大丈夫!なんてったって部長は霊感があるからな!…え待って、今部長居ないんだっけ。』」
本「まさか…」
ま「はるちゃん、呪いにかかって…!?」
は「いや、私じゃ」

たつき、乱入。

た「はるちゃんが…の、の、…呪いに…!?」
は「たつきくん!?いや私じゃなくて」

ゆめとらん乱入。

ゆ「おや?放課後まで残っとる悪い子、見ぃ〜〜つけた」
は「ひぇっ」
ら「はるちゃんまだ帰ってへんかったんか」
ゆ「さっきはごめんな。体調どう?」
は「も、もう大丈夫です…」
た「ちょっと!誰だか知らないですけど、はるちゃんはそれ所じゃないんだ!!はるちゃんが…はるちゃんがああ!!!」
ゆ「いやはるちゃんが何!?」
ら「不治の病にかかったみたいなテンションやん」
は「だからその…!」

林、丸を連れて出てくる。

林「待てたつき!はるちゃんの声が聞こえたからって急に走り出すことないやろ!!あとウォーリー見つけ…あ、はるちゃん」
ま「あ、丸先輩…」
ゆ「誰か知らんが、君ははるちゃんの友達なん?…はるちゃんは、はるちゃんは…不治の病に侵されてしもてるんやと…!!」
林「え!?」
た「え!?」
は「え!?」

あい、登場。

あ「なんか人多いな!!」


四場

ゆ「はるちゃんが不治の病に!!」
た「いや、呪いにかかってるって!!」
ら「え、呪い!?」
林「それより、このウォーリーは!?」
ま「とりあえずカードでワンオラクルしましょうMさん」
本「助けてあいちゃん」
あ「多い多い情報が多い!!」
ら「M?かLかSか知らんけど、あんたが1番ここにおるやろ!状況を説明して。」
本「ミディアム、ラージ、スモール…じゃない!!何から話せばよいのやら」
は「はい。とりあえず、私は呪いにかかってません。」
ま「そうなん?」
た「よかったああああああああ」
林「呪い?」
ま「オカルト部の体験入部でこっくりさんをやったんだって。丸先輩と一緒に。」

まき、丸の方を見る。
丸、頷く。

た「それで、呪いは…」
は「私はかかってないですけど…その、丸先輩が…」
ゆ「まる?」
本「丸君って、こちらの」
林「え、ウォーリー?」
丸、頷く。
ら「ええええ!」
林「ウォーリー!!!!」
た「(本山を見て)何がキーパーソンや、デタラメやん…」
あ「どんな呪いなん?」
は「…喋れない呪いです…!!」
ら「え、喋れない?」
林「喋られへんくなる、ってこと?」
ま「そんなことある!?!」
丸、口をパクパクさせてアピール。
喋れないことを伝えたい。
ゆ「あかん、喋れんくなるなんてゆめやったら耐えられへん」
ら「そうやろな。」
林「とにかく、丸先輩を助けんと」
た「ちょっと待て。」
一同、たつきを見る。
た「先輩、あなたははるちゃんとどういう関係なんですか」
は「たつきくん?」
林「おい先輩が大変な時に…!!」
あ「どんな関係やって、今……多分喋れんくて困ってるんやで!」
は「中学の頃からの、せ、先輩だよ…」
た「…そう…俺ははるちゃんを信じる」
ま「とりあえず、丸先輩の呪いをどうにかしよ!」
ら「どうにかって…どうするん」
本「さっき言っていた、オカルト部の部長を探してみたらどうかい?私は部長さんの顔なら知ってる。」
ゆ「一刻も早く見つけ出さな!」
あ「でももう放課後やで?オカルト部にはおらんのやろ?」
ま「3年生やったらまだおるかもしれん!今日遅くまで模試やってた。」
ら「部長の特徴は?」
本「メガネの天然パーマ…!」
ゆ「行こか皆!」
林「ウォーリーは!?」
た「おいとけ!」

