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地下は天敵

これは私が地元を離れて数年が経った頃。帰省する前に、お土産を見繕いに市街地を訪れた時のこと。
市街地は便利なもので、お土産屋が集まっている場所が駅の地下にあった。そこを私は何度か訪れたことがあるので、駅に着いた私は記憶を頼りにその場所へ向かう。

30分が経つ。しかし目的地は見付からない。地図を見ればいいと思うだろうが、私はその場所の名前を知らなかった。名前を知らないその場所を調べる術は無かったのだ。
そして1時間歩き回る。まだ見付からない。さっきから同じところをぐるぐる回っているようにも思えてくる。これまで通っていないと思う道にも入ってみる。すると、
「ここだ……やっとあった……。」
あった、では無い。別にその場所は移動などしていないのだ。ただ私が道に迷ったに過ぎない。しかし、私はようやく辿り着けたことに一安心した。
そして、私は実家に持っていくお土産を選ぶ。人混みは好きではないが、お土産を選ぶこの時だけは、人が多いことを気にせず過ごす。


この後、帰りはすんなり帰ることが出来たが、この約半年後にまたこの場所で迷うことになろうとは、この時の私はまだ知らない。