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「地明かりゴースト」

春咲ゆら(高三)
榎本姫芽(高三)
藤原詩織(高一)
綾小路快(高一)
久我旭(高三)

放課後の教室。暗転している。

ゆらにスポットが当たる。

ゆ「高校生って、難儀やと思わへん?何も失いたくない癖に、欲しい物ばっかりで。ゆらは、やりたいこといっぱいあるタイプ!部活頑張りたいやろ、趣味の時間欲しいやろ、お洒落もしたいし恋愛もしたい!…でもさ。頑張るうちに気付いてもてん。高校生にもなったら分かるやん?…自分は何の一番にもなれへんってこと。」

姫芽にスポット。

「私は結構現実見てる方やと思う。夢なんか見るだけ無駄やん、そこまで死ぬ気で努力するんも柄じゃないっていうか。必死になってるって思われるんちょっと恥ずかしくない?」
(誰かの声)「いや、適当やって」「まじで勉強してない」「さっき寝てたわ…」
「皆そうやん。もうとっくに夢なんか見てない。やりたいことだけやるなんて無理や。もう遅いねん。全部。」

快にスポット。

「普通が一番。現代では普通は褒め言葉。どれだけ周りと馴染めるかが勝負やん。本当の趣味はTwitterかインスタのサブアカでしかやらへんのが暗黙のルールで、クラスで自分の意見なんか言っても浮くだけや。誰かの愚痴を聞いて誰かの愚痴を言って、その内周りの目が怖くてしゃあなくなるねん。おもんない世界。そんな世界で一番おもんないのは、多分俺なんやろ。」

詩織にスポット。

「どうしようもないことがあるって、最近知りました。大体努力したら何でも出来ると思ってた。…違った。頑張っても出来ないことは確実に存在します。頑張り方が違う?諦めるな?そもそも頑張れてない?…あぁもう、本当に煩い。何も知らないくせに。私じゃないくせに。傍から見たらそう見えるかもしれへんけど、私だって」

旭にスポット。

「うわっ眩し…え?あぁ。このスポット、僕にも当たってくれるのか。この光はね、『当たったら辛い事をかっこよく話してしまう明かり』だよ。安直な名前だろ。僕が今名付けた。彼らには劇が始まる前に当たってもらったんだ…紛れもない、君達に聞いて欲しかった。共感できるかもしれないし、何より…劇が分かりやすくなるだろ?…ってあぁ。あんまり勝手すると作者に怒られてしまうかも。どうも初めまして。僕は久我 旭。一つ言っておくが、僕は彼らみたいには思わない。何でかは今に分かるよ。…さ、そろそろ劇に行こうか。」

