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「茶店のタピオカ」

白川奈津乃  
夢崎ゆめ
進藤誠司  
近藤聡  


とある喫茶店にて。2人の女子高校生が話している。

な「…おじさん」
ゆ「…おじさん」

な「…おじさん…!」
ゆ「…おじさん…?」

な「イエス!おじさん」
ゆ「ノーおじさん」
な「!?」
ゆ「ノーおじさん」

な「(うっとりして)ナイスおじさん…!」
ゆ「バッドおじさん」
な「バッドおじさん!?」
ゆ「ノットグッドおじさん サッドおじさん」
な「(悲しそうに)クライおじさん」
ゆ「泣いた…」
な「泣きたくもなるわ」
ゆ「いや…分からんもん」
な「ゆめがしつこく聞くから言ったのに」
ゆ「確かに聞いたで、よーモテるのに誰とも付き合わんから、奈津乃のタイプってどんな人なん〜って。それがまさか」
ゆ&な「「おじさん」」
ゆ「やとは思わんって」
な「結構勇気出して言ったのに」
ゆ「泣いとったもんな」
ゆ「おじさんが」
な「かっこいいんやでおじさんは」
ゆ「待ってよ、もしかして奈津乃の言う好きな人って」
な「いや、その人は一個上」
ゆ「一個上?先輩やん」
な「その人達、かな」
ゆ「複数人おるん」
な「2人」
ゆ「先輩2人!」
な「好きな人っていうか、推し?っていうか」
ゆ「もしかして、その人達がおじさんっぽい…とか」
な「そう!なんで分かったん!?」
ゆ「まぁ、メンバー的に」
な「え?」
ゆ「いや何も」
な「あのなぁゆめ、おじさんっていうのはなぁ…」

その時、隣に2人組の男が通る。どちらも制服。
奈津乃とゆめに気付く。

聡「はぁ〜涼しいわあ」
誠「ホンマにな。…てあれ、君達、その制服は…」
聡「同じ学校やな、2年生か」
ゆ「あ、どうも…って、生徒会長!…と、副会長も!」
誠「おぉ!覚えとってくれたん、嬉しいなあ」
聡「ほんなら名前はどうや?」
ゆ「えっと、会長が…進藤さんでしたっけ」
誠「そ!進藤誠司18歳!よろしゅう頼んます」
ゆ「で、副会長が…えっと…」
聡「んん、これは忘れとんちゃうんか?」
ゆ「えだま」
な「近藤聡」
聡「お嬢ちゃん正解!さては俺のファン?」
な「い、いや…」
誠「あんま女の子困らしたらあかんよ、聡。」
聡「すまんすまん、つい」
誠「ほな、僕らはあっこの席行くけど、あんま気にせんと。気ぃ遣わしてもたらごめんね」
ゆ「いえいえ」

聡と誠司、向こうの席に向かう。

な「…」
ゆ「いやぁ〜いつ見ても同い年とは思われへんなあ…て奈津乃?」
な「…えっ?あっ、そそそうやな。ほんま…こんな所でな…」
ゆ「…なぁ、奈津乃」
な「何よ」
ゆ「薄々気付いてんねん」
ゆ「あの二人やな?」
な「…」
ゆ「なるほどぉ〜〜〜なるほどなるほど。いい趣味やん」
な「思ってないやろ」
ゆ「でもおじさんっぽいっていうのはすこぶる理解できたわ」
な「そうやろね」
ゆ「そういや奈津乃さっき何か言いかけてたやん、おじさんっていうのは〜みたいな」
な「おじさんのカッコ良さを教えてあげようと思って。副会長を思い出して?私の事なんて呼んだ?」
ゆ「おじょ」
な「お嬢ちゃんやで???」
ゆ「はい」
な「かんっぜんに姪とか娘の年齢の、一回り年の離れたレディの呼び方やんか」
ゆ「せやね」
な「あと、誠司さんなんて」
ゆ「誠司さん」
な「最後の気の遣い方。あれを紳士と呼ばずして何て呼ぶん!?」
ゆ「確かにね」
な「やっぱりかっこいい。やばいとかエモいとか、一回も言ったこと無さそうな言葉遣いも素敵」
ゆ「あとSNSやらなさそう」
な「分かる〜〜」
ゆ「何はともあれ、奈津乃の好みはよく分かったわ」
な「誰が枯れ専や」
ゆ「あの人らまだ枯れてないやろ」
な「そもそもおじさんと枯れてるおじさんは全然違うくてな…」
ゆ「あーー分かった!また!また明日聞くから。今日はお開きにしとこ?あんま学校帰りに長居するんもあれやん?」
な「そうやな。明日聞いてな、ゆめくらいにしか話せへんし」
ゆ「分かった聞くって」