たつき、丸を睨む。
本山とまきとはると丸以外退場。

は「…私たち、もう1回オカルト部見に行ってきます」

はると丸、退場。

本「私も…」
ま「Mさんは目印になるから居た方がいいんじゃないですか?」
本「そ、そうですか」
ま「皆、今知った他人の為に凄いなぁ」
本「いい人達ですよね」
ま「…Mさん、相談していいですか?」
本「え…今?」
ま「いつでも貴方のタイミングでって言ったじゃないですか!」
本「すみません!!…どうぞ」
ま「私、丸先輩のことが好きだったんですよ」
本「!」
ま「私達は中学の時美術部で仲良くなりました。無口だけど自分の作品を信じてる丸先輩に、私とはるちゃんは惹かれていきました」
本「じゃあ、はるさんと丸君は」
ま「…はい、付き合ってます。私の気持ちを知ってたのに。その私には何も言わずに!ほんと、何が『知り合い』だ、ってね」
本「…」
ま「だから、意地悪したんです。無口で気持ちが読めない彼氏に不安になってたから。そのまま上手くいかなかったらいいのに、って」
本「まきさん、貴方何か」
ま「ちょっと占ってみただけです。私の占いは当たるって評判なんですよ。先生にもしたことあるから、職員室でもね」
本「占い師が未来を暗くしてどうするんですか」
ま「未来を暗く…?ただちょっと丸先輩に良くない星がついてるよって教えてあげただけなんだけど…ほんとにその通りになっちゃった。まさか呪いにかかるとは」
本「…」
ま「私がデタラメの占いをしたのは、それが最初で最後です」
本「まきさん…!貴方が今すべきことは、丸君の呪いを解く手助けをする!ただそれだけですよ」
ま「エセ占い師に言われたくないです〜。…分かりました。部長さんを探してきます。でも…自分がやったことに後悔はしてないですから。」

まき、退場。


五場

はる1人で登場。

は「…あれ、まきちゃんは」
本「皆と部長を探しに行きましたよ」
は「そうですか…」
本「丸君は?」
は「オカルト部に残って資料を探してるみたいです。」
本「喋れないのになぜそんな円滑にコミュニケーションを…」
は「中学の時から一緒ですから」
本「そうでしたか。…はるさんと丸君はお付き合いしてるんですか?」
は「えっなんで!」
本「いやなんとなく」
は「…そうです。私から、想いを伝えて。…でも彼、今はああですけど元々全然喋らなくて!」
本「丸君は確かに無口だよね」
は「だから!…彼が何を考えてるのか、ほんとに私のことが好きなのか、情で付き合ってるんじゃないかなって、不安でした。なのに喋れない呪いって!私の案内をしてくれてたのに、また迷惑かけちゃって…!」
本「今回のことは誰も悪くないですよ。オカルト部にしっかり責任とってもらいましょ」
は「でも…!やっぱり私じゃだめだったかもしれない。私なんかより…」

たつき、またしても乱入。その後にらん、あい、ゆめが続く。

た「M!!はるちゃんを泣かせたのか!?」
本「泣かせてない!!」
ら「あれ、丸先輩は」
は「ちょっとオカルト部に残ってます」
ら「そっか…ごめん、こっちは見つけられんかった」
本「そうですか…」
は「すみません、このお詫びは絶対しますから…!」
ゆ「お詫びなんてそんな」
あ「当たり前の事やんか」
ら「はるちゃんはちょっと真面目すぎる節があるんやな。私も、しっかりしとかな皆が離れてまうって思って息苦しい時あったよ。でも、ちょっとくらい肩の力抜いたほうが楽やで。」
ゆ「らんは元々ちょっと抜けてるしな」
ら「しばかれたいん」

林が入ってくる。

林「おーい!!オカルト部の部長を名乗る奴なら見つけた!!」
本「おお!!」
ら「ナイス!」
ゆ「んで、その部長さんはどこなん?」
林「それが…あの!!こっち来てください!」

真島、フードを被って出てくる。

ゆ「メガネで天パだ!!」
あ「フードでよく見えへんけどそうやな」
真「こっくりさんで呼べるような低級霊の呪いにかかったやつはどれだ」
た「今丁度入れ違いになったんや」
は「私、呼んできます!」

まきが丸を連れて登場。

ら「丸先輩!」
あ「めっちゃ丁度良いところに」
ま「タロットの導きですよ」
真「こいつか?」
は「はい!」
真「どうやってかかった」
は「体験入部で、私と丸先輩でこっくりさんをしていて。そしたら、丸先輩が何か驚いて!そしたら…!」
真「落ち着け。口から霊気を感じる(丸の口を開けて見る)」
林「なんか…歯医者みたいに見るんすね」
本「真島君に霊感があるっていうのは本当やったんやな」
真「はぁ〜なるほどな。呪いの解除方法が分かった。」
は「な、なんですか!」
真「かかってる呪いから強い死のオーラを感じる。どんより、暗い感情の波が押し寄せてくるみたいだ」
ゆ「相当やな」
真「こんな呪いは生気溢れる人間につかない。つまり」
た「陰キ」
林「言うな。丸先輩は多分恐らく普段からあまり明るく振る舞うタイプじゃないんだろう。」
真「この呪いを消すような生のオーラを纏えば、あるいは。」
ら「生のオーラって何なん」
あ「なんかこう、生きてるーって感じちゃう?」
ゆ「丸先輩が生きてるーって強く思うようなことがあればいける?」
本「そんな曖昧な。生きてるーって瞬間そんなにあるか?」
ゆ「死ぬほど楽しい時とかならん?」
た「楽しい…?」
林「どうした、たつき」
た「1回丸先輩、死ぬほど笑わせたらええんちゃうん」


