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「クレープたこ焼き」
「くれーぷたこやき」
森林 芽衣
湾岸 千尋
め「クレープが食べたい!!!!!」
ち「…」
め「切ない程に」
ち「急になんですか」
め「…文化祭、模擬店!!!」
ち「あぁ…無くなりましたね」
め「なんでなんよおおお!!!」
ち「今のご時世仕方がありません。諦めて下さい」
め「めいのくれーぷ…」
ち「今年は全員鑑賞の文化部ステージです。むしろ開催できたことに感謝すべきてます。」
め「でもさ委員長、今年がこの学校にとってどんな年か分かっとう?」
ち「勿論分かってますよ、貰ったファイル、新しい体操服、グラウンドの横断幕」
め「その全てが物語っとる…」
ち「100周年、ですね」
め「そんな記念すべき年の!一大イベント文化祭が!?こんな形で終わってしまっていいのか?!」
ち「…」
め「2年生は模擬店を出し、経済的、そして商業的な経験を積むべきなのではないのか!?」
ち「…」
め「最高のクレープをお客様に提供するべきなのではないかぁ!?!?」
ち「クレープ食べたいだけじゃないですか!!!」
め「クレーープ食べたい、クレーープ食べたい」
ち「古いし語呂が悪い、少し黙って下さい」
め「ひちろは何しとんの?」
ち「千尋です。今は文化祭ステージのスケジュール調整中。会長に言われた仕事ですから」
め「ふーん」
ち「森林さんは用がないなら迅速にここから去って下さい。"気"が散るので」
め「めいの苗字木が多いけどね」
ち「帰って下さい」
め「森林、合計5個」
ち「知りませんよ…」
突如雷が鳴り、雨が降り出す。
め「ぎゃああ!!…え、雷?」
ち「天気予報外れましたね…」
め「めい傘持ってきてないんやけど」
ち「私は…あ、置き傘があります」
め「ちろひは帰り電車?」
ち「千尋!!電車ですよ。…入れてくれだなんて言いませんよね」
め「入れてくれ」
ち「はぁ…まだ仕事終わりそうにないんですけど」
め「帰り駅でクレープ食べようよ」
ち「ちょっとクレープにこだわりすぎじゃないですか…?」
め「まあねん」
ち「…私はたこ焼きがいいです」
め「ひろち…疲れてるの?」
ち「千尋ですって…吹奏楽部と演劇部がステージの時間のことで揉めてるんです。埒があきません。」
め「ほんとに疲れてんだ。じゃー大好きなたこ焼きの話するっきゃないね」
ち「たこ焼きしか勝たん」
め「ほんとうにどうしたの」
ち「たこ焼きはいいですよ。簡単ですから。クレープは駄目です」
め「クレープに何の恨みがあるの」
ち「果物代が高いんですよ」
め「もしかして委員長けち?」
ち「たこ焼きしたかったなぁ」
め「…する?」
ち「え?」
め「模擬店」
ち「何を言ってるんですか」
めい、机と椅子をを並べる。
め「めいお客さん、いくよー」
ち「ちょ、ちょっと待って下さ」
め「うぃーん」
ち「模擬店は自動ドアないやろ!」
め「あ、敬語取れた」
ち「つい」
め「すみませーん、たこやき1つ下さい」
ち「へ?!あ、あいよ!」
め「あいよて」
ち「どうぞ」
め「わーい、いただきます。…もぐもぐ」
ち「お店屋さんごっこですか」
め「もぐ…んん!?お姉さん、これ1個たこ入ってないよ!」
ち「えっ?」
め「はい終わり。絶対たこは入れ忘れる。たこ焼きは却下」
ち「いや根拠が薄すぎません!?」
め「青のりも歯につく」
ち「…じゃあクレープしましょうか?」
2人交代する。
め「いらっしゃいー!インスタ映え必須!2-3のクレープいかがですかー!」
ち「せこい」
め「果物ごろごろですよー」
ち「腹立つなぁ…すみません、このイチゴバナナチョコ1つ」
め「どうぞ」
ち「わーい、いただきます…あ、お姉さん、このクレープ最後の方もちもちの皮だけなんですが」
め「それはしょうがないのでは」
ち「クレープは最後がだるい!終わり!!却下です。」
め「ええええ」
ち「それと大して映えない」
め「可愛いでしょうがー!」
2人最初の位置に戻り、
ち「高校生が模擬店でクレープは現実的ではない、それは森林さんもご存知なのではないでしょうか。」
め「いや可愛いから」
ち「なのにこんなにクレープにこだわり続けるのには理由がある」
め「委員長?」
ち「3-1の伊藤さんですね?」
め「!…なんでその事を」
ち「やはり。副生徒会長の伊藤先輩…模擬店はクレープがいいなあ、が口癖でしたもんね」
め「だからなんで知ってるのー!!」
ち「見てたら分かります〜〜!!毎日伊藤先輩伊藤先輩って、気付かない方がおかしいですよ!」