ゆめと奈津乃、席を立つ。

な「美味しかったね、タピオカミルクティー」
ゆ「な。こんな所に置いてるんや〜って思ったけど」
な「流行りについていこうとしてるんちゃう?」
ゆ「せやな、あはは」

ゆめと奈津乃が店を出ていく。
聡と誠司は二人が出ていったのを確認。

聡「行ったか」
誠「行ったね」
聡「ほな…」
聡&誠「「かんぱ〜い!!」」
誠「たぴおかしか勝たんなあ!」
聡「ストーリー上げよ〜」
聡&誠「「(スマホに向かって)イエ〜〜イ」」
誠「なぁ盛れてないやん」
聡「え〜エモくない?」
聡&誠「「やばいてぇ」」
誠「それは流石にはげたこ笑」
誠「はげた…」
聡「は?」
誠「すみません」
聡「にしても、学校の近くにこんな茶店があるなんてなあ」
誠「常連なるしかないでこれは」
聡「いや、それはちと難しいんちゃうか」
誠「なんでーな」
聡「なんせ学校の近くや。さっきみたいにほんまもんのじぇーけーがウヨウヨおるんやで?そんなんに俺らのこんな姿」
誠「確かに見せられへんな」
聡「あの子らが何話しとったかは聞こえんかったけど、まだ俺らは聡明で気品ある生徒会長達、のハズや」
誠「生徒会の品格は僕らの手にかかってる。それを崩す訳にはいかんからね」
聡「そうやで、って」
誠「どないしたん?」
聡「さっきの…さっきの子が走ってきよる!」

聡、内からガラス越しに奈津乃の姿を見る。奈津乃が走って戻って来ており、聡と誠司の席に来る。2人思わず手に持ってるタピオカを隠す。

な「はぁ…はぁ…あのっ!」
誠「ど、どうしたん?」
な「お…応援してます!」
聡「ありがとう?」
な「それだけ言いたくて。…じゃあ!」

奈津乃、また店を出ていく。机に何か紙が残っている。

聡「…なんやったんや今の」
誠「わからん…危なかった〜…」
聡「ん?こんなんさっきまであったか」
誠「あかん、忘れてったんとちゃうんか!?」
聡「いや待て、何か書いとる。」
誠「ほんまや。なになに…『聡さん誠司さん、いつもお疲れ様です。いつもかっこいい先輩方を尊敬しています。良かったらまたここで待ってます』…」

二人、顔を見合わせる。
そして用意をして立ち上がり、そそくさと店を出ていく。

次の日の放課後。同じ喫茶店にて奈津乃とゆめが話している。

な「そんなん書いたん!?」
ゆ「いやぁ、よく考えたら好きな人と偶然会うなんて凄いことやなあって。」
な「好きな人じゃなくて推しやって」
ゆ「でも深い仲になって損は無いやん」
な「もーーゆめが言うから渡したのに!!」
ゆ「生徒会の仕事って何時に終わるん」
な「4時半」
ゆ「なんで知ってんねん…まあええわ、もうすぐ時間なんちゃう?」
な「わ、ほんまやん」
ゆ「じゃあ私はここで…」
な「なぁ待って、その手紙やとさ」
ゆ「何よ」
な「二人、来るやん。…私2対1ってこと?」
ゆ「あ…」
な「考えてなかったん!?」

