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#21 ひきこもり先生(2021)-教員希望者には見せられない問題作

ただただ衝撃を受けました。社会問題に真正面からぶつかる凄みのあるドラマでしたが、「学校教育=ブラック」のイメージを煽る作風に対して、「教員志望の子どもには見せたくないドラマ」のような印象を受けました。

ドラマの本質を語らないHPの紹介文

『上嶋陽平(佐藤二朗)は、客と話をしない、サービスもしないという一風変わった焼鳥屋の店主。そんな陽平が、市立中学校の非常勤講師を依頼される。不登校生徒を支援する学級の人手不足を解消するために、榊校長(高橋克典)が白羽の矢を立てたのだ。榊はスクールソーシャルワーカーの磯崎藍子(鈴木保奈美)とともに説得するが、陽平は固辞。しかし、不登校児・奈々(鈴木梨央)と出会い、関わるうちに少しずつ心を開いていく。』

度を越した挙動不審

上記の紹介文が語るのはドラマのごく一部です。主人公・佐藤二朗が演じる上嶋は、妻・娘に愛想をつかされ、別居後ずっと実家の焼き鳥屋にひきこもる挙動不審の中年男性です。佐藤さんならではの役どころなのでしょうが、コミカルさは皆無で、不気味さの漂う、異質な存在でした。

教育の限界点

ひきこもり先生が手を差し伸べる相手はいずれも、壮絶な「貧困」「虐待」「いじめ」に苦しむ生徒でした。第4話、校長先生(高橋克典)がいじめっ子といじめられっ子を無理やり握手させるシーンには戦慄が走りました。いじめの存在を主張するひきこもり先生は、案の定、校長先生主導による壮絶な職員室いじめに遭い、引きこもりに戻ってしまいます。最終回(第5話)を残すものの、教育に絶望せざるを得ない、エグイ展開でした。

蘇る、2020年2月28日の悪夢

最終回では、ステップルームの不登校児たちに励まされて、ひきこもり先生は学校に戻ります。ステップルームの生徒たちは議論を重ね、卒業式に出席すること、および、参加できなかった修学旅行のかわりに、式典終了後に遊園地に行くことを約束します。そこでニュースが流れるのですよ。

マジでビビりました。2020年の悪夢が蘇りました。結局、卒業式も遊園地もパーになります。その後は突然、青春ドラマに切り替わります。先生と生徒が学校に押し寄せ、校長を説き伏せ、みんなで校庭に寝っ転がって青空を眺めるところで「完」となります。あまりの切り替えに唖然となりつつ、「その程度の工夫でイメージが良くなると思うなよ」と呟いてしまいました。

シーズン2(前後編)も放映されましたが、ひきこもり先生はすっかり逞しくなり、別居中の娘との絆も取り戻したため、インパクトはいまいちでした。「ひきこもり先生」というよりも「かつてひきこもっていた先生」という感じでした。

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