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食べる機能の発達❸離乳中期

離乳中期に覚える口の動き

中期食は舌でつぶせる絹ごし豆腐くらいの固さの食事、と言いますが、
口の中にはつぶす場所があります。
口を閉じると舌先で食物を上あごの前方にあるヒダヒダ、初期にごっくんをする時の舌の動きの開始点(食べる機能の発達❷をご覧になって下さい)、に向かって押しつけます。これが押しつぶしの動きです。押しつぶしの動きには、口を閉じて食物を口の前の方に取り込む、口を閉じて舌先が上あごのヒダヒダに当たりやすくする、事が大切です。

初期から中期にかけて覚えていく口の動き 捕食

口の前方に取り込むのに、捕食と呼ばれる動きが大事です。アーンして、とポーンと食べ物を口の奥の方へ入れてしまうと捕食の動きを覚える事が難しいです。下くちびるにスプーンを置いて少し待つと下あごを閉じながら上くちびるでスプーンの上の食べ物をパクリと擦り取るように取り込みます。これが捕食です。

上くちびるは食べるための大事なセンサーとして働いたり、のちのち食べたり飲んだりおしゃべりに必要な口の動きを担うので食べる機能の発達には、初期で覚える口を閉じて飲み込む事と同じ様に大事な動作です。捕食は初期から中期にかけて覚えて行くと考えられていますので、毎回下くちびるにスプーンを置いて待っているのは気が遠くなりますから、ごはんの時間にお子さんがご機嫌良さそうな時まずは1回から試してみましょう。できなくても心配せずまた次の機会に試してみて下さい。

もぐもぐ期というけれど

もぐもぐ期。もぐもぐと聞くと、もぐもぐかむのかと思われている方もいます。離乳中期は、舌の先と上あご前方にあるヒダヒダで絹ごし豆腐くらいの固さの食事を押しつぶす様になります。上あご前方のヒダヒダはつぶす道具でもあり、食べ物の固さを感じる道具でもあります。噛まないのです、と仰るお子さんの中にはこの経験がなく口の奥に食べ物を入れてどんな固さでもごっくん丸のみしていることがあります。捕食が上手にできるとちょうど押しつぶす動きを担う舌先に取り込まれやすいのです。

食物の固さを見極めるのに大切な押しつぶす動き

食べる仕組みは感覚ー運動系と呼ばれ、口の中で食物の固さを見極めてその固さの食物を飲み込みやすく作り変えます。その時小さくなる食べ物の感触を感じたり食物から出る味物質が唾液に溶けて味を感じたり、中期ではまだだけれど、歯が生えて噛み合う様になると上下の歯で噛み砕く感触を感じる。感じることが美味しさにもつながります。

つぶす場所の上あごのヒダヒダは狭いです。大人が思ってるより子どもの口は小さいです。となると中期食は押しつぶす事が出来るように一口を加減する事も大事です。ヒダヒダで押しつぶせる様、食べ物の感触を感じておいしさを感じることが出来るよう食べ方を大人が教えてあげる時間を食事の中に少し作って見て下さい。食べ物の固さを感じる動きは続く離乳後期の動きにもつながります。食べる動きの発達は美味しく楽しく安全に食べる力を身につける手立てと思います。

押しつぶす動きを外から見ると

もぐもぐの動きは外から見ると、ぱくりと捕食した後にそのまま唇を結んでくちびる両側の口の角を左右一緒にキュッキュっとひっぱりくちびるが薄くなります。キュッキュと2、3度引っ張っている時に舌先を上あご前方のヒダヒダに押しつけて押しつぶしています。つぶれた食物は舌でかき集めて初期に覚えた動きで口の前から後ろへ運びます。飲み込んだあとに次の一口をあげる時にたくさん口に残っていたら、固い、一口が多いと考えられます。口の中にバラバラばらけていたらとろみであえると舌でのかき集めにくさを助けてくれます。

初期から中期の動きができるようになると

初期に口を閉じて舌を前から動かしごっくん飲み込む、初期から中期にかけて口を閉じながら捕食が出来る様になり、口を閉じることが出来る様になると舌を上下に動かし、舌先と上あごの前方のヒダヒダで押しつぶせる固さの食事をつぶして食べる、と言った食べ方を身につけていきます。食事の固さを変えながら、その食べ物を美味しく安全に食べる口の使い方を覚えていきます。つぶす動きは食事の固さを見極める方法ですから、後期の食べ方を引き出す動きとも言えます。つぶす時は口を閉じ続けるわけですから、閉じ続ける動作はスプーンやコップから水分をすすり飲む動きにつながりますし、くちびるでパクリの捕食は水分を啜るためのくちびるを閉じる動きにもつながるわけです。口を閉じ続け唇をふさぐことが出来る様になるとコップ飲みであごがパクパクしたり、水分をこぼさず口にすすれたのにコップを外すとジャーッと口から流れ出すことが減り、ストローも奥まで入れて歯で噛んだり、舌が下唇の上に出ながら飲む様なこともなくなって行きます。食べる機能は順を追って獲得、発達していくわけです。


私が尊敬するSuzanne Morris先生は子どもの食事はダンスを踊るようなもの、と話しています。始めはステップ踏めず上手に踊れないけれど、踊り方がわかればふたり楽しく踊れる、そんな意味だと思っています。
食べる機能は順を追って発達します。是非❶から読んでみて下さい。

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参考文献 

金子芳洋編:食べる機能の障害、医歯薬出版

向井美惠編:食べる機能をうながす食事、医歯薬出版

田角勝、向井美惠編:小児の摂食嚥下リハビリテーション、医歯薬出版

向井美惠:お母さんの疑問にこたえる                    乳幼児の食べる機能の気付きと支援、医歯薬出版



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