スポットが消える。

旭「皆、目を瞑って。誰かの声が聞こえたら目を覚ましていいよ」

先生(声)「じゃあ、今回の面談はここまでな。」

舞台に明かりがつく。

快「はい。…あ、すみません。自習室って今空いてますか?…はい、…そうですか。…え?この教室?いいんですか?…ありがとうございます!」

ドアが閉まる音。

快「六時までに鍵返す、やんな。ここの教室、1人やと過ごしやすいんよなあ〜。端っこやし。」

窓を開ける音。

快「風通しもええしな…ん、何やろ、やたら人集まっとるな。…あぁ、部活見学かあれ。……
!!」

快、急いで窓を閉める。

快「あっぶな。誰か目合ってんけど。」
旭「やあ」
快「うわああああああああ!!!!!」
旭「そんなに驚かないでくれよ。さっき目が合った仲じゃないか。」
快「なんで、え、…ここ三階やんな…」
旭「細かいことはよしてくれ。ところで君の名前は?」
快「ひっ、綾小路快です」
旭「快君。君は部活には入らないのか?」
快「あ、あなたは妖怪的なやつですか?」
旭「質問を質問で返すなんて。後悔するよ」
快「何を!?」
旭「めちゃくちゃ足が早い陸上部かもしれないだろ?」
快「人間には有り得へん早さなんやって」
旭「僕は三年生だ。三階にすぐ繋がる道くらい知ってるよ。」
快「エレベーターも無い学校にそんなんあるんですか」
旭「で。部活には入るのか?」
快「…いや、入るつもりは無いです。」
旭「なんだつまらない。後悔するよ」
快「後悔しない為に、入りません」
旭「ほう。理由を語ってくれ」
快「あ、はい…俺、目立ちたく無いんですよ。部活ってよく出来る人は目立ちますよね?でも、出来ない人は出来ない人で目立つやないですか。」
旭「そうだね」
快「やりたいことも無いし、何も出来へん俺は変に目立つよりじっとしてるべきなんです。やから、入りません」
旭「ん〜…ナンセンス、だな」
快「…」
旭「演劇部に入るつもりは無いか?」
快「話聞いてました?」
旭「いや、困ってるみたいなんだ。演劇部に男がいない〜ってね。ほら、やっぱり女の子だけだと劇の幅が狭まるだろ?」
快「そんなの知るわけないでしょ。いや、俺もうどこにも入る気ないんですよ。」
旭「目立ちたくないと言ったね?」
快「はい」
旭「過半数は部活に入るのに、それだと逆に目立たないか?」
快「分かってないですね、えっと」
旭「なんだって」
快「あ、いや、名前」
旭「久我旭だ」
快「久我さん。悪目立ちと、影が薄いっていうのは全然違います。」
旭「随分強気だな。」
快「前者はもう嫌って程経験したんで。人と同じことをして、影を薄くする方が楽なんですよ」
旭「その考え方、後悔するよ」
快「後悔後悔って…俺、勉強したいんで。課題出せんくて目立ちたくないんで!」
旭「分かった分かった、そんなに怒鳴らなくてもすぐ出ていくよ。また会おう、綾小路快くん」

旭、退場。

快「二度と会いたくないな」

快、机に戻ってカバンから取り出したワークを解き始める。すると、足音。快驚いて隠れる。

姫「一の七ってここ?」
ゆ「そう。ここの机が余ってるらしい」

姫芽とゆら、教室に入ってくる。

姫「じゃ頂戴させてもらお」
ゆ「待って、この部屋めっちゃ涼しい」
姫「ほんまや。暑っついしな今日、部室戻りたくない」
ゆ「それよ。戻ってもすることほぼ無いしな」
姫「ほんまに」
ゆ「…えっ、なぁここさ、鍵開いとったやんな。」
姫「…せやな」
ゆ「人おる…?」
姫「誰かいますかー!」
ゆ「あ、おったら手とか叩いてもらって」

快、手を叩く。
姫芽とゆら、顔を見合わせる。

姫「よし、帰ろか」
ゆ「賛成」

二人、慌てて教室を出ていく。

快「怖がらせてもた。なんや今日は次から次に…」

すると足音。

快「またぁ!?」

快、またしても隠れる。
詩織が教室に入ってくる。

詩「…あれ、」

快、面倒くさくなって手を鳴らしまくる。

詩「うわっなになになに?」

詩織、普通に快を見つける。

快「…どうも」
詩「あ、はい…えっ、もしかして同じクラスの人?」
快「はい、七組の」
詩「やっぱそうやんな!えっと、名前は」
快「綾小路快」
詩「綾小路くん。私は藤原詩織っていいます。綾小路くんはここで何してたん」
快「自習室空いてなくて。課題学校おるうちにしたいから教室借りててん」
詩「そうやったんや」
快「藤原さんは?」
詩「私は忘れ物取りに。部活見学で体育館シューズいるっぽくて」
快「へぇ、ちなみにどこ見に行ってたん?」
詩「全部」
快「え?」
詩「全部」
快「え、もう?」
詩「いや、まだやけど全部見るつもりやで」
快「なんで!?」
詩「自分に合う部活探してんねん。今日は文化部回るつもり!またね」
快「あ、また」

詩織、退場。
…と思いきやまた入ってくる。

快「お帰り」
詩「ちょっと隠れたいねんけどいい?」
快「どうぞ」
詩「ありがとう」
快「一体どうしたん」
詩「いや、ちょっと」
快「まぁ、手でも叩いたら出てってくれると思うで」
詩「何の話?」