六場

本「笑わせる…!?」
真「それが1番手っ取り早いかもしれない」
林「まじか!」
ま「やるやんたつきくん」
は「そんな、ただでさえ丸君は…」
た「丸君!?」
は「あっ」
ら「ていうか、ひどいなその霊。」
あ「うん。勝手に陰キ…暗いとか決めつけられて。丸先輩可哀想…」
林「たつき!笑わせるんやったら、俺らの出番やろこれは!…たつき?」
た「はるちゃん。俺、君に話が」
あ「今は丸先輩のこと最優先にしなあかんのちゃう?」
は「…また、今度お願いします」
た「分かった。じゃあこの件が一段落着いたら、…話をさせてほしい」
は「分かりました…」
ゆ「(たつきに向かって)君の気持ちはなんとなく察した。が、ここは演劇部に任せたまえ」

ゆめ、らん、あいが総出で丸を笑わせようとしている。
丸、微塵も表情が変わらない。
ちなみにはるも1ミリも笑わず。

ゆ「くっ演劇部もここまでか」
あ「いや待って横着するかるあかんねん、あい、小道具とか持ってくるわ」
ら「私も行く。ウケた台本引っ張り出してこな」
ゆ「ゆめも行く!!」

ゆめ、らん、あいが退場。
本山、後ろで丸を笑わせようとしている。

ま「どうするよ、はるちゃん。丸先輩が滅多に笑わんのはよく知ってるはず」
は「…」
た「何でよく知ってるん!?!?」
ま「同じ中学やったの」
林「どのレベルで笑わへんの?」
は「卒業アルバムの個人写真、先輩だけが笑顔じゃないって伝説が残ってる」
林「表情筋が死んでいる」
真「…そろそろ下校時刻か」

一同息を飲む。

ま「はるちゃんやったら知ってるんちゃう?丸先輩の笑うところ」
は「まきちゃん…」
ま「私に言わんのは勝手やで。でも一応私だってはるちゃんと同じ気持ちやった。」
た「まき、はるちゃん?何の話を」
林「しーっ!」

その時、丸がまきの方へ。
何か言いたそうだが、喋れない。

ま「やめてください。これでももう諦めついてる方なんですよ」

丸、頭を横に振る。そして本山のタロットカードをまきに渡す。

本「それ私の」
ま「な、なんですか」
林「占えって言ってるんですかね」
た「まあ、まきの占いの方が確実だしな」
本「ま、待って下さいよ!このMがツーミラクルしてしんぜましょう」
ま「ツーオラクルのことですかね」
本「噛んだだけです!(カードをきって並べる)出ました!!天使!」
ま「…このカードは…節制、ですね。リラックスしている状態を表します。」
た「少なくとも俺は緊張してる」
本「…」

丸、カードをまきに渡す。

は「丸先輩、まきちゃんに占ってほしいみたい」
ま「言われなくても分かってる」
林「Mさんは頼りになんないからさ、まき。俺からも頼むよ」
ま「…とりあえず、未来をツーオラクルしてみる」

まき、カードを切り2枚並べる。

ま「(1枚、また1枚めくる)…やっぱり、私の占い当たってないかもしれない」
本「どうしたんですか」
ま「月の逆位置。物事が順風満帆に進むことを表します。こんな状況で…」
林「まき。俺はまきの占いを信じる。そんな良いカードが出てるんやろ?きっと大丈夫」

丸が頷く。

た「要はこの人を笑わすだけや。シンプルに。行くで林!」


七場

林「は!?おま、もしかしてぶっつけで」
た「はいどーもー!たつきと林で、…コンビ名はまだ決まってません」
林「コンビ名すら決まってへんやないか」

本山笑う。が、他笑わず。

た「…っ、俺さ、何かに夢中な人っていいなって思うねんな」
林「あーいいやん、俺らみたいな高校生やったら部活とか勉強とかな」
た「そうやねん、あと心霊スポット巡りとかな。恋愛とかもあるやんか、練習しときたいな。好きな子やってくれ」
林「変なん混ざってたな」