め「だってかっこいいんやもん」
ち「…なら知っていますか、甘党でもない伊藤副会長先輩がクレープをしたかった理由」
め「え…何…」
ち「…彼女さんが食べる姿が見たかったからですよ!」
め「うわあああああ!!!(悶える)」
め「…(動かない)」
め「人生終わりや…先輩には女がおったのに…めいは…めいは…」
ち「そこでたこ焼きです」
め「黙って欲しい」
ち「最後まで聞いて下さい。食べる姿はね、たこ焼きが勝ってるんですよ」
め「それは嘘すぎるよろちひ」
ち「ち!!ひ!!ろ!!!…確かに甘いものを頬張る女の子が王道可愛い、ですが!!」
め「(呆れて)ですがぁ?」
ち「熱いものをはふはふして食べる女の子の方が、モテます!!!」
め「可愛い方がいい」
ち「分かってないですね、あなたみたいな天然マイペースおっちょこちょい女子はたこ焼きの方が似合うんです」
め「え、めい今悪口言われた?」
ち「先輩の彼女とまではいかなくとも、可愛いくらい言われたいですよね」
め「…言われたい」
ち「一瞬でも彼女さんより勝ちたいですよね」
め「勝ちたい」
ち「先輩に可愛がられたいですよね!」
め「られたい!!!」
ち「たこ焼きorクレープ?」
め「たこ焼き!!!!!!」
ち「まぁどうせ模擬店は出せないんですけどね」
め「なんやねん!!!!!!!」
ち「はぁ、スッキリしました。では仕事に戻るので」
千尋、仕事の続きをし出す。
め「いちろー、その仕事ほんとに今日中なん?」
ち「別人にしないで下さい。今日までではありませんが早く終わらせることに越したことはないでしょう」
め「生徒会長に言われたんだ」
ち「自主的にやっているんです」
め「真面目だなぁ、恋愛とかしなさそう」
ち「人を好きになったことはあります」
め「えっほんまに?」
ち「しっかりした人がタイプなんです」
め「誰よ誰よ」
ち「これ以上語りません」
め「えぇ〜…」
ち「まあでも私は真面目じゃありませんよ」
め「どうして?」
ち「私の好きなしっかりした人は、しっかりした人に惹かれるんです。だから振り向いてもらうには私が真面目じゃないといけないでしょう」
め「ええっ、意外と不純な理由だ!けど確かに…あ、そんじゃあ生徒会長にでもなってみたら!?」
ち「…僭越ながら、そのつもりです」
め「なんちゃってー…って、えっ、まじか」
ち「応援演説、してくれますか」
め「…応援はする!」
ち「演説は」
め「遠慮しまぁす…」
雨音が止む。
め「あ、雨止んだ」
ち「そろそろ帰りますか」
千尋、帰る準備をする。
めいは千尋を見ている。
め「委員長、言いたくなかったらいいんだけどさ」
ち「なんですか」
め「会長のこと…好きなの?」
ち「…会長とは、現生徒会長の水島みゆ先輩のことですか?」
め「うん」
千尋、沈黙。そして口を開き、
ち「好きですよ」
め「やっぱり」
めい、座って、
め「たこ焼きが好きなのは会長だもんね」
ち「それはそうですが…なんで知ってるんですか」
め「見てたら分かるわー、毎日水島先輩、水島先輩ーって言っとるやん」
ち「でもっ、普通やないし、気持ち悪がられるかもしれん」
め「少なくとも会長は、千尋の想い無下にするような人とちゃうと思うけどな」
ち「…今度商店街のたこ焼き屋さんに誘おうと思ってるんです」
め「いいやん、はふはふして食べなさい」
ち「あざとい」
め「あざとい上等!」
ち「芽衣さん」
め「ん?」
ち「…さっき、やっと千尋って呼んでくれましたね」
め「ひろち、ちろひ、ろちひー」
ち「逸らさないで下さい!!」
め「委員長、いい顔してる」
ち「誰かに言ったのは初めてでしたから」
め「く〜、青春っ」
ち「お礼、じゃありまそんが。文化祭の打ち上げ、生徒会でクレープ食べに行くことを提案しときます」
め「委員長…!」
ち「伊藤先輩のこと、諦めないで下さいね」
め「でも彼女さんおるねんで?望み薄だよ」
ち「芽衣さんあなた…少しがっかりしました」
め「えっなんで?!」
ち「毎日見ませんか?校門の横に大きな字で書いてある」
め「夢実現」
ち「想い続けていれば実現するんです」
め「絶対こんなことの為のスローガンじゃない!!でもありがとね、委員長」
ち「こちらこそ」
め「じゃあクレープ食べに行きますか!」
ち「…先輩がどうこうとかじゃなくて、普通に好きなんじゃないですか」
め「(笑)、ほら行くよ!私イチゴチョコバナナ」
ち「じゃあマヨネーズソース」
め「たこ焼きじゃないから!!」
終幕。
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