すると聡と誠司、そわそわしながら入店。

誠「や、やぁ」
ゆ「どうも〜!ちょっと待っててくれません」
誠「分かった」
ゆ「(少し距離をとって)本命どっち!?」
な「あ、え、」
ゆ「どっちかと言うと、どっち!」
な「えぇ?せ、誠司さんかなぁうふふ」
ゆ「おっけ…あのー!」
聡「はいはい」
ゆ「副会長、ちょっとこっちでお願いします」
聡「え、え?」
誠「あ、ちょっと!?」

ゆめ、聡を連れて別の席へ。取り残される誠司と奈津乃。

誠「行ってしもたね…」
な「あいつ!」
誠「とりあえず、座ろか」
な「はい…」
誠「あ、店員さん?たぴ…ごほん。コーヒーと…紅茶でいい?」
な「はい!あ、ミルクお願いします」
誠「…」
な「…」
誠&な「「あのっ」」
誠「あっ…」
な「す、すみません」
誠「ええよええよ」

ゆめと聡の席では何やらゆめが説明している素振り。

な「…」
誠「昨日、ありがとうね」
な「え?」
誠「いや…(コーヒーを飲むがむせる)…げほ、尊敬してるって」
な「あぁ…」
誠「僕なんかを尊敬やなんて、なぁ」
な「せい…進藤さんは凄いですよ」
誠「凄い?」
な「進藤さんが会長になってから、学校がホントに変わってってるから」
誠「そうかな?」
な「生徒会って固いイメージがあったんですけど。近藤さんは規律は守るけど臨機応変って感じやし、進藤さんは…なんか、親しみやすくて。近所のお兄ちゃんみたいな…叔父さんみたいな?」
誠「叔父さん!?」
な「良い意味で!」
誠「僕そんな老けてるかなあ」
な「良い意味ですよ!」
誠「はは、おかしいなぁ」
誠「(コーヒーを飲むがむせる)」

ゆめと聡は何やら色々頼んで楽しそう。打ち明けてきている。

誠「貴方の名前は?」
な「白川奈津乃です」
誠「奈津乃さん。僕をそんな褒めてくれるなんて奈津乃さんくらいやわ」
な「皆見る目が無いんです」
誠「言うねぇ」

ゆめと聡の席の方から盛り上がっている声が二人まで聞こえてくる。

誠「盛り上がっとるみたいやね」
な「すみませんうるさくって」
誠「全然。僕らも仲良くなれたから」
な「!」
誠「…」
な「…」
誠&な「「また…」」
聡「誠司ぃ〜〜〜〜〜!!!!」
ゆ「あっ、聡さん私達お邪魔かもです」
聡「まじ?」
誠「いや、そんなこと無いよ。ね?」
な「は、はい…!」
ゆ&聡「「おぉ〜〜」」
な「何!?」
ゆ「いやぁ〜ゆめは嬉しいよ」
聡「ええな!うん、ええな!」
な「ゆめまさか近藤さんに変なこと言って」
ゆ「言ってないって!」
な「待って、なんか通知きた。…あ。」
ゆ「…『今日シフト入ってるけど、どうしたん?』」
一同「…」
ゆ「忘れとったん!?」
な「だって、だって今日の事考えてたら…!」
聡「ちょっと待て。」
誠「…」
聡「うちの学校はバイト禁止ってことになっとるハズやねんけど…」
ゆ「あ〜…」
聡「…んん?」
な「え?」
聡「白川さん、読み間違えてんで。『砂糖と醤油切れたから至急買ってきて〜!おかんより。』」
誠「聡…!」
ゆ「さすがさとっちゃん!」
聡「はよ行きや。遅れんぞ」
な「分かりました!あ、財布…」
誠「奈津乃さん、行っておいで。ここは僕が持っとくから。」
な「でも」
誠「紅茶一杯分くらいかっこつけさせてーな。」
な「…お言葉に甘えて」
ゆ「ほいっ、荷物。行っておいで!」
な「ありがとうゆめ。じゃあ!」

