第二次性徴と母の気遣い

私は、成長期は割と人並みのタイミングに来たように思う。背が急に伸びたのは中学1年生の頃。最初の4ヶ月で8cmは伸びた。声は中学2年生か中学3年生か、気付いたらもう変わっていた。だが、中学生の頃に来なかったものが1つある。
保健体育の保健で、それを中学1年生の時に教わった。体が大人に成長していく過程で、大抵の人は経験するのだと、そう聞いていた。でも、中学3年になっていた私にそれが来た実感はなかった。性の話をするのは苦手だったから、それが普通なのかも分からず、同級生がどうなのか訊ねることもできなかった。

そんな頃に、母は言っていた。
「パンツに変わったことがあったら、こっそり洗濯カゴに入れておきなさい。洗っておくから」
と。当時はその意味が分からなかった。

そして、高校1年生になり、冬を迎えた。いまでも日付をはっきり覚えている。他の家族がまだ寝静まっている早朝、不意に目覚めると何だか下腹部に違和感がある。パンツの中が濡れており、気持ち悪い感触だった。母が以前言っていたのはこのことだったのかと私は悟る。このままのパンツで居るのは嫌だ。私はパンツを穿き替え、元々穿いていた方は洗濯カゴに入れた。

母は、きっとそのことに気付いていたであろう。しかし、その日の夕方や翌日になっても、そのことについて追及して来ることもなく、逆に赤飯を炊くようなことも無かった。あの時の母の気遣いには、今でも感謝せずにはいられない。