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散文:光る青

まさに角度は25度。落とした深い唇の紅。較べるように光る髪の青に、響いては沈む低い声がこだましている。貴方はどうしたって帝國の奇跡だ。

ベッドに沈んだなら、そのまま貴方に会えれば良い。深い世界で目を開けても、貴方が居てくれたなら良い。あぁ、どうかその手袋で私の涙を拭って下さい。弱々しくなった手のひらで私と貴方を繋いで下さい。全てを統べたその手を、私きっと誰より包んでみせます。今だけ朝を置いて話し続けられたら、どうかリッターのドジを聞かせて下さい。私きっと笑ってます。涙も想いも飲み込みます。夢だって気付かない演技なら、貫けるかもしれないから。

一度だけ繋いだ瞳が忘れられない。貴方らしいと言わざるを得ない。解れない私には握手じゃなくてハイタッチを、立ち上がってエチュードを。そうして優しく微笑んだ貴方は、「またすぐ会える」と言ってのけた。すぐ約束をしてしまう、そんなお方だあの人は。結局旅立ってしまうくせに。私を残して行くくせに。貴方の言葉遣いだって誰にも真似出来ないのに。

惹かれてやまない軍服の夏、独り夢を見て覚めないまま。貴方に未だ言えないまま。翻された外套の赤、貴方の赤、帝國の赤が、私に眠る青に混ざる。これは一臣民の恋文。それでもいい、貴方を想うことが私の夢なのだ。
貴方に惹かれて迷い込んだだけの唯の少女。
今のところは、まだ。

光れ、此処に眠る貴方の青。私の夢。

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