奈津乃が店を出ていく。

ゆ「じゃあ私も…」
聡「もう帰るん?」
ゆ「はい」
聡「そうか。」
ゆ「誠司さんのLINEだけ貰っていいですか」
誠「?なんで」
ゆ「や、あの子絶対お礼したい!って言うだろうから」
聡「誠司は返信遅いぞ〜フリック入力もままならんからな」
誠「あんま馬鹿にするなよ…はい、これでええかな?」
ゆ「…はい、ありがとうございます!では」
聡「ゆめちゃん、また映えるカフェあったら教えてな」
ゆ「はい!」

ゆめも店を出ていく。

誠「…ゆめちゃん、ねえ」
聡「何よ」
誠「いやぁ?随分仲良くなったみたいやん」
聡「気が合ったんや」
誠「…で」
聡「何話したんかって?俺も気になるわそんなん」
誠「僕の話は後でええわ」
聡「まぁ、俺らのサブ垢バレてやべーぴえんだがパなくね?っつってゆめちゃんガチ理解ある彼くんで卍」
誠「待て待て待て待て待て」
誠「情報が追いつかない」
聡「あーね」
誠「学校モードで喋ってくれんか」
聡「俺らがこうやってタピオカやらパンケーキやらではしゃいでることが夢崎さんにバレたけど、夢崎さんは理解してくれてなんなら好感を持ったってよ」
誠「そうなんか!?」
聡「あんま隠す必要無いんかもな、好きなことをさ」
誠「そう…か。…なら僕も」
聡「お前は別ー」
誠「はぁ!?」
聡「こっからが大事や。よく聞け?白川さんおるやろ」
誠「白川奈津乃さんだな」
聡「あの子のタイプ聞きたいか」
誠「聞きたい」
聡「正直でよろしい。あの子のタイプはな」
聡「…おじさん」
誠「…おじさん…?」
聡「(誠司を指して)イエス!おじさん」
誠「ノーおじさん」
聡「!?」
誠「ノーおじさん」
聡「(奈津乃の真似)ナイスおじさん…!」
誠「バッドおじさん」
聡「バッドおじさん!?」
誠「アイムノットおじさん サッドおじさん」
聡「(悲しそうに)(奈津乃の真似で)クライおじさん」
誠「アイムおじさん!!」
聡「てなわけや」
誠「全てを満遍なく理解した」
聡「流石」
誠「奈津乃さんに僕の趣味がバレなきゃええわけやな」
聡「お前のイメージダウンを防ぐ為や、辛抱しろよ」
誠「僕をなんやと思っとん?生徒会長やで」
聡「やるやん…あ、すみません。え、ラストオーダー?」
誠「たぴ」
聡「すみませんもう出ます」

店を出る二人。帰った後、誠司の自室にて。

誠「奈津乃さんからLINE…!なに、またお礼にお茶行きましょう。勿論!!え?……『進藤さんの鞄に付いてたマスコットちみかわですよね』…『あと今日コーヒー全然進んで無かったですよ』…『次はパンケーキとか甘いものにしませんか』…」

次の日、学校帰りのゆめと奈津乃。

な「進藤さん、意外と新しい物好きでな、おじさんが流行りを追っかけてることほど可愛いものってないと思うねん。ギャップが織り成す萌のハーモニーというか」
ゆ「あー…ちょっとわかるかも。てか昨日LINEどやったん」
な「籍入れませんかって来た」
ゆ「ブロックしとこか」
な「ゆめこそ聡さんと仲良くなっとったけど?」
ゆ「あの人もうゆめらよりギャルやで」

ゆめと奈津乃が通った後、誠司と聡も続く。

聡「俺もう下手なJKよりギャルやで」
誠「生徒会のイメージうんぬんはどうしてん…」
聡「でもええな、素の自分を受け入れてくれるって」
誠「ほんまに…あ、僕結婚相手決まったかもしれん」
聡「バッドおじさん!!!!」

終幕。

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