★読書愛好会(22)

部長とはほとんど寝ないで会話して、翌朝10時にチェックアウトしました。

朝ごはんはホテルのバイキングで、僕はトースト、バター、ヨーグルト、牛乳。目玉焼きとソーセージ、野菜サラダです。部長はコーンスープにトーストを浸して食べていました。二人で大盛りのフルーツを分け合って食べました。

部長は一分ごとに腰をあげて目を細め、身を乗り出し、僕の耳元で「オマタガ イタイ」と囁きました。僕はブッと吹き出し、あわてて周囲を見回しましたが幸い誰も見ていませんでした。
 
前日の夜、部長は気持ち良さそうに僕の胸に顔を埋めて言いました、君が大学を卒業して就職したらわたしは君のお嫁さんになって子供を五人生む。君は働き、わたしは専業主婦。そんな感じでもいいかな。まだ決めてないけど。野球部のマネージャーみたいに主役の君をサポートする人生は決して悪くない。

僕はどう答えていいのか分からなかったので無言でしたが、決して悪い気持ちにはなりませんでした。

とにかく今は入試を無事に終えて大学に行く、そして自分が納得のいくような職業を探す。それをやろうと考えました。第一関門は入試で第二関門は就職だ。

ホテルを出て新宿駅の近くのカフェに入り雑談して、部長と一緒に電車に乗りました。僕が降りる駅はわざと通りすぎ、二駅先の、部長が降りる駅まで一緒に行って、それから部長の家の近所にあるマックに入りました。

僕たちが別れたのは午後二時頃です。部長は駅まで僕を見送り、僕が見えなくなるまで手を振ってくれました。

全く満ち足りた世界です。ホントに幸せです。毎日毎日絶望し、死ぬことばかり考えていたのはつい数ヶ月前のことです。しかし今の僕は生きることばかり考えています。部長と一緒に生きる。それが僕の人生の目的だ。

僕はなんだか高揚感が収まらず帰宅してさっそく数学の参考書を開いて猛勉強を始めました。理系科目の成績が急激に良くなったため、担任がわざわざ僕を職員室に呼び出し「君、ホントに文系でいいのか?」と尋ねました。もちろん僕の答えはYesです。

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