二人分の足音が聞こえ、詩織が怯える。

姫「…いくで?」
ゆ「うん」

姫芽とゆら、教室に入ってくる。

ゆ「…あれ?」
姫「一年生…」
ゆ「さっきの幽霊!?」
快「幽霊やないです」
姫「さっき手叩いた?」
快「はい」
ゆ「あ〜ごめんな、勝手に入ってきてもて。部活で使うから机だけもらうな。」
快「はい」
ゆ「よいしょ」
姫「待って、一年生?」
ゆ「帰るわけでも部活見に行くわけでもない…」
姫「ほんで、男」
快「あ。もしかして」

姫芽とゆらが快に駆け寄る。

姫&ゆ「「演劇部興味無い?」」
快「やっぱり」
姫「一回見に来よ、な」
ゆ「見るだけ見るだけ」
快「何を見るんですか」
ゆ「それは…あれ」
姫「そうやな…その」
快「すみません、俺部活入る気ないんで」
姫「そう言わずに」

詩織、急に手を鳴らす。

ゆ「…今の、君?」
快「違います」
姫「じゃあ…」
ゆ「今度こそ…」
姫&ゆ「「…うわあああああ!!!」」

姫芽とゆら、またしても慌てて出ていく。
旭とすれ違うが反応無し。

快「…あ、ありがとう藤原さん」
詩「勧誘されたね」
快「うん。…あのさ」
詩「何?」
快「藤原さんは、なんで隠れてたん」
詩「えっと、それは…」

すると、旭の声。

旭「教卓があったら入りたくもなるさ」
詩「誰!?」
快「えっ、あの人また」
旭「また会ったね快くん。そちらは」
詩「え、あ…藤原詩織です」
旭「僕は久我旭。二人とも後悔するよ」
快「また言ってる」
詩「後悔?」
旭「やる前から諦めるなんて非常にナンセンスだな。何事もレッツトライだよ」
詩「はぁ…」
旭「ところで詩織さん」
詩「はい」
旭「演劇部に興味無い?」
詩「演劇部…」
快「いや、何ですか。久我さんは演劇部なんですか」
旭「違う」
快「なら…」
旭「かもしれないし、そうかもしれない」
快「どっちなんですか」
旭「そんなことより。二人とも、ひとまず僕の話を聞いてみないか?僕はね、半端じゃないほど困ってるのさ」
詩「そんなに」
快「手短にお願いします」
旭「ありがとう。実は僕、超能力者なんだ」
詩&快「…」
快「帰ります」
旭「ま、待ってくれ話を最後まで聞くんだ」
詩「なんの超能力なんですか」
快「藤原さんはなんでちょっと食いついてんの」
詩「ちょっと気になって」
旭「人に乗り移れる」
詩&快「…」
詩「帰ります」
旭「いやいやいやそれは無いだろ」
快「それって超能力というより」
旭「皆まで言うな。」
詩「どっちかと言うと、幽霊みたい」
旭「言、う、な」
快「で、半端じゃない程困ってることって何なんですか」
旭「それはね、君達がさっき会った二人のことだ」
快「二人って」
詩「三年生の女の子二人ですか」
旭「そう。あの子たちは演劇部なんだけど、なんであんなに必死だと思う?」
快「普通に人が多い方がいいからじゃ無いんですか」
旭「違うんだよ。あのね、…演劇部には二年生が居ないんだ。勘が鋭い人ならもう気付くかな」
詩「存続出来ないかもしれない…」
旭「流石。そうなんだよ、その上今の部員は二人だけ。劇をしようにも役者も裏方も台本も足りないんだ。だから、正直今は成り立ってない。二人も劇を諦め気味なんだ。」
快「でも部活は存続させたがってますよね」
旭「そう。僕も二人を応援してあげたい。…そこで、だ。出来れば快くん。乗り移らせてくれないか」
快&詩「…え?」
快「乗り移るって」
詩「ほ、ほんとにそんなこと出来るんですか?」
旭「できるさ、ほら、試しに目を瞑ってごらん」