ゆめ、らん、愛が色々持って帰ってくる。
らんが女の子っぽいカチューシャを、
ゆめがリボンを林に装着させる。
あいが38マイクをセット。
丸が少し笑いそうになる。本山だけそれに気付く。

林「どうしたん、たつきくん。こんな所に呼び出して」
た「ごめんね廃トンネルになんて呼んで」
林「ほんまになんでこんな所呼び出したん」
た「林ちゃん、俺、ずっと前から林ちゃんのことが好きでした!」
林「場所考えろよ」
た「俺もう林ちゃんのことしか考えられんくなってた。そう、まるで呪いみたいに…」
林「口説き文句きしょすぎん?」
た「オカルト部に入った時から、君の呪いにかかったんだ」
林「私らオカルト部所属やったんやな…通りで…」

本山、まき、そして真島が少し笑う。
演劇部勢が不満そうにしている。

林「わ…わ…私、演劇部とかに入ってるような、堂々とした人が好みなの!」
た「俺だって堂々と心霊スポット行ける!!」

はると丸以外全員笑う。

た「お願いします。付き合って下さい!」
林「ごめん。」
た「…」
林「げ、元気出して」
た「…」
林「あ!やっぱ試しに付き合ってあげてもいいわよ!」
た「…」
林「え、たつきくん?」
た「(口をパクパクさせる)」
林「呪いやぁーーーー!!!!!!」

はる以外笑い、丸が少しだけ顔を隠す。

ら「待って今笑わんかった!?」
ま「笑ったように見えたけど」

丸、パクパクして喋れないことをアピール。
真島が丸の様子を見る。

真「まだだ。もっと爆笑させないと」
あ「厳しいな…」
ら「そんなんほんまにできんの?」
本「ここで諦めるわけにはいかない!」
ゆ「ゆめはさっきからはるちゃんが微塵も笑ってないのが気になるわ」
真「漫才を続行させよう」
林「まだやるん!?」
た「しゃあない。俺らが付き合ったとして、今度はコントに変えてみよう」

ゆめ、なんとなくカチンコを鳴らす。

た「ごめん、俺すごい緊張しちゃって。デート、どこ行く?」
林「私結婚式のプラン考えたいから式場覗きにいきたいな」
た「早い早い早い林ちゃん色んな段階をあほみたいに飛ばしてるよ」
林「ウィーン」

本山、漫才に乱入。

本「ようこそいらっしゃいました、お二人はもう入籍されているのですか?」
た「あっ、まだ」
林「ですけどこれからのことを早めに決めといた方がいいかなって」
本「かしこまりました。ではこれこれこういうプランで、練習してみましょうか」
た「漫才の恋愛の練習の中で結婚式の練習すんの!?」
本「新郎新婦、入場です」

全員拍手。

本「主賓の挨拶です。」

ゆめ、漫才に乱入。

ゆ「うっ、林ちゃんの友達代表です。友達の私から見ても良い子で、まさかオカルト部で呪いを通じて2人の絆が深まるとは思ってなくて、うっ、ほんとにおめでとう」
林「なんか曰くついてそうやな…」
ら「俺はたつき君の友達代表の友達の代理できました…」
あ「関係あっっさ!!!」
ら「たつき君のことはよく知らないけどとても嬉しいです結婚おめでとう」
た「俺の友達代表スピーチだけ内容薄すぎる」
本「続いて神父による誓約です」

まきも漫才に乱入。

ま「2人は、一生お互いを愛し合うことを誓いますか?」
た&林「誓います」
ま「…次何?」
本「わからん。」
ゆ「指輪の交換!!」

たつきと林とりあえず向かい合う。あい、慌てて指輪を用意。
その時、突如真島が漫才に乱入。

真「ちょっと待った!!!!」
一同「!?」
真「林ちゃんは…俺の女だ!!」
た「ええええ」
林「ま、真島先輩!!」
真「林ちゃん…君にかかった呪いを毎回といてあげたのは俺じゃないか」
た「それに関しては感謝してる!けど林ちゃんを渡すわけにはいかないんだ!!」
ゆ「カーーット!!!」

