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『LIFE!冬1』 コミカルだけじゃない コントを一瞬でドラマに変える小芝風花さんの変幻自在の演技力

2021年12月21日に放送された『LIFE!冬1』(NHK総合)に『彼女はキレイだった』(フジテレビ系)の共演も記憶に新しい小芝風花さんと赤楚衛二さんが初出演した。

小芝風花さんが出演したコントは、次の4本。

  1. 部長命令

  2. スーパースター 〜割引の刃II〜

  3. "かける"のが早い女

  4. 天才の弱点

このうち、メインで出演したのは「"かける"のが早い女」と「天才の弱点」だった。

「"かける"のが早い女」では、小芝風花さんは気持ちが高ぶりやすく、話を最後まで聞かずに雰囲気で勘違いし、ムロツヨシさんにコップの水をぶっかけるりっちゃんを演じた。気が強く思い込みが激しい女性を表現する大きく見開いた目で相手を食い入るように見つめる演技と、早押しクイズのようにテンポよく水をかけまくってムロツヨシさんを追い込むコミカルな展開で、コメディエンヌの面目躍如といえるコントだった。

だが、小芝風花さんがハマるのは、もちろんコミカルだけではない。その真価が発揮されたのは、続いてのコント「天才の弱点」だった。このコントで演じたのは、映画のヒロイン最終オーディションに残った一人、黛 京香。ロケ地を下見している時にスタッフが発掘した素人という役柄で、プロデューサーと監督の前で演技を始める直前まで、場慣れしておらず自信なさげな素人同然の雰囲気が漂っていた。しかし、監督の「用意…スタート」の声がかかり、まぶたを開いた瞬間、その雰囲気は一変する。そこには、先ほどまでとは別人のような表情があった。

「俺 本当は 君と…」
「言わないで…これ以上 間違いを重ねないで…」
「でも…間違いが正しいことだってあるだろ?」
「お願い…最後くらい…最後くらい かっこつけさせてよ…さよなら」

政略結婚が決まった恋人と別れなければならない悲しみをたたえた瞳、後ろから抱きしめられ小刻みに震える唇、必死に作った笑顔には一筋の涙が流れ、別れを告げて走り去ると相手役を演じた赤楚衛二さんは魂が抜けたように絶望した表情で立ち尽くしていた。女装した和牛・川西賢志郎さん、シソンヌ・じろうさんとのシーンでは必死に笑いを堪えていた表情と比べると、その違いは歴然。小芝風花さんの演技が引き出した赤楚衛二さんの本気の演技だった。

コントの空気を一瞬でシリアスに変える演技力はもちろん、小芝風花さんの演技で見事なのは表情や台詞回しの幅広さだ。表情と発声を巧みに切り替え、場面に応じて最適な演技を見せる。この演技力が、オーディションの短いやり取りの中で、二人の想いが通じ合っていた頃から、政略結婚を知り想いを断ち切るため別れを決意する瞬間までの時の流れを視聴者に感じさせる。今だけでなく、演じる役がそれまで生きてきた人生が感じられる演技が、フィクションをリアルにする。小芝風花さんの演技には、それがある。

このコントでは、最後に「幸せ」を表情で表現してくださいというお題が出る。だが、最初に指名された黛は「幸せ」を表現できなかった。

「分かりません…"幸せ"って どういうものなのか分からないので できません…」
「今まで一度も感じたことがない感情なんです。"幸せ"って どういうのですか?」
「教えてください 監督。あの…教えていただければ きっと演じられると思います」
「お願いします…せめてヒントだけでも…」

今まで「幸せ」を一度も感じたことがないなんて、一体どんな人生を歩んできたのだろう。そう視聴者に思わせる演技ができるのが小芝風花という女優さんだ。

「"かける"のが早い女」でキレのあるコミカルな演技を見せた後、「天才の弱点」ではコントでありながらドラマのワンシーンを見ているかのような情感にあふれたシリアスな演技を見せ、演技の振り幅を堪能できる構成も良かった。気軽に見始めた『LIFE!冬1』だったが、小芝風花さんの幅広い演技力を再確認できたのは思わぬ収穫。一足早い素敵なクリスマスプレゼントになった。

「小芝風花さんの演技は うまい! うまい!」(割獄割寿郎)

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