暗転。

詩「急に目眩が、…あ、綾小路くん」
快(旭)「どうやら成功したみたいだ」
快「うわああなんだこれ気持ち悪ぃ!!」
快(旭)「ふむ。快くんの意識も健在の様だ。影が薄い方がいいとか言って君、実は我が強いね?」
快「そんなことない、それより久我さ」
快(旭)「ちょっと黙ってて」
快「は!?おい、」
快(旭)「黙る。」
詩「ひ…」
快(旭)「ああ、怖がらないで詩織ちゃん」
詩「怖いに決まってるじゃないですか」
快(旭)「大丈夫。絶対快くんの身体を危ない目には遭わせないよ」
詩「そういう問題じゃ…」
快(旭)「あ、来るね二人」
詩「え」

足音。

姫「よう考えたら人間に決まっとるんよ」
ゆ「万が一違うかったらどうするんよ!」
姫「私霊とか信じひんタチやねん。せーので開けるで」
ゆ「え、いや」
姫「せーの!」

姫芽とゆら、教師のドアを開ける。

姫「…ほら!」
ゆ「あああ良かった…さっきの男の子も!」
快(旭)「姫芽…」
姫「え?」
快(旭)「さん。」
姫「何で知ってるん」
快(旭)「いや、演劇部ちょっと調べてて」
ゆ「入る気満々やん?」
姫「初めまして。私は演劇部三年生の榎本姫芽」
ゆ「春咲ゆらです。さっき手鳴らしたんは君?」
詩「はい、すみません…」
姫「びっくりした、でも霊とかじゃなくて良かったわ。名前、なんて言うん?」
詩「藤原詩織です」
姫「詩織ちゃんね」
ゆ「姫芽。これ勧誘のチャンスやで」
姫「せやな。…二人ともさ、一回演劇部見に来てよ!」
快(旭)「何、してるんですか」
姫&ゆ「…え?」
快(旭)「演劇部って、何してるんですか」
ゆ「えっと…劇!劇してる」
姫「既成台本してるよ」
快(旭)「やっぱり既成か…」
ゆ「え?」
快(旭)「いや、何も」
姫「…なんかちょっと雰囲気変わった?」
快(旭)「自分達で台本は書かないんですか」
ゆ「書かない!書けないよ、そんな簡単に」
快(旭)「書かなきゃ分からなくないか」
ゆ「書いて、ダメやったんよ。どんだけ書いてもいい台本には叶わへん」
詩「書いたことはあるんですね」
姫「ゆらの台本、私は好きやけどな」
ゆ「ゆらなんかより凄い人いっぱいおるよ」
快(旭)「勿体ない。後悔す…しますよ」
ゆ「後、悔」
姫「確かに、いい台本書きなら居たけど…まぁ、今は居ないから」
詩「そうなんですか?」
ゆ「うん。もうおらん。」
快(旭)「裏方は?」
姫「いないよ。だから発表してない。二人で劇をするだけだから」
ゆ「君達が入ってくれたら発表できるんやけどなぁ?」
姫「そうやで、劇は皆で作るものやからな」
詩「いや、その」
姫「詩織ちゃんは演劇興味無い?」
詩「…演劇部の顧問って、田中先生ですよね。」
ゆ「よー知ってるやん!」
姫「一年の授業もしてるみたいやしね」
詩「私!私…田中先生の授業が好きなんです」
ゆ「…へ?」
詩「わかりやすい黒板。綺麗な字。穏やかな話し方。声…私が質問に行った時、田中先生なんて言ったと思いますか!?『…藤原は偉いなあ、自分にこうやって聞いてきてくれると、俺も嬉しい』…って!!」
姫「ゆら。この子多分授業が好きというより」
ゆ「先生が…」
詩「だから!田中先生が顧問なんて私、死んじゃうかもしれない!供給過多です!」
姫「供給過多」
詩「だから、演劇部だけは見学やめとこって。演劇も楽しそうだし、でも田中先生に褒められたりしたら私多分、今は違いますよ今は違いますけど!…好きになっちゃうかもしれない」
ゆ「もう好きなんじゃ」
姫「しーっ!」
詩「だから、演劇部だけは避けたかったんです。」
ゆ「あー!やからか」
姫「どしたん」
ゆ「人影見えたな〜って思ったら消えたからさ。」
詩「すみません、逃げたりなんかして」
快(旭)「田中はほぼ来てないけどな」
ゆ「そうそう、全然来てなくて…って、なんで知ってるん」
快(旭)「噂で」
詩「…え、来てない」
姫「今はって話!!新学期で忙しいからさ」
快(旭)「裏方もいない。台本も書かない。何より、発表しないことが一番問題だ」
ゆ「それは、人が足りひんから」
快(旭)「そんなの、演劇部から遠い何かだ」
姫「な、何よ偉そうに。やから入ってくれたらできるって」
快(旭)「そんな感じで言われて、快く…俺らが入りたいと思いますか」
ゆ「姫芽、落ち着こ。…もっともや」
姫「…」
快(声)「…あああ!!久我さん、思ったより言い方強いな。くそ、早く出てってくれ…俺だって言いたいことあるし。この体の持ち主は」
快(旭)「…快くん?」

