食べる機能の発達❺手づかみ食べ
食べる機能は順を追って身につけていくので、よろしければ❷から読んでみてください。
手に持ちたい、おすわりのバランスも整った、では手づかみ食べ
離乳後期から完了期にかけて、自分で食べたい意欲も高まり、手に持てる食物を口へ運んで食べる手づかみ食べが盛んになると言われます。赤ちゃんが自分の手や握ったおもちゃを口へ持っていくのは初期からでもみられる動作ですが、その時期、座位のバランス反応が獲得され見たものに手を伸ばして握ったり出来る様になるからと言われています。
口へ運んだ食べ物を受取り手である口に運んで前歯で噛みとって一口量を覚えることが始まるのはこの時期と考えられています。上下の前歯でのかじり取りについては❹をご覧下さい。
手づかみ食べをしよう、では食べるための口の機能はどのくらい身についているのかな
初期から後期までに、口を閉じて取り込む、舌先と上あご前方で押しつぶす、押しつぶせない固さの食物を舌で下あごの歯ぐきにのせて、歯ぐきから食物が落ちない様に舌と頬ではさみながらあごを上下に動かし噛みつぶすと言った基本的な口を使う食べる機能は獲得しているわけです。ではその口に食べ物を運ぶ手の機能はどうでしょうか?
手づかみ食べ、とさらりと言ってしまうし、大人からしたらなんてことのない行動ですが、手と口の協調、手の動きと口の動きを協力させながら使う仕組みが必要になってきます。
手づかみ食べの研究をもとに
8ヶ月から15ヶ月までお子さんの手づかみ食べの観察した研究をもとに説明します。
手に持った食物を口へ運ぼうとすると始めのうちは食べ物を取り込むくちびる正面まで運びきる動きが未熟なため、食物は口の脇(口角)のあたりから入ったり、くちびる正面から取り込もうと顔を手の位置までくるりと横を向いて取り込んだりする様子があります。食物を手から口へ受け渡すことが未熟だと、手まで口に入れてしまう事もあります。要するに手づかみ食べで使う口と手は、口の方が早く食べるための仕組みを身につけているのです。ですから運べなくて顔が手に向かって言ったり、押し込んだりもあるのです。
手(この場合肩から手の平までと思ってください)には、肩、肘、手首に関節があります。大人が手づかみする時はこの3つを上手に使って手に持った食物を口まですんなり運ぶことができます。手づかみ食べを始めた頃は手に持った食物を肘の曲げ伸ばしで口に運びます。このため食物は口の端(口角)から口の中へ入ったり、口の正面から取り込むために首を手に持った食物に向かってくるんと回して取り込んだりします。肩、肘、手首の関節を上手に使うことが出来る様になると口角から食物が入ったり、首をくるんとまわさなくても手を食物を受け取る口の正面に持っていくことができるようになります。
手づかみ食べが上手になるには手と口の協調が必要です。先に上手になる口の動きを手の使い方が追いかけて来ます。繰り返し食べることやおもちゃで遊ぶなど手を使っていくことでだんだん上手になっていきます。面白いな。
では、手で運ばれた食物はどのように口へ受け取るようになるのでしょう。引き続き、8ヶ月から15ヶ月までお子さんの手づかみ食べの観察した研究をもとに説明します。
口への食物の入り方
押し込む→引きちぎる→かみとりの順に発達すると考えられています。また、唇をふさいで取り込む動作をみると最初はくちびるを使う様子は見られなかったのが、徐々に唇を使いながらとりこむようになりました。
食物を口に取り込むときの指の入り方
始めは握った食物を小指側から口へ入れていたのが指で食物を持てるようになると第2関節から第1関節くらいまで口に入れる動きで取り込んで、12か月くらいから口の中に指が入ることなく手から口へ取り込む様子が見られて、15か月になるとほとんど指が口に入ることなく取り込めるようになったそうです。
始めはどのくらい口に入れたら良いのかわからず押し込んでしまうけれど量がわかって来て押し込まないで、口へ受け渡せるようになります。手の仕組みと口の仕組みを協調させながら繰り返していくことで取り込む場所、取り込む量、取り込み方を覚えて行くと考えられています。
次はスプーン食べについてお伝えしようかな。
参考文献
金子芳洋編:食べる機能の障害、医歯薬出版向井美惠編:食べる機能をうながす食事、医歯薬出版
田角勝、向井美惠編:小児の摂食嚥下リハビリテーション、医歯薬出版
向井美惠:お母さんの疑問にこたえる 乳幼児の食べる機能の気付きと支援、医歯薬出版
石井一実他:手づかみ食べにおける手と口の協調の発達その1食物を手でつかみ口に運ぶまでの過程、障者誌19(1)24-32,1998
著者の石井さんはOTさん、臨床のお仕事は旧姓神作さんでなさっています。口の食べる機能の発達と手の機能の発達を踏まえた摂食指導をなさる方です。
千木良あき子他:手づかみ食べにおける手と口の協調の発達その2、障歯誌19(2)177-183,1998
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