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高度化していくとハードパンチャーが…

 競技化が進んで成熟していくと、その特定のルールにおける技術が発達、細分化し、専門化し、高度化する。これは全ての競技に当てはまる摂理だ。それら技術を磨く上での練習方法も同じように追及されるので、そうなるのは当たり前といえば当たり前だが………。

 そうなるとどうなるか?そこで使われる技術が緻密化して、その競技における知識や理解がない人間が見ると、いったい何をやってるのか分からないという状態になることが多々ある。目が肥えた人間しかその競技の核心を見ることが難しくなる。これは競技化の宿命なのだ。

 格闘技の試合も競技である以上同じ宿命を持っているわけで、現在行われている格闘技や武道の試合はどれもかなり高度な技術を持って戦われている。30年ぐらい前だと、空手でもキックでも、まさに「飯場のドツキ合い」レベルの試合が多々見受けられたわけだが、今時そんな戦い方をする選手はほぼ皆無。それなりにスマートに、ちゃんとワンツーとか、スイッチしての左ミドルとか当たり前に出す。高度な技術が普遍化してしまって、みんな同じような戦い方をするようになってしまうのだ。また、そうしないと勝てないという現実もある。

 ひとつ特徴的な現象があるとするならば、ハードパンチャーが殆どいなくなったという事が挙げられよう。現在の多くの格闘競技の試合で強いパンチを打つ事はそれほど有効なものではない。むしろ、軽いパンチを数多く当てるという事が勝利につながっていることが多いので、選手自体も自然とその傾向になっていく。最も高度化している打撃格闘競技としてのボクシングの例を見ても、チャンピオンでハードパンチを売り物にしている人は少ないのではないか?もちろん、タイソンみたいな突然変異が現れることが今後あることはあるだろうが、ごくまれな例じゃないか?

 90年代の大道塾は長田先輩と市原先輩という2大ハードパンチャーがいて、俺はその二人のパンチをスーパーセーフ越しに何度か受けた経験を持つが、これは反側だろ、と思うようなものだった。特に市原先輩にはよく殴られていて、あれはパンチというよりも、バットで撲殺される感じ。本当に殺されると思った。グローブをつけて飯村先輩とスパーリングしていた時、先輩の返しの左フックをもらったとき、気持ちよくなって膝カックンになった事があるが、それとは正反対の頭もぎ取られ系の衝撃を受けざるを得ない市原パンチは今でも怖いわ。特にスーパーセーフ越しにパンチ貰ったことある人は分かると思うが、ホントに絶望的な気持ちになるよ。


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