暗転。
旭が体から追い出される。

旭「…なんだ。快くん、君は自分を出せるじゃないか」

旭、そのまま静かに退場。

快「俺!!!!!!」

一同、ちょっと引いて快を見ている。

ゆ「…俺」
快「俺…!!は、不思議なんですよ!」
詩「!綾小路くん?」
快「(頷く)」
姫「何が」
快「もうほぼまともに活動出来ないのに、先輩達がこんなに部活を存続させたがるのが。それって!…演劇が好きだからじゃないんですか」
ゆ「…」
姫「好きやで、そりゃ」
ゆ「姫芽…」
姫「演劇も、あいつやゆらの台本も、先生も、…仲間のことも。でも現実見んと」
快「…ゆらさんの劇、発表してみるのはどうですか。」
ゆ「え?何で。あんな劇恥ずかしくて発表できひ」
快「劇は、皆で作るものなんですよね。姫芽さんもきっと協力してくれます。好きな台本を、したくないわけがない」
快「…後悔しますよ」
ゆ「…」
姫「私。先生にお願いしてみるわ、音響。」
ゆ「ほんまにやるん」
姫「ゆらの劇したいんよ」
ゆ「セリフ、覚えれるん」
姫「即覚えたるよ」
ゆ「…嬉しい。ありがとう」

詩「あの!すみません。…先生は、どうして来なくなったんですか?」
ゆ「あぁ。…あいつが、おらんくなってからやんな」
姫「うん」
快「おらんくなったって、台本を書いてたっていう?」
ゆ「そう。天才やった。」
姫「演技指導も上手かったよ。もはや乗り移ってほしかったわ」
ゆ「…って言ったらあいつ、ほんまに乗り移ってやろうか〜とか言っとったっけ」
姫「懐かしい」
快「その人、今は」
ゆ「夏の、大会の帰りに。事故でさ、亡くなってもたんよ。」
詩「えっ…」
姫「それで先生が責任感じて、私らもやる気なくなって。」
ゆ「でも、前向いてかなあかんねんな」
姫「私ももう進まなあかん。…先行くな」

姫芽、退場。

ゆ「…姫芽、ほんまに好きやったよ」
詩「その人の、台本ですか?」
ゆ「台本もやし…その人のことも。」
快「…えっと…すみません、深く聞くようで。その人の名前って」
ゆ「旭。久我旭っていうんやけど」

暗転。
旭にスポットライト。(ドビュッシー、「月の光」が流れる。)

旭「後悔はつきものだ。どれだけ努力したってそれが最善とは思えないし、どれだけ人を愛しても、まだ隣に居たかったって思うんだ。直に桜が散る。それと同時に消えるつもりさ。快くんはTwitterで小説を書いていたらしい。舞台に立つつもりはなくても、台本には興味があったみたいだ。あの後、入部届を出してたよ。詩織ちゃんと一緒に。詩織ちゃんは、挑戦することにしたみたいだ。とりあえず供給過多にならないように耐性をつけるとか。
過去を引きずるのは僕だけでいい。後悔するなよ。

最後に。僕から皆へのプレゼント。『当たったら後悔が減る明かり』だ。これで君達は前よりちょっと頑張ることが出来る。幕が降りきったら存分に浴びてくれ。」

終幕。

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