★国語教師(3)

阿部繁治先生は月一回、校長講話と題して30分、全校生徒600人を前にしてお話をなさいます。それがとても面白いんですよね。先生は高校時代、スキーの国体選手として活躍しましたが大会で北海道に行き、スキー場で熊に会ったとか。そのようなエピソード中心なんです。

僕も授業中は雑談、冗談をちょっとだけ混ぜるようにしてます。みんながドッと笑ってくれれば大成功ですが、スベるときも多々あります。(笑)

50分授業の間、ずっと真剣に、かなりの集中力で教師の話を聞ける生徒なんて、ほとんどいません。午後1番の授業では昼ご飯を食べたあとですから眠くなる生徒もいるでしょうし、夜遅くまで部活をやってる生徒は朝から早くも眠そうです。そもそも国語の勉強に一切興味のない生徒もたくさんいるんです。

みなさん驚くかもしれないですが、杉並区の「並」を書けない生徒もいるくらいです。僕らの学校は偏差値30台の、勉強が不得意な生徒の集団なんです。

僕は広大な農園に200粒の種をまく。その種のほとんどはまともに育たず、枯れてしまいます。でもいいじゃないですか、必ず一粒、あるいは二粒はすくすく育ち、果実を実らせる。そのぐらいの気持ちでやればいいよ、と林マスターが言ってました。焦りは禁物だよ、と。

数学の綾美志帆先生は今年大学を卒業したばかりの新人教諭ですが一回目の授業で九九もまともに出来ない生徒がいるのを発見し、驚きのあまり倒れそうになったそうです。このような生徒に高校数学を教えるのは不可能だ。綾美先生は着任二日目、辞表を持って阿部繁治校長の部屋に行きました。

阿部校長はニコニコ笑いながら、わかりました、ではこの辞表は預かります、半年間自分なりに格闘して、もう一度ここに来なさい、と綾美先生に命じました。

なお、うちの学校は授業中のスマホ使用について授業担当教官の判断に任せる、というルールがあります。スマホの電源を切るよう指示する先生もいますが僕の授業ではスマホ使い放題です。

今の時代、スマホというかインターネットは自分の知能を発達させるための武器なんですよね。このような便利な道具を使わない手はないです。知らない単語を調べる、授業に出てきた作家のプロフィールを見る、読書の感想文を書いて教師にメールで送る。

僕はクラスごとにLINEのグループを作っていて、授業に関する質問などを自由に投稿可能です。宿題もLINEで出すことがあります。

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