ゆめ、カチンコを鳴らす。


八場

ゆ「なんやこれ」
た「俺がききたい」
林「丸先輩は!?」

丸、申し訳無さそうに喋れないことをアピール。

ま「ダメ…か」
ら「このままやともう…」
た「くそっ…」
は「皆さん…こんなにしてもらったのに、ほんとにごめんなさい。」
あ「はるちゃんは謝る必要ないよ」
本「…っ!!」

本山、演劇部が持ってきたドレスを急に着る。

ら「なになになに急に何」
ゆ「いかつすぎる」
本「丸君…!!君のツボは、もしかしてこういうのか!?」

丸、大分笑いそう。

林「つまり、変な格好…!?」
た「まじか」
林「俺らの漫才は一体」
あ「謎な衣装なら、山ほど持ってきてるで!?」

皆出来る限り変な格好をしだす。
何もしようとしない真島。

本「ほら真島君も…!!」
真「い、嫌だ!!僕はこういうの苦手なんだ」

本山、なんとか何かを身につけさせようとする。それを拒む真島は、フードで顔を隠そうとする。フードで頭が全て隠れる。
その瞬間、一同(はる以外)、そして丸が爆笑する。

ら「ま、真島せんぱ、なにそれ」
ゆ「あかん苦しい」
林「そ、それよりおい!!!」
た「丸先輩…!!!」
一同「あ」

丸「…あ」

一同喜ぶ。

は「丸君…!!元に戻れたん!?」

丸、頷く。

ら「喋らんのかい」
た「さてはるちゃん…今度こそ君に話したいことが」
は「丸君…っ!」

はる、丸に抱きつく。

丸「はるちゃん。ありがとう。何より」
ま「…え、なんですか」
丸「まきちゃん。ほんとに感謝してる。良かったらまた占ってほしい」
ま「…しょうがないですね。」
は「まきちゃん…」
ま「なんかもう、変に恨んでたのが馬鹿らしくなってきた。はるちゃん、おめでと。手貸して。あ、丸先輩も」
は「え?」
ま「…うん。2人、やっぱ相性バッチリだよ。これからも末永くね」
は「まきちゃん…!」
ま「あ、あとMさん。今度ちゃんとタロット教えてあげます。」
本「ま、まぁ機会があれば…」
ま「さ、そろそろ帰りましょ。皆」
は「うん…っ!!帰ろ。皆さん!ほんとに、ありがとうございました!」

はる、丸、まき退場。

真「…疲れた。」

真島、退場。

た「…」
林「おい、帰るぞたつき。俺も思ったよ。はるちゃん…最後まで笑わんかった。どう?俺とコンビ組まん?」
た「(無言で頷く)」
林「コンビ名は…そうやな。新郎新婦、とか」

たつきと林、退場。

ら「さて、私らも帰ろか。下校時刻ギリギリや」
ゆ「帰ろ帰ろ」
あ「あ、まって。忘れもんした。先行っといて」
ら「そうなん?おっけー」

ゆめとらん、退場。

本「あれ、あいちゃん。帰らへんの?」
あ「忘れもんしただけ。」
本「そっかそっか。はよ帰れよ。今日は疲れた」
あ「頑張ってたやん」
本「俺は何も出来てへんよ」
あ「丸先輩のツボに気付いてたやん。ドレス似合ってたで」
本「恥ずしかったわ」
あ「ほんま、変なとこよく見とるよな。」
本「それは褒めてるん?」
あ「人を楽しませたい、笑わせたいって思いが強いのは変わってなくてよかったわ。やっぱりちょっと空回りするけど。」
本「今回の俺はナイスプレーやったくない!?」
あ「今回はな。占いは最悪やったけど。」
本「もう懲り懲りや。」
あ「今度は何にするん」
本「受験やから、なんも出来んかもしれん」
あ「…そっ、そっか。」
本「応援してな」
あ「しゃあないな!…でも、勉強の息抜きは必要なんちゃう?」
本「せやな。」
あ「演劇部みにきたら?」
本「え?」
あ「コメディやし、爆笑必須やで」

校内放送が流れる。
『えー、本校2号棟の渡り廊下にいる、本山誠、本山誠。至急職員室まで来なさい』

本「…やばい」
あ「もとやん、呼び出されるとか。笑える」
本「あいちゃんに笑って貰えたらもうなんでもいい気がしてくるわ」
あ「はぁ?あほなこと言っとらんと、はよ怒られてこい!」
本「はいはい…」

本山、荷物をまとめ、急いで退場。

あ「…おもろかった!」

終幕。

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