教育実習生との思い出

これは私がまだ生徒だった頃の話。私は引っ込み思案な方で、人生で教育実習生が来ていたことは何度かあるが、交流を持とうとしたのは高校2年生のときだけだったと思う。その実習生は、確か理科か化学の担当だった。というのも、その実習生とそれっぽい会話をしたことを覚えているからだ。

覚えている会話は2つ。当時は、化学で酸化還元反応について学んでいた。だから、1つ目はそれに関する会話だ。私は訊ねる。
「一酸化炭素のCの酸化数は+2なんですか?」
実習生は答える。
「そうだよ。」
更に私は訊ねる。
「じゃあ、炭素は結合の手が4本ありますけど、一酸化炭素で余った2本はどうなってるんですか?」
実習生は答えに窮する。π電子がどうのということをボソボソと言っており、高校生に対し、受験に不要な知識を与えていいものか迷っているようだった。「なんでも聞いて」というようなことを言っていた気がするが、流石に行き過ぎたようだと私は反省し、それ以上は追究しなかった。

もう1つ覚えているのは、「1.06」についての話だ。物理の波に関する分野で、コラムに音階の話が載っており、私は休み時間を使って計算をしていたのだ。私は、計算結果を意気揚々と実習生に報告する。
「先生!1.06の4乗が1.26247696で、7乗が1.50363025899136で、それぞれ4分の5と2分の3の近似になりましたよ!!」
今では電卓やパソコンといった機械に頼れるが、当時は高校生で、手計算していた。実習生は「?」といった表情を浮かべる。そこで私は説明する。
「平均律で、1オクターブは12個の半音だから、隣合う半音の周波数の比は2の12乗根ですよね?そして、協和音はその周波数の比が簡単な整数比になるらしいので、計算してみたんです!2の12乗根は1.06ぐらいだと聞いたことがあったので」
まくし立てるように説明すると、どうやら趣旨は理解出来たようで、単純に手計算でここまでやったことを褒められた覚えがある。


その数年後、中学校に教育実習生として赴く経験をしたので、改めてこの思い出に立ち返ってみた。教育実習ではたくさんの生徒と関わったが、記憶に残る生徒は非常に少ない。あの実習生は、私のことや、私と話したエピソードを覚えてくれているだろうか?私が教育実習生だったときのエピソードはまた別の機会に綴りたいと思う。