春のブーツ

セーラー服の女の子が淡い黄緑色のブーツを履いている。
家に帰ろうと学校の下駄箱を開けたら自分の靴がなく、裸足で校内を探し回ったところ、焼却炉の裏にうち捨てられていたこのブーツを発見したのだった。
仕方なくそれを履いて校庭に出ると、足の裏から新芽が吹き出し、少女は驚く。
もう一歩進み恐る恐る後ろを振り返った。
足跡があるべき場所に、小さな野原ができている。
これは春をもたらすブーツなのだ。
少女は楽しくなってきて、夢中で校庭を走り回った。
強く足を踏みならせば、その場に白や黄色の小花も咲いた。
やがて少女は桜の樹によじ登り、太い枝に腰かけて足をぶらぶらと揺らした。
つま先からぬくまった風が生まれ、黄色い蝶がブーツを追って飛び回る。

自分の靴がまた隠されたことを、自分を疎んでいる人間がいることを、少女は束の間忘れる。